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自重知らずの異世界転生者-膨大な魔力を引っさげて異世界デビューしたら、規格外過ぎて自重を求められています-  作者: mitsuzo
第二章 騎士学園編

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085「予選トーナメント三回戦(9)」



「それでは、第八試合⋯⋯⋯⋯はじめーーーっ!!!!!」


 ゴーーーーン!


「先程の試合の余韻が残っていて何ともやりにくいですが、早々にカタをつけさせてもらいます。観客にもあなたにも『変』に期待を持たせるのはよくない⋯⋯」

「⋯⋯闇属性下級魔法『隠密(コバート)』」

「え? 今、君なんて⋯⋯⋯⋯っ!?」


 開始早々、サラがボソッと小声で魔法を展開。すると、サラの体から『黒い霧』が発生し、サラを包み込んだ。


「こ、これは⋯⋯まさか! 闇属性魔法っ!?」


 ジェヌスが闇属性魔法を見て、動きを止める。


「っ!? あ、あれは、闇属性魔法っ!!!!」


 レイア姫はサラが展開した魔法を見て身を乗り出す。すると、観覧席や舞台周囲で見ている試合を終えたBクラスやCクラスの一回生も、目の前のサラの闇属性魔法にレイア姫と同様驚きを示していた。


「レ、レイア姫様。やっぱり闇属性魔法は珍しいんですか?」

「あ、ああ。闇属性魔法は光属性魔法同様使える者は少ない。それにもっと言えば、光属性よりも闇属性のほうがさらに使役できる者は限られる。それに⋯⋯」

「?」

「それよりも、何よりも驚きなのが、それを使役している者が一回生で、しかも平民の生徒という点だ。この目の前の事実に私も含め、この会場の皆が珍しさ(・・・)とその使役者の出自(・・)に驚愕している」

「⋯⋯なるほど」


 要するに、滅多に拝めない『闇属性魔法』を一回生の平民の生徒が使ったもんだから、二重、三重の意味で度肝を抜かれている皆さん⋯⋯という図式のようだ。


 Aクラス配属の上級貴族ジェヌス・ピレリが魔法を放とうとした瞬間、先にサラが闇属性魔法を展開し、サラの周りを黒い霧が包んだため、一旦、動きを止めていた。そして、霧が晴れると、


「え? さ、さっきまでいた彼女は一体⋯⋯どこに?」


 ジェヌスは舞台上でキョロキョロと周囲を見渡すが、対戦相手であるサラを見つけられないでいた⋯⋯⋯⋯目の前にいる(・・・・・・)にも関わらず。


「ん? あのAクラス配属の奴は、何をキョロキョロしているんだ?」

「あれが、闇属性初級魔法の『隠密(コバート)』の効果だ。効果対象は相手のみだが、視界から術者の姿と気配を希薄にさせるというものだ。しかし、初級魔法の『隠密(コバート)』であの距離で、しかも目の前にいる相手を認識できないということは、それだけこのサラの魔法威力が高いのだろう。信じられん。彼女は本当に平民(・・)なのか?」


 レイア姫が横で説明している間に、舞台ではジェヌスがサラをみつけられずにオロオロとする中、サラはジェヌスの背後に立ち、手をかざし魔法を発動する。


「『炎球(フレイム・ボール)』」

「がっ!?」


 ドサ。


 サラの放ったのは火属性の初級魔法とはいえ、背後からの『不意打ち』であれば、さすがの上級貴族であるジェヌスも意識を刈り取られるのは自明の理。そのまま失神して倒れ、決着がついた。それは、呆気ない幕切れであった。


「試合終了! しょ、勝者はまたもや、平民のサラ選手! 本日まさかの⋯⋯二回目の平民生徒による下克上となりましたー! ちょっ! これ、大丈夫なのぉぉぉぉ!!!!!!」

「「「「「うおぉぉぉぉぉ!!!! いいぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」」


 司会のフェリシアは二度目の下克上に困惑していたが、観客のほうは前回と違って結果を楽しんでいるようだ。柔軟性高いな、この国の国民。



********************



「ふー。それにしても二回続けて『平民による下克上』が発生するとはな」


 レイア姫が少しぐったりして横で腰を下ろしている。目の前では十試合目が行われているが、さっきまでの二試合とは違って、だいぶレベルが低い試合だったため、レイア姫も観客も少し興奮した頭や体を休ませていた。


「そうですね」

「おいおい、カイト。君は他人事のように振る舞っているが、一回生の中で一番のインパクトは君だからな?」

「え?」

「だってそうじゃないか。カイトはそもそも予選トーナメントに参加せずに『学園長推薦シード』で決勝トーナメント行きが決定しているんだよ? それは、つまり試合をせずして『Aクラス入り』が決定しているということなんだぞ? 下級貴族の君がだよ? 目の前の試合で君も観客も忘れているようだが、一番のインパクトはぶっちぎりで君だよ、カイト・シュタイナー」

(ドキ!)


 そう言って、ニコリと少し挑発するような笑みを浮かべるレイア姫に、俺は目を奪われた。


「ふふ、決勝が楽しみだよ」

「あ、え、いや、その⋯⋯はい」


 な、何だろう? 今日のレイア姫はやけに積極的だ。ただ、俺はこの世界の常識をまだよく知らない部分が多いから、レイア姫のこういった言葉や行動が俺に興味を示しているところからきているのか、正直、判断ができない。


 最初は「あれ? 姫様、俺に惚れたか?!」などと思っていた時期もありました。しかし、しかしだ。彼女は王族でお姫様なのだ。なので、俺の周囲にいる人間とはまた常識が違っている可能性が非常に高い。


 なので、これまでのレイア姫の行動がすべて「好意によるもの」と勘違いすると、後で痛いしっぺ返しを食らう気がしてならない。


 俺がレイア姫に心奪われ、ドキマギしている横で試合が終了していたようだ。勝ったのはAクラス配属の上級貴族の生徒。まあ、順当通りの勝利のようだ。


「あ、レイア姫様! いよいよ、最後の試合ですよ。最後はどうなりますかね?」

「はっはっは。それは、少し期待しすぎだぞ、カイト。残念ながら先程の試合のように、順当通り上級貴族の生徒が勝つと思うぞ? その前の二試合が異常過ぎたのだからな」

「ふーん、そうなんですね」


 おっと、これまた『フラグ』のような⋯⋯。


「それでは、予選トーナメント最終の第九試合を開始致します!」


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