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007「上級魔法士のレコ」



——月日は流れ、俺は五歳になった


 この五年で、夜な夜な忍び込んでは父親の書斎で書物を読み漁っていた俺はついに書斎の本すべてを読破。おかげでこの世界の文化や常識、そして地球にはなかった魔法、魔力、魔獣といった知識も獲得した。


 あと、エルフや精霊といった厨二心を非常にくすぐるジャンルもあったが、父の書斎にはその手の本がほとんどなく、あくまでこの世界にはそういうものが存在する程度にしか学べなかった。


 まあ、大きくなれば学べる機会はいくらでもあるだろうと思ったので特に気にはしていなかったが、そんな折、父のベクターから「お前は光るものがあるから家庭教師をつけてやろう。しっかりと勉強しなさい」と言われ、家庭教師がつくこととなった。


 いきなり、ベクターからそんなことを言われた俺は「もしかして身体強化魔法で書斎に忍び込んで勉強したことがバレた?」と思ったが、もし、それがバレていれば勉強うんぬんの前に「なんで五歳にも満たない子供が身体強化の魔法を使いこなせてるんだ?!」とそっちで驚かれるだろう。


 だが、そんなことを言われたことはなかったので別にバレたわけではないのだろう。ベクターが「お前は光るものがある」と言った理由はわからないが、単純にベクターが勝手にそう感じて言っただけだと思い、俺は特に気にすることなく、その疑いはすぐに払拭した。



*********************



——一週間後、家庭教師が我が家にやってきた。


「はじめまして。上級魔法士のレコ・キャスヴェリーと申します」


 自己紹介をしたその⋯⋯燃えるような赤い髪をしたツインテールの女の子はものすごい美少女だった。


 すげー! さすが異世界! 美少女レベル高っ! やればできるじゃないか、異世界!


 などと、一人平静を装いながら心の中で歓喜のファンファーレを鳴らしていた。


 それはさておき、俺はベクターが「家庭教師」と言っていたので、てっきり大人が来るものだと思っていたのだが⋯⋯目の前にいるのは、


「カイト。この子はな、わずか六歳にして騎士団に飛び級で特例入団を果たした『天才少女』レコ・キャスヴェリー君だ! 今回は特別にこの子にカイトの家庭教師をお願いした。彼女は魔法だけでなく学問もこの年齢にして騎士学園で学ぶものをすべて習得したすごい子だ。存分に勉強に励むんだぞ」

「お、お父様⋯⋯どうして、そんなすごい人が僕の家庭教師に⋯⋯?」

「うむ。私の親友が騎士団にいてな⋯⋯そいつに少しお願いをしたまでだ。問題ない」

「は、はあ⋯⋯」


 よくわからないが、まあ、ベクターが親バカな感じでその親友とやらに「優秀なこの子を家庭教師としてよこしてくれ」とでも無理強いでもしたのだろうか。


 それにしても⋯⋯⋯⋯この世界のことをまだ詳しくは知らないが、それなりに勉強をして一般常識は備わっているつもりの俺がはっきりと言わせていただこう⋯⋯⋯⋯絶対に彼女はタダ者ではない。


 まず、六歳で『上級魔法士』という称号を持っているとかこの世界の常識ではあり得ないし、そもそもこの⋯⋯『クラリオン王国騎士団』に入るには、十歳になったら入学する『クラリオン王国騎士学園』で厳しい卒業試験をクリアして卒業しないと入れない。


 そんな騎士団に騎士学園を入学せずに飛び級で入団するなど、この子は『規格外の天才』なのだろう。いや間違いない。


 いやはや、表にはあまり出さないがベクターも結構『親バカ』なのかもしれないな。


 こうして、レコが家庭教師としてウチに通うようになった。



*********************



——家庭教師 初日


 レコは上級魔法士と言っていたので、てっきり魔法も教えてくれるのかと思ったが普通にこの国の歴史や地理といった勉強の講義をするだけで魔法の講義はなかった。


 そこで、レコに「魔法も教えてくれるの?」と聞いてみた。すると、


「はあ? あんた馬鹿じゃないの? 五歳で魔法なんて扱えるわけないじゃない! 馬鹿じゃないの!」


 と、一つ上の六歳のレコに言われた。


 あと、さっきまでの大人しそうな少女はどこへやら。結構⋯⋯というか、かなり口が悪い。


 そして、レコの罵倒はそこで終わるどころか、さらなる追い討ちをかけるようにマシンガン罵倒を始める。


「いい? 魔法を扱えるようになるには、まず魔力をコントロールする必要があるの。でも、この魔力をコントロールする為には、そもそも魔力の存在を感じ取ることができないといけないわけ。つまり、この魔力の存在を体内で感じ取れない間は魔力コントロールの訓練はできないし、魔力コントロールができないと魔法は扱えないの! あんたにそれができるの? 魔力を感じ取ることができるの? 普通どんなに早くても十歳くらいにならないと魔力の存在を感じ取ることなんてできないの! だから、私はあんたに魔法なんて教えることは絶対にないってこと! わかった?!」


 最初「口数が少ないシャイな子かな?」と思っていた自分を殴ってやりたいです。あと、理由はわからないが俺のことをかなり嫌っているようだ。


「わ、わかったよ⋯⋯」

「わ・か・り・ま・し・た」

「わ、わかり⋯⋯ました」

「はい、よくできました。じゃあ次、講義続けるわよー」

「⋯⋯」


 あーーーーーーーーー!!!!!!!!!


 クソ生意気なガキだなぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!!!!!


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