165「待ち伏せ」
【告知】
誠に申し訳ありませんが、仕事が忙しくなってしまい
現在のペースでの投稿が難しくなってしまいました。
なので、次回からしばらくの間は
「自重知らずの異世界転生者」
「異世界ハズレモノ英雄譚」
どちらも「不定期投稿」となります。
大変恐縮ではございますが、何卒よろしくお願いします。
2022年6月7日(火)
mitsuzoエンターテインメンツ
「ひゃはははははーーーっ!! よ・う・こ・そ・! 私の可愛い生徒たちぃぃぃぃーーーっ!!!!」
中庭に行くと、そこにはミモザと五人の黒装束が見えた。しかし、その姿は『観念した』感じでもなく、『怯えた』感じでもなく、まるで⋯⋯⋯⋯学園長らが来るのを事前に知っているかのようだった。
「⋯⋯学園長」
「ふむ。やはり、情報は筒抜けのようじゃな」
ドレイクが学園長に耳打ちすると、学園長も「想定内」という意味の返事をする。
「ミモザ・ジャガー!」
ここで、クラリオン王国騎士団団長アルフレッド・ヴェントレーがミモザへ忠告する。
「お前には『国家反逆罪』の容疑がかかっている。大人しく、投降しなさい!」
しかし、
「ぎゃはっ! ぎゃははははははははっ!! 投降? 笑えるっ!!」
ミモザはアルフレッドの忠告を真正面で否定。
「投降なんてするわけないじゃない! むしろ、こっちは⋯⋯⋯⋯わかった上で待ち伏せたんだから」
「何っ?!」
「邪魔なあなたたちは、先にここで⋯⋯⋯⋯⋯⋯死んでもらうわ!」
「「「「「っ!!!!!!!!」」」」」
バッ!
ミモザの言葉を合図に、ミモザの後ろにいる五人が一斉に黒装束を脱いだ。
「ん? 何者⋯⋯⋯⋯⋯⋯はっ?! あ、あれは⋯⋯っ!!」
「?⋯⋯学園長?」
学園長が黒装束を脱いだ五人の姿を確認すると、怯んだ声を上げた。
「ま、まさか、あれは⋯⋯いや、あいつらは⋯⋯」
今度はアルフレッドが五人の姿を見て顔を歪める。
「な、何ですか、学園長っ?! あの五人は⋯⋯何なんですか!!」
リュウメイが学園長や騎士団のメンバーが五人の姿を見て、突然、戸惑いの反応を示したため、学園長に何事かと声をかける。
「あれは⋯⋯あいつらは⋯⋯元騎士団、そして元冒険者じゃ」
「⋯⋯元?」
「⋯⋯ああ。本来、こんな表に出てくる⋯⋯いや出てこられる奴らではない。なんせ、こいつらは犯罪者じゃからな」
「「「「「犯罪者っ?!」」」」」
学園長の言葉に、学園騎士団の生徒たちに動揺が走る。
「本当なら牢屋に入れられている者たちのはず⋯⋯。なのに、ここにいるということは、おそらくミモザが関係する者たちがこいつらを脱走させたのだろう。じゃが、それにしても⋯⋯⋯⋯わざわざやっかいな者たちを利用するとは⋯⋯」
「やっかいな者たち?」
「うむ。あそこにいる五人の左から1、3、4番目の者らは元騎士団の『二つ名付き』の騎士じゃ」
「「「「「二つ名⋯⋯付きっ!!」」」」」
騎士団の中でも特に強い者は元騎士団長でもある学園長ハンニバル・シーザーの『悪虐』のように『二つ名』が付けられる。なので『二つ名付きの騎士』というだけで容易に強者であることが想像できる。
「⋯⋯そして、残り二人は元冒険者⋯⋯⋯⋯しかも『元A級冒険者』じゃ」
「「「「「え、A級冒険者っ!?」」」」」
この世界での冒険者は数多くいるが、その中でも『A級冒険者』は極端に数が少なくなくなる。理由は単純にそのレベルに到達できる冒険者が少ないからだ。一般的には『二つ名付き騎士』と同じ強さかそれ以上と言われている。
「じゃが、ワシが『やっかい』と言ったのは⋯⋯それが理由ではない」
「え?」
「ここにいる奴ら、全員が『残虐性』で有名な奴らだということだ!」
「ハ、ハンニバル様っ!?」
「どうした、ケビン⋯⋯」
「あ、あいつらの目を⋯⋯」
そう言われて、学園長が確認すると、
「なん⋯⋯じゃ⋯⋯? 全員が『白目』を向いて⋯⋯おる!? 死んでいる⋯⋯のか?!」
「いえ、死んでいるということはないようですが、おそらくは⋯⋯」
「『薬』⋯⋯か」
「はい。見たところ、話が通じるような正常な状態ではないようです!!」
「⋯⋯ミモザの何でも言うことを聞く⋯⋯⋯⋯『傀儡人形』といったところか」
「これが⋯⋯あのミモザの『余裕の笑み』といったところでしょうね」
「⋯⋯アルフレッド」
ここで、アルフレッド・ヴェントレーも話の中に入る。
「おそらく、あの五人に盛られている『薬』はミモザの『傀儡』にするためだけではなく、能力の大幅な引き上げ⋯⋯⋯⋯限界解除の効果もあるかと⋯⋯」
「そうじゃな。あの五人は知っているがここまでの魔力を持っている者たちではなかったからな。ここにいてビンビンとあいつら五人の凄まじい魔力を感じるということは⋯⋯⋯⋯『限界解除』をしているのじゃろう」
「ただ『能力の急上昇』で言えばこちらも一緒です。しかも私たちは『薬』での急造ドーピングではなく、『カイト式魔力コントロール』というちゃんと訓練し習得した『強さ』です。なので、能力値が互角であれば最終的に勝つのはこちら⋯⋯かと」
「ふむ。確かにあの五人を見た限り、長時間は持たなそうじゃな」
「そういうことです。なので、手合わせして『互角レベル』であれば時間をかけてじっくりと戦えば問題ないかと思います」
「うむ。では、アルフレッド、ケビン、ゼノをリーダーとして三班に分かれ、敵五人のうち『各班1人』を相手にするのじゃ」
「で、ですが、それですと、残り二人があぶれてしまいますが⋯⋯」
「フン。その二人がワシが相手してやるわい」
「ええっ?! ハ、ハンニバル様が一人でですか!! 薬でドーピングして『限界解除』している二人を⋯⋯っ!?」
「ふむ。どうやら、しばらくワシが戦わんようになって⋯⋯⋯⋯ずいぶん舐められたもんじゃな」
「「うわっ!?」」
ゴウッ!!!!!!!!!!!!!!!
——瞬間、学園長の体から膨大な魔力が放出されると、近くにいたケビンとアルフレッドが吹き飛ぶ。
「どれ、若いモンに見せてやるかのぅ〜⋯⋯『悪虐』の二つ名付きである、このワシの強さを」