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163「作戦完了(ミッション・コンプリート)」



「この辺か⋯⋯」


 レイアは早速、洗脳魔法を無効化する魔法『大規模偽装記憶消去グラン・メモリー・イレイズ』が収納された魔道具となるブレスレットを持って、登ってきた塔の屋上の中心に立つ。


「お、おい、カイト・シュタイナー⋯⋯本当に大丈夫なんだろうな?」

「大丈夫です。学園でも事前に確認していますから」

「本当に、本当に、本当〜〜〜〜に! 大丈夫なんだな!?」

「はい、大丈夫ですから!」


 普段は色々画策しつつスマートで余裕な態度を見せるラディット国王だが、今は俺の横であたふたしながら何度も俺に確認している。⋯⋯まあ、一国の王といえど『一人の父親』ということか。


「では、行きます⋯⋯⋯⋯ハァッ!!!!」


 カァァァァァァーーーーーーっ!!!!!!


 レイアが握り締めたブレスレットに魔力を注ぐ。すると、ブレスレットからまばゆい光が一気に広がる。そして、その光は塔を超え、全方位に広がっていった。


「⋯⋯ふぅ。これでいいのか、カイト?」

「ああ、魔道具のちゃんと発動したはずだ。それよりもレイア⋯⋯体調とか問題はないか?」

「!⋯⋯あ、う、うん、大丈夫だ」

「そうか。無理はしないでくれよ」

「は、はい⋯⋯!」

「?」


 レイアが顔を真っ赤にして少ししおらしい態度を取った。⋯⋯なぜだろう?


 さて、それはそうと、あとは魔法効果を確認するだけか。


「で、どうだ?」


 俺は、記憶が戻ったかをイグナスやザックなどみんなに確認を取った。


「ああ、大丈夫だ。ちゃんと記憶として戻っている」

「はい! ちゃんとカイト様のご両親であらせられるベクター様とジェーン様の記憶がはっきりと蘇りました!」


 と、イグナスとリリアナが伝えると、他のみんなも同じように効果があったと教えてくれた。一応、周囲にいるラディット国王の護衛をしている兵士にも確認を取ったが、ちゃんと記憶が戻っていたようだ。


「⋯⋯素晴らしい。カイト・シュタイナー、改めてお礼を言わせてくれ。本当にこのようなオリジナル魔法を作ってくれてありがとう」

「!⋯⋯ラディット国王」

「これまでも私やハンニバル様が手を尽くしたにも関わらず、解決できなかったこの『洗脳魔法の無効化』を実現してくれて本当にありがとう⋯⋯」

「や、やめてくださいよっ!? そんな、らしくない(・・・・・)ラディット国王のその態度は、ちょっと苦手ですからっ!!!!」


 俺はラディット国王の態度に、つい本音をこぼしてしまう。すると、


「⋯⋯ほう? カイト・シュタイナーはこういうのが(・・・・・・)苦手なのだな?(ニチャァ)」

「⋯⋯ほう? カイトはこういう態度(・・・・・・)には免疫がないのだな?(ニチャァ)」


 ラディット国王(親バカ)レイア(その娘)が似たようなセリフと反応を示した。


 親子かよっ!!⋯⋯⋯⋯あ、親子だったわ。



********************



「じゃあ、これでまずは俺たちの『洗脳魔法無効化ミッション』はコンプリートだね、カイト!」


 ザックは魔道具発動するまでは緊張していたようだったが、今は肩の荷が降りたのか元気の良い声で話しかけてきた。


「そうだな」

「うむ。では、いよいよ(・・・・)向かうか⋯⋯⋯⋯学園長のところへ」

「ん? ああ、そのことだけど⋯⋯」

「? どうした?」

「ちょっと、やりたいことがあるから⋯⋯⋯⋯少し待っててくれ」



********************



——10分後


「よし、では行くとするか!」

「「「「「はいっ!!!!」」」」」


 レイアがみんなに威勢の良い声をかけ、城から移動するところで、


「カイト・シュタイナー⋯⋯」

「はい」


 ラディット国王が俺だけを呼び止める。


「娘のことはもちろんだが、ハンニバル様のことも⋯⋯よろしく頼む」

「はい。もちろんです」

「それと、彼女のこと(・・・・・)は、私がちゃんと手を回すから心配しなくともよい。だから、お前は全力で奴らを叩きのめしてくれ」

「⋯⋯はい」

「とはいっても、地形を変えたり、学園をめちゃくちゃにするのは自重(・・)するように」

「当たり前じゃないですか。俺を誰だと思っているんですか。ではいってきます!」


 そう言って、カイトは足早にラディット国王の前から去っていった。


「いや、お前だから言ってんだよ!」


 ラディット国王のツッコミはカイトに届くことはなかった。



********************



——一時間前/『魔法使役者検挙班』


「どうじゃ?」

「はい。今、魔道具(・・・)にて確認したところ、犯人(・・)の反応が学園の中庭のほうに現れました」


 学園長の問いに答えたのは、騎士団に所属しているイグナスの兄『ケビン・カスティーノ』。


「ふむ。わざわざそんな人目につきやすい場所にいるのか? この日のこと(・・・・・・)を知っていて、尚、そんな場所にいるということは⋯⋯」

「『罠』⋯⋯でしょうか?」

「まあ、その可能性はあるじゃろうな。ただ、どんな『罠』かあるかわからんが⋯⋯⋯⋯このメンツならちょっとした『罠』などあってないものだろう?」

「そうですね。正直⋯⋯『過剰戦力』かと」


 実際、ケビン・カスティーノの言う通り、ここにいるのは学園の一回生とはいえ優秀なAクラスの生徒、そして、騎士団の二つ名を持つ有名人が騎士団長のアルフレッド・ヴェントレーを中心に三人もいる。⋯⋯極めつけは『悪虐(バーバリアン)』の二つ名を持つクラリオン王国を代表する『最強の一人』である学園長ハンニバル・シーザー⋯⋯。これだけのメンツがいるだけでもかなりの過剰戦力だが、さらに、ここにいる者たちは皆、『カイト式魔力コントロール』を習得した者たちである。


 それらを考えれば、ケビン・カスティーノの言葉が『傲慢』というわけでもないことがわかるだろう。


 しかし、それがまさか⋯⋯⋯⋯のちに覆る(・・・・・)ことになろうとは、この時誰も予想だにしてなかった。


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