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対テロ特殊部隊スワン 血の巡礼団を壊滅せよ  作者: 風まかせ三十郎


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第61話 再会

 何てこと!

 わたしたちまで囚われの身になるなんて。秀一郎さんを救うつもりが捕まって。ミイラ捕りがミイラになった。ミイラ捕りって何だかよくわからないけど。

 アアッ、手首に巻かれた結束バンドが痛い。


 コニーは左右を盗み見た。

 同じく結束バンドで手首を拘束されたクリスとリンさんが、肩を落としてトボトボと歩いている。

 二人の背中には小銃が突き付けられていた。

 つまりわたしたちは地下牢へ連行される途中なわけで。

 ア~ッ、苛々する! 秀一郎さんは目と鼻の先にいるというのに、わたしはどうすることも出来ないのだから。

 クリスにそっと耳打ちした。


「ねえ、この状況、何とかならないの?」


 クリスが結束バンドをチラつかせた。

 

「諦めな。これじゃ反撃できねえだろ」

「……」


 ア~、情けない。こんな女がアムリア軍の精鋭とは……。


 クリスが声を潜めた。


「そうイラつくなよ。待ってりゃ、そのうち反撃の機会はやってくるって」


 リンさんも相槌を打った。


「そうそう、待てば海路の日和あり。慌てる乞食は貰いが少ないってね」

「はあ? なにそれ」とわたし。

「なんでもない。なんでもない」

 

 リンさんが笑い声を上げた。


「おい、静かにしろ」


 兵士の一人がご丁重にも英語で怒鳴った。

 そのとき……。


「キャッ!」


 つくづく悲鳴とは縁が切れない。でも突然足元がグラグラきたら誰だって驚く。

 やだ、地震!? でも中東で地震なんて滅多にないって。

 で、ご意見を伺おうとクリスの方を見ると、彼女、いつの間にやら背後の兵士の後頭部にハイキックを叩きこんでいた。

 あら、なんて素早いお仕事。

 で、リンさんの方はと見ると、やはり背後の兵士の腹部にミドルキックをぶち込んでいた。

 で、残されたわたしはなにをしたかというと、慌てて背後に控えた兵士の膝へローキックを。

 先の二人の兵士はアッサリと悶絶したが、わたしの相手は足元を掬われただけ。相手は横倒しの体勢から、必死の形相で小銃を構えた。

 マズい、撃たれる!


 ドーン!


 突然の大音響と共に、強烈な爆風が通路を吹き抜けた。

 思わず顔を背ける。

 一瞬、兵士の動きが止まった。

 リンさんがガツンと小銃を蹴り上げる。すかさずクリスが奪い取った小銃を突き付ける。

 相手は即座に両手を上げて降参した。

 クリスが兵士を立たせた。


「よーし、さっさとライオンの間に案内しな」


 それからわたしの方を見てウインクした。

 なるほど、待てばチャンスは向こうからやってくるってわけね。

 三人が互いの手首に巻かれた結束バンドを外し終えると、リンさんが呟いた。


「ねえ、クリス。さっきどこかで爆発があったようだけど」


 クリスが愉悦に満ちた笑みを浮かべた。


「まあ、察するにだ。大方、隊長たちが暴れてるんじゃねえかと」

「あらら、あたしたち、出遅れちゃったね」


 リンさん、肩を落としてがっくり。

 クリスの鋭い視線が左右に走る。


「そうガッカリするなよ。人質を救出すりゃ、手柄は俺らで独り占めだぜ」


 そうそう、肝心な事を忘れないでね。


 クリスの左手が下がった。

 通路の角に隠れると、数名の兵士が慌ただしく駆け去って行った。

 先へ進むにつれ、そんな場面が増えてゆく。

 でも敵兵は何か別の重大事に奔走しているようで、わたしたちを発見することはなかった。そんな幸運に支えられて一〇分ほど前進したろうか。わたしたちはとある一室の前で立ち止まった。


「ここ……」


 案内役の敵兵が目の前のドアを指さした。

 クリスが敵兵の肩に手をかけた。


「ご苦労さん」


 すかさず当身を喰らわせて敵兵を気絶させた。

 リンさんが試しにドアノブを捻ってみる。

 クリスを見て微かに頷く。どうやら鍵はかかっていないようだ。

 

「いい、開けるわよ」


 クリスとわたしが同時に頷く。

 リンさんがドアノブを握る手に力を込めた、そのとき……。


「さあ、入りなさい。教会の門はすべての人々に開かれているのですから」


 アアッ、あの声は! 冷たく人を嘲笑するあの声は……。


 無意識に身体が引けてしまった。

 リンさんがドアを蹴破ると、部屋の奥に見覚えのある人影が。


「お待ちしておりました」


 神父だ。

 ニヤニヤと人を小バカにしたような笑みを浮かべて、わたしたちを見つめている。

 右手に握られた拳銃は、わたしたちの方ではなく、……秀一郎さんの頭へ押し付けられていた。


「秀一郎さん!」


 叫ばずにはいられなかった。

 秀一郎さんは後ろ手に縛られて椅子に座らされていた。

 周囲を固めるように、二人の敵兵が小銃を構えて立っていた。

 そちらの銃口はわたしたちの方へ。

 秀一郎さんが強張った笑顔で呟いた。


「やあ、元気そうで何より」


 相変わらず呑気なことを……。

 安堵の気持ちも手伝って自然と笑みが零れる。

 神父の野郎がフンと鼻で笑いやがった。


「さて、無事に対面も果たしたことですし、ひとつ取り引きといきましょう」


 クリスがむきになって応えた。


「取り引きだと? 俺ら、テロリストとは取り引きしねえ主義なんだ。よく覚えときな」

「いいのですか? 大切なVIPがどうなっても」


 神父は身を屈めると、秀一郎さんの首に手を回して強引に立たせた。

 秀一郎さんを盾としたのだ。これじゃ迂闊に手が出せない。

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