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自重知らずの異世界転生者-膨大な魔力を引っさげて異世界デビューしたら、規格外過ぎて自重を求められています-  作者: mitsuzo
第二章 騎士学園編

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054「揺れる騎士学園〜第三者side〜(2)」



——一回生の『合同魔法授業』で起こした事件は、二回生の間でも話題になっていた。


 そして、それは次期マドンナ候補の一人である『SUGOIDEKAI先輩』こと、ケイト・ジュリアーノもまた例外ではなかった。


【二回生のおねいさま方side:ケイト・ジュリアーノ】


「カイト・シュタイナー?」


 授業の休み時間——ケイト・ジュリアーノが次の魔道具の授業の準備をしていると、ケイトといつも一緒にいる下級貴族の子が話しかけてきた。


「はい。今、学園内で話題になっている生徒の名です」

「⋯⋯聞いたことないわね」

「何でも、昨日の『合同魔法授業』でジャガー財閥のガス・ジャガー様を圧倒したとか⋯⋯あと、超級魔法の使い手という噂も⋯⋯」


 ケイトももちろんその話は知っていた。今朝はどこへ行ってもずっとこの話題で持ちきりだったからだ。まあ、あのジャガー財閥の三男を下級貴族が圧倒したのだから話題になるのはわかる。しかし今回は、それ以上に皆の話題となっていることがある。


「それよりも、その下級貴族⋯⋯カイト・シュタイナーという一回生の生徒が、超級魔法の使い手というのは本当なんですの?」

「わかりません。ただ、生徒会長のエリナ・クインズベル様や副会長の⋯⋯ケイト様のお姉様であるセリーヌ様も今回の件に関心を示しているそうです」

「お姉様も⋯⋯ね。わかったわ。それじゃあ、ポーラ、そのカイト・シュタイナーのこと、いろいろ調べてきてちょうだい! お姉様よりも先に!」

「はっ! 承知しました!」


 ふん! お姉様には負けませんわよ!!


【二回生のおねいさま方side:ミーシャ・リンドバーグ】


「カイト・シュタイナーか。何だか凄いやつが出てきたなー!」


 そう言って、目をキラキラさせながらシャドーを始めたのは、褐色系健康美少女ミーシャ・リンドバーグ。 


「⋯⋯ミーシャ様。ダメですよ、決闘(・・)を申し込むのは」

「ええっ?! ダメなのっ!!」

「当たり前です! その生徒はまだ一回生なのですよ! はぁ〜〜〜〜〜〜⋯⋯」

「ええええええええええ〜〜〜〜! 決闘したいぃぃ〜〜〜〜!!!!」


 決闘を申し込もうとする意図を読まれ、それを即座に否定され落ち込むミーシャと、そのミーシャの世話役のような立ち位置でいつも一緒にいる下級貴族のタマリ・ヤーヴェは「また決闘ですか⋯⋯」と、大きなため息を漏らした。


「まあ、正直⋯⋯この話、かなり盛っている(・・・・・)んじゃないかと私は推測してます」

「そうなの?」


 タマリの推測の話に、ミーシャが理由を聞く。


「はい。まず第一に下級貴族が上級貴族に勝つことなどあり得ません。まして、まだ騎士学園に入学したばかりの一回生なら尚更です。一回生の生徒の中にはまだ魔法どころか、魔力コントロールすらできない子もいるのが現実ですから。そして、何よりうさんくさい(・・・・・・)のは上級貴族の生徒の中でも一・二を争う実力者である、あのジャガー財閥のガス・ジャガー様を圧倒したなど、あまりにも荒唐無稽⋯⋯盛り過ぎもいいとこです」


 そう言って、タマリが饒舌にミーシャに説明をする。


「なーんだ。すっげー強い奴なのかと思ったんだけどなぁ〜」

「まあ、もしかしたら多少強いのかもしれませんが、噂というのはだいたい盛って伝わるものです。あまり期待しない方がいいと思いますよ」


【二回生のおねいさま方side:バーバラ・タンゼント】


——図書室内カフェテリア


 お昼休み、いつも図書室内にあるカフェテリアで食事をしているのは図書委員のバーバラ・タンゼント。今日もいつものように食後、紅茶を飲みながら読書を満喫している。邪魔なのか、長く透き通るような漆黒の黒髪を指で耳元にかけると、その所作の流れでふと口を開いた。


「カイト・シュタイナー⋯⋯何者ですか、その生徒は?」

「はっ! 今朝から話題になっている下級貴族の一回生です。どうやらジャガー財閥のガス・ジャガー様を圧倒し、尚且つ、超級魔法の使い手という話です」

「⋯⋯そう」

「⋯⋯」


 バーバラは何か思案しているのかと思うほど「⋯⋯そう」と言ったっきり、返事を返さない。しかし、それが思案しているわけではなく、単に『そういうしゃべり方』だと理解している話しかけられた下級貴族のイーナ・マキアートは知っている。


「⋯⋯『現実は小説よりも奇なり』とは、よく言ったものですね」


 イーナの言う通り、ゆったりとした口調で再び話し始めたバーバラ。


「ただ、この噂はかなり盛っている(・・・・・)という話も聞きます。実際、皆、面白おかしく話していますが誰も本気にはしていないようで、実際、生徒の大半は『カイト・シュタイナーが魔力暴走しそうになった状態』をアンジェラ先生が『カイト・シュタイナーが超級魔法を打とうとした』と勘違いしたのではないか、と理解しているようです。正直、私も皆と同じ意見⋯⋯」

「ふふ。さて、どうでしょうか?」

「え? バーバラ⋯⋯様?」

「私の知る限りでは、あの第二王女レイア・クラリオン様がその当事者の下級貴族カイト・シュタイナーに対し、あの場で『超級魔法『極致炎壊(フレア・バースト)』を打てるとは聞いてましたが本当に打てるのですね』という言葉を発していたと聞いております」

「え? そ、それは、どういう⋯⋯?」

「さて? どういうことでしょう? ええ、ええ、不思議ですわよね? レイア姫様が下級貴族という身分の低い生徒が『超級魔法を打てる』ということを、さもはじめから(・・・・・)知っていたかのような発言ですもの。そうすると、今回の騒動⋯⋯『本当に(・・・)アンジェラ先生の勘違い』なのでしょうかね?」


 コロコロと、バーバラはさも楽しげに微笑む。


「え⋯⋯? そ、それじゃあ、あのカイト・シュタイナーは本当に『超級魔法の使い手』ということなのですか?!」


 同じ下級貴族であるイーナが「信じられない!」といった驚愕な表情を浮かべる。


「はてさて、どうなのでしょうね? まあ、いずれにしても二週間後に開かれる一回生の『クラス編成トーナメント』が楽しみなのはたしかですわ。ええ、ええ、これはもう見逃せないですわね」


 そう言うとバーバラは「この話は終わりです」とでも言うかのように、本に視点を移動し再び続きを読み始めた。


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