122「決勝トーナメント決勝(5)・・・決着」
「|カイト式魔力コントロール《これ》には⋯⋯⋯⋯その先がある」
「その⋯⋯先⋯⋯だと!?」
「それが⋯⋯⋯⋯これだ」
ドン⋯⋯ッ!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ⋯⋯っ!!!!!!!!!!
「「「「「きゃあぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!」」」」」
「「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!」」」」」
さっきまででさえも、かなりの魔力放出で会場全体がビリビリとその威圧に揺れていたにも関わらず、カイトからはそれを遥かに上回る魔力放出が発生。
会場全体に先ほどの威圧を軽々と超えた⋯⋯まさに暴圧とも言える桁違いなプレッシャーが噴出すると、そのプレッシャーに会場の至るところで悲鳴が上がった。
『カイト式魔力コントロール』のその先を発動したカイト。その体からは青白い光の湯気のようなものがユラユラと立ち昇っていた。
「な、何⋯⋯あの⋯⋯揺れる青白い光は! ていうか、何なのよ! この桁違いな魔力放出はぁぁーーーっ!!!!」
レコがカイトの変化に苦しい表情をしながら叫ぶ。
「ぐぅぅ〜〜⋯⋯っ! こ、このプレッシャー⋯⋯尋常じゃないぞ!? 直接向けられている訳じゃないのに、ちょっとでも気を抜いたら⋯⋯意識が飛ばされ⋯⋯そうだ⋯⋯っ!?」
そして、横にいたレイアもまた険しい表情で途切れ、途切れに言葉を発している。
実際、多くの生徒や観客席にいる一般客もカイトの『桁違いな魔力放出』に気圧され、失神するものが少なからず出ていた。
「な、なんだってんだよ⋯⋯っ!? これほどの魔力⋯⋯在り得ねーよっ!?」
「ぐ、ぐぅぅ⋯⋯!? カ、カイトめ! あの『カイト式魔力コントロール』に、まだ⋯⋯その先があっただなんて⋯⋯! し、信じ⋯⋯られ⋯⋯ね〜⋯⋯」
ウキョウもイグナスもカイトの膨大な魔力放出に苦い表情で耐えながら気持ちを吐露していた。
「ま、まさか、本当に『その先』があった⋯⋯だなんて⋯⋯」
リュウメイがカイトの圧倒的な魔力放出に声を震わせながら険しい表情でカイトを見つめる。しかし、そんな固い表情で身構えるリュウメイに対し、カイトは、
「さ、どーんと来い、少年! 全力でかかってきなさい」
ニカッと満面の笑顔で声を掛ける。
そんなカイトのまるで空気を読まない笑顔と言葉に、さっきまでカイトの暴圧に気圧され、険しい表情を浮かべていたリュウメイがハッとした表情を浮かべる。そして、
「少年⋯⋯て、カイトは僕と同い年でしょっ!!!!」
ドン!
いつの間にか元の可愛らしい口調に戻ったリュウメイは、キラキラ輝く瞳と笑顔で、純粋に、ただ真っ直ぐに、カイトに全力で向かった。
「いっくよー!! 龍拳・二位階『子龍四爪撃』っ!!!!」
リュウメイが一気に『龍の息吹』をMAXの循環スピードまで引き上げた100%の魔力増幅状態から、龍拳・二位階『子龍四爪撃』を炸裂。顔や鳩尾といった正中線の急所へ拳・肘・蹴りによる四連撃を浴びせてきた。しかし、
パシ! パシ! パシ! パシ!
「なっ!? 初撃⋯⋯潰⋯⋯し⋯⋯っ!!!!」
MAXの『龍の息吹』で最大まで魔力増幅された龍拳・二位階『子龍四爪撃』だったが、それをカイトはまさかの『初撃潰し』を展開。⋯⋯⋯⋯それは、リュウメイとカイトに『圧倒的な実力差がある』ということを証明した瞬間でもあった。
「そ、そんな⋯⋯。全力の『龍の息吹』で放った⋯⋯若の『子龍四爪撃』が初撃潰し⋯⋯されるだ⋯⋯なん⋯⋯て⋯⋯」
ウキョウは舞台で初撃潰しをされたリュウメイを見て、ショックのあまりガクッと膝を床につけた。
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「はあ、はあ、はあ、はあ⋯⋯」
舞台では、『子龍四爪撃』を初撃潰しされたリュウメイが、肩で息を切って消耗している姿があった。
「終わりか、リュウメイ?」
カイトが声を掛ける。
「そう⋯⋯だね⋯⋯はあ、はあ。そ、そろそろ⋯⋯限界近い⋯⋯かな。はあはあ⋯⋯でも⋯⋯」
「!」
「最後に僕の大技を⋯⋯⋯⋯見て欲しいっ!」
リュウメイは、おそらくMAXの『龍の息吹』の反動が来ているのだろう⋯⋯。苦悶の表情を浮かべてもおかしくない状態であったが、しかし、それでもニコッとまるでこの状況を楽しんでいるかのような笑顔を返す。
「いいだろう! さ、ドーンと来い、少年っ!」
カイトは目一杯腕を広げた。
まるで「全部受けてやる」とでも言っているかのように。
「クスクス⋯⋯ありがとう、カイト! コォォォォォーーーー⋯⋯」
リュウメイは、一度消耗し落ちた魔力を無理矢理『龍の息吹』でMAXまで引き上げる。そして、
「こ⋯⋯れが⋯⋯最⋯⋯後だ⋯⋯よ、カイト。⋯⋯⋯⋯必殺っ! 龍拳・四位階『覇軍剛掌破』ぁぁぁーーー!!!!」
リュウメイが覚悟を決めた最後の大技⋯⋯龍拳・四位階『覇軍剛掌破』。
一撃、一撃が重い掌底による必殺の連撃技を、リュウメイはカイトへ思いっきり叩き込む!
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド⋯⋯っ!!!!!!!!!
すると、カイトは⋯⋯⋯⋯なんと、リュウメイの必殺の連撃技を|ノーガードですべて受けた《・・・・・・・・・・・・》!
——そして
「ふー⋯⋯いや〜、なかなか強烈な技だったよ、リュウメイ。一撃、一撃の掌底の威力⋯⋯やばすぎっしょ!」
「い、いやいや⋯⋯やばすぎ⋯⋯って、それ⋯⋯こっちの⋯⋯セリ⋯⋯フ⋯⋯だか⋯⋯ら⋯⋯」
リュウメイの必殺連撃技『覇軍剛掌破』を全て受けたカイトだったが、特にダメージもないようなケロッとした顔でリュウメイにその技の『凄さ』について感想を述べると、そんなカイトに魔力枯渇で気絶寸前のリュウメイは呆れながら、カイトの言葉に苦情を申し立てる。
「そう言えば、リュウメイ。最初にお前が言っていた『お願い』だけどちゃんと聞いてやる。だから、今は⋯⋯⋯⋯ゆっくり休みな」
「あ、ありがとう⋯⋯。そ、それ⋯⋯じゃ⋯⋯あ⋯⋯お言⋯⋯葉に⋯⋯甘え⋯⋯て⋯⋯横になる⋯⋯かな⋯⋯」
「おう!」
リュウメイはカイトのしっかりした返事に安心したのか、その瞬間——ガクンと膝から崩れ落ち、そのまま気を失って倒れた。
「しょ、勝者っ! カイト・シュタイナーっ!!!!!」
「「「「「ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーっ!!!!!!!!」」」」」
こうして、一回生クラス編成トーナメントはカイト・シュタイナーの圧倒的勝利で幕を閉じた。




