143「洗脳魔法作成」
「⋯⋯なるほど。ありがとうございます、カイト君。君の凄さを改めて実感しました、させられました」
と、女子三人が俺の力について根掘り葉掘り聞かれた後、代表してソフィア室長からそのような光栄なるお言葉をいただきました。
それにしても、さっきみんなが固まったのは、俺がセイラに強い言い方をしたことが原因かと思っていたが、そうじゃなくて、俺が『全属性持ち』だと言ったことに驚いていたんですね。⋯⋯教えてくれてありがとうございます。
そんなわけで、改めて俺は『洗脳魔法の作成』を始めました。
ちなみに、マイルズも何とか気絶から生還いたしました。
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「うーん、洗脳魔法だよな⋯⋯。だから、脳の『大脳皮質の部分』と『海馬の部分』をイメージして、そこに魔法を干渉させる⋯⋯。んで『今ある記憶』の上に、魔法で『仮初めの記憶』を重ねる⋯⋯と⋯⋯」
俺は一人ブツブツと脳内のイメージからまず始めた。ちなみに横では、
「カ、カイト君には、脳内のイメージが⋯⋯すでにあるとでもいうのかいっ!? す、すごい⋯⋯すごすぎるよ!」
などと、ソフィア室長が驚きの悲鳴を上げていたが、とりあえず、それは無視して俺はさらに集中を上げていく。そして⋯⋯、
「こんなんできるかーっ!!『海馬』のイメージとかわかるかーいっ!!!!」
盛大に匙を投げました(ブーーーン!)。
ということで、洗脳魔法の作成は失敗に終わった。
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——一週間後
俺はほぼ毎日、『第一級特別研究室』に足繁く通っていた。理由はもちろん『洗脳魔法開発』のためだ。⋯⋯しかし、結果は芳しくない。というか、うまくいかない
「うーん⋯⋯やっぱ、脳の中にある『大脳皮質』とか『海馬』のリアルな場所なんてわかんねーよなー」
そう、魔法作成において「『イメージ』は一番重要だ」とソフィア室長が言っていたのだが、まさしくその通りだったと今実感している。しかし、
「いや、待てよ?『イメージが重要』というのなら、それって⋯⋯⋯⋯別に脳の中身を詳細にイメージする必要なくね?」
という発想に行き着いた俺は、早速、その可能性を確かめるために『第一級特別研究室』へと向かった。
「おはようーカイト君」
「おはー!」
「おはようございます!」
「おっはよー!」
『第一級特別研究室』に着くと、いつものようにみんなが挨拶してくる。
「おはようございます。ソフィア室長、ちょっといいですか?」
「ん? どうしたんだい?」
「洗脳魔法作成のヒントが浮かびました!」
「おお! 本当ですか!」
「はい。なので、早速ちょっとやってみますね」
そう言って、俺は集中するため、みんなと少し離れたところに移動して魔法作成を始めた。
「どうしたんですか、カイト?」
「うむ。どうやら洗脳魔法作成のヒントが浮かんだらしい」
「で、でも、カイト君が来て、それから魔法作成に取り組んでいましたが、一週間経った今でも進展がないみたいでしたよね⋯⋯。やっぱり難しいんでしょうか?」
「そうそう。シーファの言う通り、洗脳魔法作成がうまくいっていないみたいだよね」
「まー、そうだね。でも⋯⋯」
「「「でも?」」」
「さっき、カイト君の目を見た時『手応え』を掴んでいるような雰囲気があったから、もしかすると⋯⋯」
「「「へー⋯⋯」」」
そう言うと、四人はカイトへと視線を向けた。
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「⋯⋯さてと。まずは『脳内のイメージ』⋯⋯これをどうするかだな」
まず、この一週間は『脳の中』をできるだけ詳細にイメージすればうまくいくんじゃないかと思っていた。⋯⋯のだが、しかし、それは間違いだった。理由はもちろん、俺が『脳の専門家』じゃないからだ。
「専門家でもない⋯⋯しかも、本の内容をうろ覚え程度の俺が脳内を詳細にイメージなんてできるわけないじゃん!」
ただ最初は、魔法作成における『イメージ』なんて、そのくらいの理解しかなかったので仕方なかったと思う。でも、そんなとき、ソフィア室長がこんなことを教えてくれた。
「カイト君。魔法作成における『イメージ』とは必ずしも『具体的』である必要はないんだよ? いいかい、イメージとは『詳細な理解を思い浮かぶこと』ではないからね? 大事なのは『魔法効果が得られる条件のイメージ』ができているかどうかだから」
最初、すぐには理解できなかったがよくよく考えてみてわかったことがあった。
「つまり、イメージは漠然的でいいということじゃないか?!」
そうして改めて考えたとき、俺はこうイメージをした。
「脳の中に二つの記憶領域が存在⋯⋯これを『色のついた箱』で用意し、その箱に『大脳皮質』と『海馬』と名付ける。まあ、名前は何でもいいと思うが、そのままのほうが俺はしっくりくるからこれでいいな」
そう、つまり、俺の中で『勝手に記憶領域を箱としてイメージすればいい』のだと気づいたのだ。だって、実際に脳の中にこの『二つの記憶領域が存在する』のであれば、ちゃんと効果もつながるはずだからだ。
「となれば、今度は『記憶』はそうだな⋯⋯『丸い粘土みたいなもの』にして、これを色分けして、それから⋯⋯」
俺は、ゆっくり一つずつ丁寧に、頭の中で『自分なりの脳内』をイメージ化する。
結果、『大脳皮質』と『海馬』それぞれの名称と色分けされた『箱(『大脳皮質(箱の色:茶色)』『海馬(箱の色:桃色)』)』を用意。
そして、その中に『新しい記憶』『古い記憶』と『名称と色分けした粘土』を用意。古い記憶は『薄茶色の粘土』、新しい記憶は『薄桃色の粘土』として、『大脳皮質』『海馬』の箱とそれぞれに仕分けして入れた。
これで、大まかな『脳の中の記憶領域のイメージ』の完成である。
「さて⋯⋯問題はここからだな」
そう、次が『洗脳魔法作成』の一番の『肝』となる部分⋯⋯⋯⋯『魔法』で『仮初めの記憶』を作成し、それを『大脳皮質』『海馬』の『箱』の中にある『記憶』の上に重ねる工程だ。
「それじゃあ、いよいよ⋯⋯⋯⋯『仮初めの記憶』を作っていくか」




