146「偽装記憶消去(メモリー・イレイズ)」
「えーと、まずは『洗脳魔法無効化魔法』から⋯⋯」
と言って、カイトが黒板に書き出した。
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闇属性魔法『偽装記憶消去』
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「「「「⋯⋯『偽装記憶消去』っ!?」」」」
「はい。これが洗脳魔法を無効化するための魔法として開発したものです。対象者は『洗脳魔法をかけられた人』で、この魔法をかけると『記憶領域にある偽装された記憶』があればそれを消去します。偽装された記憶が無ければ、特に何も影響はありません」
「なるほど。これが最初に作成したカイト君の洗脳魔法⋯⋯『偽装記憶』を検証・分析した資料をもとに開発した『洗脳魔法無効化魔法』なんだね」
「その通りです、ソフィア室長。皆さんが検証・分析したおかげで、無効化魔法は思っていた以上にすぐに作成できました。ありがとうございます」
「いやいやいやいや⋯⋯何を言ってるんだい、カイト君? 初めて魔法を作成して十日程度で完成すること自体が⋯⋯⋯⋯まず、あり得ないからね?」
「え? そうなんですか? 結構、コツさえ掴めばすぐにできましたよ?」
「え?⋯⋯⋯⋯いや、ま、いいや。カイト君には常識が通用しないのはもう周知の事実だからね。じゃあ、一応確認させていただくよ」
ということで、俺はソフィア室長に『偽装記憶』をまずかけて、それからこの『偽装記憶消去』を展開した。ちなみに、前回の件があるので今回の『偽装記憶』は『ソフィア室長の好きな食べ物の記憶』を利用して確認した。⋯⋯もう、『狂戦士ソフィア』はたくさんです。
「うむ。成功⋯⋯と言っていいんじゃないかな」
「ほ、本当ですか! ありがとうございます!」
俺が作った『洗脳魔法無効化魔法』となるオリジナル魔法『偽装記憶消去』がソフィア室長に認められた。
「おめでとう、カイト!」
「ありがとう、マイルズ!」
「す、すごいです! カイト君!」
「うん、ありがとう、シーファ!」
「すごい! すごい! カイト、やっぱすごいね!」
「い、いや、そんな⋯⋯ありがとう、セイラ!」
俺は、当初の目的であった『洗脳魔法無効化魔法』の完成を三人から祝福された。⋯⋯嬉しい。
「そうなると、この時点でカイトはすでに2つのオリジナル魔法を開発したってことになるわね!」
「あ⋯⋯たしかに」
「いや、どうして、こんなすごいこと成し遂げた本人がそう冷静なのよっ?!」
セイラが呆れ気味にツッコむ。
「あ、あの、カイト君⋯⋯!」
「うおっ! な、何でしょう⋯⋯シーファ」
いつもは消極的な態度のシーファが、少し身を乗り出して質問してきた。
「ち、ちち、ちなみに、このカイト君のオリジナル魔法『偽装記憶』と『偽装記憶消去》』は、どのランクの魔法になりますか?」
「あ、そうだね。そのこと聞くの忘れてたよ⋯⋯どうなんだい、カイト君?」
「わかった! 中級だろ、カイト!」
「いや?⋯⋯⋯⋯上級」
「「「「は?」」」」
「じょ、じょじょじょ、上級魔法ぉぉーーーっ!!!!」
セイラが吃りながら叫ぶ。
「うん。しかも、魔力量は通常の上級魔法よりもかなり食われるからね? 正直、超級魔法レベルで魔力量持ってかれるから」
「んんっ!? ちょ、ちょっと待て!! お、おい、カイト、お前のその言い方ってまるで⋯⋯⋯⋯|超級魔法を使ったことがある《・・・・・・・・・・・・・》ような口ぶりだけど⋯⋯?」
「ん? ああ、使えるぞ、超級魔法? まあ、一種類だけしか使えないけどな(照れ)」
「「「「(照れ)⋯⋯じゃねーよ(じゃないよ)っ!!!!」」」」
「カ、カイト君、超級魔法を使えるって話、ボク聞いてなかったけどっ!?」
「え? そうなんですか? てっきり学園長が話していたと思っていたんですけど?」
あれ? それじゃあ、今『超級魔法』の話をしたのはまずかった?
でも、まーしょうがない。言ってしまったものはしょうがない。
「そ、そうか。カイト君は超級魔法も⋯⋯。属性は『全属性持ち』で『超級魔法』も使える、しかも入学したばかりの一回生⋯⋯。もはや、何でもアリだね⋯⋯」
「い、いや〜⋯⋯たはは」
「カ、カイトって、もしかして、もうすでに⋯⋯⋯⋯『現・クラリオン王国最強』なんじゃないの?」
「そ、そんな、大袈裟なっ!? やめてよ、セイラ!」
「いえ、カイト君⋯⋯私もそう思いますっ!(フンス!)」
「シーファ⋯⋯?」
シーファが鼻息荒く訴えてきた。
「まず、何よりも驚いたのはカイト君がすぐに魔法を作成できた点です! 初めての魔法作成なのに十日程度で完成できたということ、それは⋯⋯⋯⋯『魔力コントロールが異常に長けている』ということ意味します! しかも、カイト君は『全属性持ち』で『超級魔法』も使える⋯⋯。そんな『魔力コントロール』に長けた人が、魔力量が豊富で、且つ全属性の魔法が使え、おまけに超級魔法まで使えるとしたら、それはもはや『国内最強』⋯⋯いえ『世界最強クラス』と言っても過言ではないかと思いますぅぅ〜〜〜っ!!!!」
シーファが顔を真っ赤にして、一気に捲し立てた。しかしその結果、
「はあ、はあ、はあ⋯⋯ちょ、ちょっと⋯⋯酸欠⋯⋯ですぅぅ〜〜⋯⋯」
と言って、椅子にグッタリと座った。
「ど、どうしたんだ、シーファ? やけに俺のことを褒め叩いてくれてたけど、俺程度が『国内最強』とか『世界最強クラス』とか、それはさすがに褒め過ぎ⋯⋯」
「は? 何言ってんだ、カイト? シーファの言う通りじゃねーか?」
「⋯⋯え? マイルズ?」
「そうよ。私もシーファの言う通りだと思うわよ?」
「セ、セイラまでっ!?」
「カイト君⋯⋯」
「っ!? ソ、ソフィア室長⋯⋯!」
「君⋯⋯もうちょっと、自分の異常さを自覚したほうがいいと思うよ?」
「は、はあ⋯⋯」
「「「「そういうとこだぞっ!」」」」
みんなから、なぜか一斉に説教を喰らった。
⋯⋯解せぬ。




