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私はATM  作者: いりこ
8/15

芳江と結衣

 結衣が休みの日、給料を公共料金用に振り分けて置こうと近くの銀行に行こうとした。マンションを出た途端

「あら結衣さん出掛けるの⁉︎  」

と芳江の甲高い声が聞こえた。

「あっお義母さん。近くの銀行に行く所です」

「あらそう、私も行くわ」

芳江は銀行に付いて来た。結衣は芳江と歩きながら、また何を指摘される事か…やりくりまで言われるのだろうか…我が家の収入迄見ようとするのか…と不安を抱えながら歩いた。

 結衣は義母を大切にしたいとの思いを忘れない様に努めた。だが努力が実らず、プライベートに踏み込まれ、次から次へと傷つけられる事に自分の気持ちの置き場所を見付けられずに居た。

 晴久に頼りたい…しかし職場の先輩看護師から

『お姑さんの悪口を旦那に言っちゃダメよ。男の人の母親を思う気持ちは半端じゃ無いから。誰が見ても問題ある女も息子にとっては聖母だからね』

とアドバイスを受けていた。先日晴久がたかが唐揚げと解決させたのを考えると頷ける。

 しかし芳江がしょっちゅう訪問してくる以上、結衣にとって家は安らぎの場では無いのだ。

 今銀行に向かって歩いている間も芳江の嫌味は流暢に出て来る。信号待ちをしている人が芳江の嫌味を聞いて固まっている。芳江はそんな人達を睨み付けた。結衣は肩身を狭くして歩いた。

 ATMに着いた。生活費を振り分ける為に結衣のキャッシュカードから十三万下ろした。その様子を結衣にピッタリとへばり付き見て居た芳江が十三万と云う数字だけを見て

「十三万も何に使うの⁉︎ 」

と驚愕した顔を見せた。

「公共料金の…」

結衣の説明を遮り、

「晴久が汗水垂らして働いたお金を十三万も!貴女は夫に感謝は無いの⁉︎感謝無いわよね!だからこんなに無駄遣いしようと出来るのよ! 」

と懇々と熱の入った説教が続いた。

結衣は謝りながらATMから少し離れた所で芳江の話が終わるのを、相槌を打ち頷きながら待った。その間、数人の通りすがりの客が二人を横目で見て不穏な空気を感じながら後にして行った。


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