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学校の戦い

「ここ分かるか?広斗」


野村に社会の答えを聞かれた。相変わらず、へらへら笑っている。

しかし野村が分からないなんて事はない。お前は学年トップクラスの成績の持ち主なんだからな。


「だから、キリスト教が始まったのが1549年で…もういいや教科書見ろ」

「なんだよ。教えてくれたっていいじゃないか。」

「お前が答えられないわけないだろ。」

「ちっ。気づいてんのか」


話していると歴史教師に「最上、野村、終わったなら黒板に問題書きに来い。」と言われてしまった。

余計な仕事を増やすな!


「おい指されたじゃないか。変なこと話しかけるから。」


野村は無関心に「がんばれよー。」としか言わない。

俺は「お前もだろ、早くいくぞ。」野村をせかして立たせる。


「まったく、面倒だな」

「お前から話しかけてきたんだろ。」


文句を言いながら黒板まで歩く。こっちの方が面倒だ言いたいところだ。

教師に俺たちが話していたので注意されてもう1問追加された。もう散々だ。

何でこんなことしなきゃいけないんだ…

チョークを持って黒板に文字を書き始めるとスマホが鳴った。

「あ、地震だ。授業中断。」

それを喜ぶな。何を言ってるんだ。

しかし地震は起こらなかった。よく聞くといつもの緊急地震速報の音ではない。

俺はスマホの画面を見る。そこには国の緊急避難命令という題名のメールが届いていた。


「なんだこれ? 野村分かるか?」

「俺に聞かれても困る。知ってると思うか?」


さすがに野村でも知らないか。知ってそうだったけど。

その後もしばらくさわいでいると学校放送が入った。


「皆さん、すぐに避難してください!警視庁から連絡です!日本中で謎の黒い生物たちが町を破壊しています!もう一度繰り返します!避難してください!」


放送の先生が慌てている。町を破壊しているといっていたな。だったら外にいるのか?

そう思って窓の外を見てみる。

そこには放送通り黒い人型のものがいた。そして腰から上だと思われる部分が180度回転してこっちを見た。

教室で誰かがおどろいて腰をぬかした。

放送が本当だったことが分かり、冗談だろと言っていた教室中の皆が逃げ出した。大騒動になってしまった。何人かがこけてふまれたがその人も我先にと立ち上がって逃げて行った。

残ったのは野村と俺二人のみ。学校が静かになった。

ちなみに、俺は状況の整理が追い付かず呆然としている。


「あーあ、全員いなくなったぞ。というか踏まれてた人大丈夫か?」


さっきから野村が呑気に話している。だんだん整理が追い付いてきた。

やべ、なんで固まってたんだよ! いま逃げるべきだった!

というかなんで野村は逃げないんだ? 


「そんなこと言ってる場合か!俺らも逃げるぞ!」

「まず落ち着けって。逃げてもあの黒いのに消されるだけだろ。それならがここにいた方がよくないか?」


そこまで考えて逃げなかったのか。思考を停止していた俺とは全然違う。


「まあ、確かにお前の考えには賛成するよ。じゃあ隠れて…」

「静かに。こっちへ来い」


俺が言い終わる前に短く叫んだ。そのまま教卓の陰に引きずり込まれる。


「ちょっと、爪が痛い。痛い、放せ」

「いいから黙って隠れろ」


顔がいつものように笑っていない。俺は本気だと察しておとなしく黙る。

しばらくして誰もいない廊下から高音が響いてきた。

なんだこの不快な音は?横を見ると野村はしゃがんでじっとしている。

音はだんだんと大きくなっていく。そして教室の前に来た時不意に音が止まった。


「まったく何だったんだ?今の音は」


そう思って教卓の陰から廊下を見てみる。

そこには外にいたものと同じ黒い人形がいた。

…また腰から上の部分が90度回転してこっちを見た。


野村が力づくで引き戻してくれていなかったら見つかっていたかもしれない。

ただ、その後黒い人形は俺たちを見つけることなく去っていった。

しばらくして野村が口を開いた。


「いやー、こりゃ隠れてても危ないな。」

「おまえなんでそんな冷静なんだよ。早く逃げた方がいいだろ!」

「そうだな、次は見つからないとも言い切れないし逃げるか。」


珍しく俺に同意して野村が立ち上がる。そのまま教室から出ていく。


「早くしないと置いてくぞ」

「え?なにするんだよ」

「逃げるって言ったのお前だろ。」


野村は歩いて階段に向かい、俺はその後を慌ててついていく。

校舎では黒い人形に見つかることもなくすぐに靴を履いて外に出る。

だが、少し歩くと黒い人形にみつかった。

黒い人形は手を振り下ろし地面を破壊する。


「どうしようか、野村…」

「こういう時するべきことは一つ。それはな、広人」


野村は振り向いて駆け出す。


「逃げることだ!」

「置いていくなんてひどいぞ、野村!」


逃げるんだったら最初から言っといてくれよ!


***


物陰に隠れて追跡してくる黒い人形をやり過ごした俺たちは、そのまま武器を探して学校のはずれにある倉庫にやってきた。

ここなら学校の隅にあって歩き回って監視をしている黒い人形にも見つからない。

何をするためにここに来たのかと言うと、


「あ、広斗あったぞー。」


ちょうど野村が出してきた『武器』というのはチェーンソーのことだった。

そう、俺たちは今、あの黒い人形を倒そうとしている。


「それであいつらと戦えっていうのか?」

「そうだけど何か問題でも?」

「無理だろ!こんな短いチェーンソーじゃあ、さっきみたいにコンクリートと同じ運命だぞ!」


それにこんな音がうるさくて刃も脆そうなのにあいつらを倒せるはずがない。


「ヤバかったら燃やすから大丈夫」


そう言って指をさしたのは6個ほどのポリタンク。

見ると中にはガソリンが入っている。


「ダメだろ燃やすって!学校ごと燃えるぞ!」

「あー、そっか。じゃあ校庭で燃やす。」


チェーンソーがだめだったら燃やすのは変わらないらしい。

しかし、それしか方法がないので4往復して校舎まで荷物を運んだ。


***


「まじでやるのか?」

「しょうがないだろ。倒さなかったら囲まれてつぶされるだけだぞ。」


人生適当にやってきたがこれだけは本当の恐怖だ。


「逆にここでやらないといつまでも学校から出られずに餓死するぞ」

「いや、さっきは見つかったけど今度こそ逃げるっていうのは?」

「そんな意見はあり得ない。」


一度決めたらもう変えられないのか


「いいから曲がり角に隠れてろ。ほら来るぞ。」


本当にこれでいいのか分からない。あー。もういいや、やれることはやってやる。

そう決意して通路に潜む。


通路の端に黒いのが見えた。

あと、あいつらと接触するまで15秒

チェーンソーに手をかける。

あと10秒

深呼吸して気持ちを切り替える。

あと5秒

あと少しで接触する。よし行くぞ!

あと4,3,2,1,

0秒になったところでチェーンソーのエンジンをかけ飛び出す!


「うおおおぉぉぉ」


無理やり気合を振り絞って胴体を横に切る。右からは野村が刃を振るうのが見える。

そのままチェーンソーの刃は黒い人形の胴体を切り裂いていった。

勢いあまって床に投げ出される。

俺は簡単に切られた人形を見て驚いた。


「えっ?もう終わった。なんだよ、すぐ切れた…」


こんなに簡単だったのかよ。なんだ別に気にする必要なかった。

野村はまだあたりを警戒している。


「おい、野村あんなに弱いのかよ。」

「コンクリートを殴ったとき手にひびが入って自爆してた。だから脆そうだと思ったんだよ。」

「だったら先に言っといてくれよ。」


余計な心配かけさせやがって。


「はは、悪い悪い。」


悪いなんて欠片も思ってないな。


※※※


いつのまにか順調に倒してもう3体目だ。

ここまで楽に倒せると何かありそうで怖い。


「そろそろ来るぞ。」

「おっけー、そろそろ隠れるぞ。」


歩いてくる音が響いて通路の脇を黒い人形が通り過ぎた。

そういえばこいつは廊下を通っていたやつだな。まあいいや。


チェーンソーで切りかかって胴体を切り飛ばす。

さっきから同じように輪切りになる。


「よし、これで三体目。」

「すんなり倒せて逆に何もなくて怖いな。」

「あー、まあ確かに言えてる。」


とかいってると急に眩暈がして立っていられなくなった。

いきなり全身に痛みが発生して体の中を作り変えられる感触が広がる。

それも10秒ぐらいで治まり僕は立ち上がった。


「まだ足がふらつくな、野村立てるか?」

「問題ない。でも何だったんださっきの痛みは?」

「脳に直接情報が流れ込んでくる」


なんだ、さっきから整理がつかない。

ただ、脳内の情報とはこんなものだった。


***

名前 最上 広斗 年齢 17歳

進化値 2

体力 20

魔力 8

攻撃力 10

防御力 10

耐久力 10

速動力 10

筋力 10

属性魔法 未習得

能力魔法 情報確認

固有魔法 黒い結晶

         ***


「ゲームのステータスかよ!」


思わず言ってしまった。

いや、なんですかこれ…本気で魔法?そんなわけないか

だったら幻覚かな?この年で幻覚見えるようになったら終わりだろ。


「広斗、お前もこれ見えてるのか?」

「このゲームのステータス画面のことなら見えてるけど…でも、そこまで強くなった気がしないぞ。」


筋力が10になったはずだがそこまで変わったようには思えない。


「じゃあ試して見るか?」

「なにをどうやって試すんだよ。」

「筋力とか攻撃力が上がってたら楽に倒せるはずだ。もう一回あの黒いのと戦うんだよ。」

「はあ!?もう嫌だ!俺は家に帰るんだ。」

「はい、いくぞ。」

「やめてくれ!いやだって言ってるだろ!」


結局、高校の東棟に連れていかれてしまった。

また何回か戦っていたら進化値が上がって4になった。


「進化値が4になったぞ。広斗、なんか変わった?」

「さっきよりチェーンソーが重くなくなった。」

「それならよかった。じゃあ次は体育館と校舎の外だ。」

「まだやんの!?」


いつの間にか学校にいた黒い人形を全滅させていた。

生きて帰れるかなとか思っていたが普通に倒せていた。

校庭に置いてあったガソリンは倉庫に戻しておいた。


「現在時刻は?」


なぜか野村が聞いてくる。

今度は何をする気なんだ。


「時計なら校門の方にかかってるだろ。」

「あー、そっちか。いまは11時35分だな。よし帰るか」

「へ?どうして急に帰ろうなんて言う発想が出てくるんだよ。」

「放送で避難しろって言ってたから、家に帰るんだよ。」


そんなこと言ってたのか。全く聞いてなかった。

まあ、でも学校にいてもしょうがないし帰るほかないか。


「分かったよ、じゃあ野村帰ろうか。」

「ああ、教科書も詰めて持っていくこうかな。」


しばらく歩いて僕たちは駅にたどり着いた。


「なあ、野村電車が止まってるじゃないか!どうすればいいんだよ!」

「しょうがない。家まで35分ぐらいだな。歩けばいいだろう。」

「えー、歩くの嫌です。面倒な」


本気で歩いて帰ることになってしまった。

レンタルサイクルとかがありそうなのに歩いて帰ることしかできないのか。

それでも線路沿いに歩いていけば最寄り駅につくのが幸いだろう。


    ※※※


「帰ってきたぞ、俺らの街に!」


野村が叫んだところ住人がこっちを向いた。チェーンソーを持っているのを見て驚いている人もいる。

案外この街には被害が少ないようだ。

ただ帰る途中に黒い人形が家を壊したりしていたのを止めたりしていたのですっかり帰ってくるのが遅くなってしまった。

駅前の商店街についてもまだ歩く。


「ところで野村の家は東のほうだったよな。」

「そうだな。駅の東口から5分ぐらい歩いたほうだ。」

「じゃあここで、またな。」

「いや、もうちょっと先の踏切わたるんだけど。」


気まずくなってしまったので黙って歩いていく。

野村の言っていた踏切に差し掛かって僕は言った。


「なあ、野村今日あったことなんだと思う?」

「さあ?あれに聞かれてもわかんねーよ。でも一つ確かなことは、生きていくには時に非常になることが必要だってことだ。」


野村の言うことはよくわからなかったがなんとなくイメージは伝わったような気がした。


「そうか。よくわかんないけどまた明日」

「ああ、また明日会おうぜ広人」


俺は野村と別れて家までの道を急ぐ。

家まで少し歩いてたどり着いた。

自電車を止めて玄関の扉を開ける。


「ただいま」

「広斗、帰ってきたのか!」

「姉ちゃんだけか。父さんと母さんはどこ行った?」

「だけとはなんだよ。とにかく、母さんと父さんは広斗が帰ってこないから心配して学校を探しに行ったよ。帰ってきたって電話かけとくよ。」


今は姉ちゃんだけしかいないがちゃんと全員帰ってきていた。

安全だとわかったら頭が重くなってきた。

俺は玄関にいきなり倒れてしまった。


「広斗、どうしたんだよ!」

「ごめん、立ってらんない。一回寝るよ。」

「ここで?ちょっと、寝るんだったら自分の部屋で寝なさい。ねえ広斗、あんたのプリン食べるよ。」


はあ?!起きたら後で文句言ってやる。

そのまま僕は返事もできずに意識が薄れていく。

薄れる意識のの中で僕は、この新しい世界で絶対に生き残ってやると決意した。

初投稿となりますがぜひよろしくお願いします!

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