128「学園長の本気と覚悟」
——クラリオン王国騎士学園/特別会議室
「ふぉふぉふぉ。今日、ここに集まってもらったのは他でもない。昨日も少し話したが『クラリオン学園騎士団』についての話じゃが⋯⋯」
皆が席につき、落ち着いたタイミングで学園長が話を始めた。
いつものように、飄々とした雰囲気で話を進めると思いきや、
「君たちに課せられた期待は⋯⋯⋯⋯重い」
「「「「「っ!!!!!!!!!」」」」」
皆、学園長のいつもの『好々爺然としたキャラ』とは異なり、険しい表情で、むしろ威圧さえ含んでいるその言葉に驚きと同時に緊張感が走った。
「⋯⋯結論から言おう。今回の『クラリオン学園騎士団』創設は、質が低下し、堕落した『クラリオン王国騎士団』の解体または新設を目的としている」
「「「「「⋯⋯えっ!!!!!!!!!」」」」」
俺たちが学園長の発言に驚くのも無理はない。
現在のクラリオン王国騎士団で現役の騎士団長をやっているアルフレッド・ヴェントレーが横にいるわけだから。⋯⋯当然、俺たちは視線をアルフレッドに向ける。
そのアルフレッドは、無表情ながらも特に動揺している様子はなく、むしろ『すでに覚悟は決まっている』という風に感じられた。
そのアルフレッドの表情からも、学園長が冒頭つぶやいた『重さ』⋯⋯⋯⋯『事の重大さ』が伝わったのは言うまでもない。
学園長やアルフレッドの『本気と覚悟』が窺い知れた瞬間でもあった。
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「現在、クラリオン王国騎士団は一部の上級貴族や下級貴族らとつながり、貴族に飼われているような状況だ」
そう言って、学園長はズバズバと現在のクラリオン王国騎士団の腐敗の現状を説明した。
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【クラリオン王国騎士団/腐敗の現状】
・貴族(上級・下級)から賄賂(金銭や接待その他)を受け取り、その見返りとして騎士団を『子飼いの傭兵』として利用している
・その関係は長く、十五年前の『五大国大戦』終結後からずっと続いている
・現状は『王国の剣』ではなく『貴族の剣』と揶揄されるほど腐敗が進んでいる
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「そ、そんな、信じられない⋯⋯」
学園長の話を聞いて、生徒の中で波紋が広がっていた。
無理もない。ここにいる生徒たちはほとんどが『貴族』だ。しかも『上級貴族の生徒』が多い。
ただ、ガス⋯⋯⋯⋯ジャガー財閥の子供であるガスや、そのガスとつるんでいるディーノやカートの表情は『初めて知った』というより『周知の事実』という感じだ。イグナス、ザック、もちろんレイアも同様だ。
イグナスとガスたちが『現・騎士団の腐敗』をしていたのは記憶に新しい。
しかし、それとは別に特に驚きの表情を浮かべたのは『ドレイク・ガリウス』で、学園長の話の後に呟いた言葉はドレイクによるものだ。
リリアナに至っては、多少は驚いていたが、この話自体を『知らなかった』というよりも『聞いていた以上に酷いのか』という感じだった。
すると、ある二人が挙手をして立ち上がる。
「ちょっといいかな?」
「あ! 私もにゃ!」
「「「「「リュウメイ! サラ!」」」」」
挙手をした二人⋯⋯⋯それは『ヤマト皇国王太子リュウメイ・ヤマト』と『リーガライド獣国サラ・ウィンバード』。
「僕もその話は聞いています。すべて⋯⋯とは言いませんが、我々、ヤマト皇国がクラリオン王国に接触したのは、その協力も含まれています」
「私のほうも同じにゃ。リーガライド獣国も、すべて⋯⋯とは言わないが、その話について協力関係にあるにゃ」
「「「「「ええええええええええええっ!!!!!!!!!」」」」」
これには、さすがに驚かされた。
まさか、ヤマト皇国もリーガライド獣国もこの『クラリオン王国騎士団解体・新設』の話に絡んでいるなんて。でも、大丈夫なのだろうか⋯⋯⋯⋯国防的に。
そんな、『国の懐刀』ともいえる防衛機関『クラリオン王国騎士団』の解体・新設に他国の力を直接的に利用・介入させるなんて普通あり得ない。国としてはデメリットしかないはずなのだから⋯⋯。
もしくは『それ以上のメリット』または『|デメリットにならない理由』があるとでもいうのか?
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「これが最終通告だ。⋯⋯⋯⋯君たちはそれでも『クラリオン学園騎士団』を拝命してくれるかね? もし、できない者はそのままあの扉から立ち去りなさい」
学園長ハンニバル・シーザーの口から最終通告が告げられる。しかし、この部屋から退出する者は|ただの一人もいなかった《・・・・・・・・・・・》。
「⋯⋯よろしい。では、これより君たちを正式に『クラリオン学園騎士団』に任命する!」
「「「「「はっ!!!!!!!!」」」」」
皆が一斉に立ち上がると、右拳を胸に掲げ、学園長に向かって『肯定の所作』を示した。
え? 俺?
もちろん、そんな『所作』知らなかったので出遅れましたけど、何か?




