162「作戦決行」
——三日後/午後
「ではこれより、『一掃作戦』を開始する。各自、作戦通りに速やかに行動するように!」
「「「「「はいっ!!!!」」」」」
クラリオン学園騎士団長であるレイア・クラリオンの号令により、『一掃作戦』は開始。作戦通りに『洗脳魔法無効化班』と『魔法使役者検挙班』に分かれ出発した。
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『魔法使役者検挙班』
・カイト・シュタイナー
・レイア・クラリオン
・イグナス・カスティーノ
・ザック・カーマイン
・ドレイク・ガリウス
・リリアナ・ハルカラニ
・サラ・ウィンバード
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「みんな遅れるな!」
「「「「「はいっ!!!!」」」」」
レイアを先頭に俺たちは学園から一直線に王城に向かっていた。
「レイア、王城のほうはすぐに入れるのか?」
「問題ない。昨日、お父様には事情を伝えてある。⋯⋯というより、学園長からすでに連絡は行っていたようだがな」
レイアはクスッと笑いながら答える。
「そう言えばさー⋯⋯学園長とラディット国王ってずいぶん仲良しみたいだけど、どういう関係なんだ?」
「学園長⋯⋯ハンニバル・シーザー様は祖父の友人で、その息子であるお父様は魔法や体術などを全てハンニバル様から直々に指導を受けていたみたいだな」
「へー⋯⋯『直弟子』って感じか」
「うむ、そんな感じだと思う。昔から学園長にはいろいろと可愛がられていたようだ。だから、今回の作戦にも理解があるという感じだ」
「いや、むしろ学園長とラディット国王二人で水面化でいろいろ画策して動いていたかもな」
「なるほど。⋯⋯それはあるかもだな」
「じゃあ、ちゃっちゃと済ませて学園長たちが向かっている『学園の教諭棟』へ俺たちも向かうか」
「ああ、そうだな。⋯⋯どちらかというとあちらが心配ですだからな」
「⋯⋯レイア姫様」
「! ドレイク」
すると、スッと気配をほとんど感じさせなかったドレイク・ガリウスが間に入ってきたのでレイアが軽く驚いた。
「ここで『その話』はお控えください」
「⋯⋯そうだった。すまない」
「⋯⋯⋯⋯」
二人の会話を聞いた俺もまたいろいろと物思いに耽った。
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「王城に到着します」
そうこうしているうちに俺たちはすぐに王城に到着。
「よし! ここからは私が案内する。ついてまいれ!」
そう言って、レイアとドレイクが先頭になって城内へ入っていった。
「それにしても、今日のドレイクはいつもと違って積極的だね」
「そうだな。いつもはあまり周囲とは関わらない感じだがな⋯⋯」
ザックとイグナスがそんなやり取りをするくらいには、普段のドレイクは言葉少なげだし周囲に積極的に溶け込むような素振りはない。⋯⋯まあ『クール』な感じだ。
しかし、今回は『事が事なだけ』にドレイクは率先して動いているのだろう。
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「待っておったぞ、レイア!」
「おと⋯⋯陛下。よろしくお願いします」
今、俺たちはラディット国王のいる『王宮の間』にやってきた。
「うむ。ではついてくるがよい」
そう言って、ラディット国王とその従者を先頭に俺たちは『目的の場所』へと向かった。
「⋯⋯それにしても、カイト・シュタイナーよ。貴様は相変わらずとんでもないようだな?」
「といいますと?」
「『魔道具科』の一件じゃよ。オリジナル魔法を10歳というその歳で作り出し、しかもその作成した魔法には『超級魔法』も含まれているとか。にわかには信じられんが、今こうしてここにいるということは正しいということなのだろうが⋯⋯にしても『規格外』にも程があるわ」
「え? 別にそんな大した事してないですよ?『第一級特別研究室』のソフィア室長やみんなが協力してくれたおかげですし⋯⋯」
「⋯⋯ふむ、なるほど。『本人に自覚なし』とは、こりゃやっかいだな。レイアが悩むのも納得がいく」
「ちょっ!? お父⋯⋯陛下っ!!」
「いやいやいや、レイア⋯⋯これは大事なことだぞ? 将来の伴侶がこのような『常識ない奴』だとお前が苦労するからな」
「え? 将来の⋯⋯⋯⋯何ですか?」
「き、きききき、聞こえなかったのならそれでいい! カイト、大丈夫だ! 今の陛下の言葉は聞き直さなくてもよい!」
レイアが顔を真っ赤にしながら、俺の前でバタバタと手を振る仕草を見せる。⋯⋯あら、かわいい。
そんな、ほんわかなやり取りをしていると、
「⋯⋯陛下、着きました」
「うむ。皆のもの⋯⋯ここが、このクラリオン王国の中心に位置する塔だ」
俺たちは高くそびえ断つ真っ白な細長い塔へと入っていった。
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——屋上
屋上に着いた俺たちはそこで魔道具を取り出す。
「ほう、これが?」
「はい。これがカイトが作ったオリジナル魔法のうちの一つ⋯⋯洗脳魔法を無効化する『大規模偽装記憶消去』の魔法が収納されたブレスレットです」
ラディット国王の質問にレイアが答えながら、そのブレスレットを握り締める。
「レイアが魔道具を発動させるのか?」
「はい。この魔道具に入っている『大規模偽装記憶消去』は闇属性の超級魔法ですが、魔道具への魔力供給は他の魔道具と同じく、作成者以外の誰でも『魔法発動のきっかけ程度の魔力』を注ぎ込むだけで魔法を発動できます。実際に一度確認はしていますが、今回の本番でも実験も兼ねて、私が魔道具発動を行うことになっています」
「おい、カイト・シュタイナー⋯⋯お前がやれ」
「い、いやいや⋯⋯! 話、聞いてました?!」
「お父様っ!!」
レイアがたまらず普段の呼び方でラディット国王に詰め寄る。
「わ、わかった、わかった。冗談、冗談⋯⋯」
「もう! 陛下、今は冗談はやめてくださいませ!」
「(⋯⋯シュン)」
レイアの一喝により、ラディット国王の身がギュギュっと小さく縮まった。