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星の見守り人  作者: 井伊 澄洲
第一章 星間探査編
15/34

015 第一級戦闘配備!

コランダム777の船内にナタリー副長の声が響き渡る。


「これより本船は戦闘時における艦隊行動を開始する!

左右より煙幕弾を発射、電磁波妨害弾発射、同時に妨害電波を最大強度で発振!

超光速妨害波、亜空間妨害波も同時に最大出力で発振!

煙幕展開後、全偽装艦を射出して急速展張、さらに実験中の重戦闘機を射出せよ!

第1警護艦、第2警護艦は離艦、

本船の両翼に従い展開!

戦闘偵察艇、及び多目的救助艇も全艇発進!

戦闘機全機出撃、第1攻撃機から第10攻撃機までは本船の正面へ、

第11攻撃機から第15攻撃機は右翼へ、

第16攻撃機から第20攻撃機は左翼へ、

本船を旗艦、中心として敵艦隊に対して半包囲陣を展開せよ!」


副長の命令の下、艦内に警報が響き渡り、あっという間に艦隊が展開していく。

船の中腹から煙幕弾が発射され、周囲に煙幕が張られると同時に舷側からいくつかの物体がバシュ!、バシュ!、バシュ!と飛び出す。

それらは広がる煙幕の中であっという間に大きくなり、全長30mほどの大きさの戦闘艦の形状になる。

それはいわゆるダミー艦であった。

しかし単なるダミー艦とは異なり、エンジンと主砲は20m級の戦闘艇と同様の物を搭載していて実際に戦闘も可能なダミー艦だった。

さらにガコン!とコランダム777の船尾左右の一部分が開き、左右から二隻の全長50mの警護艦が分離していく。

この警護艦は第3世代型である探査船から搭載されるようになった小型戦闘艦で、全長50m、全幅10mの細長い紡錘形で小型ながら最新の武装を誇り、その戦闘力は一世代前の駆逐艦に匹敵する。

非有人戦闘艦で、無人でも戦闘可能だが、普通は亜人が三人で操艦して戦闘する。

現在、眼前にいる2世代前の駆逐艦が相手ならば1隻で充分に2・3隻は圧倒できる性能だ。

この2隻は過去の事例から今回のような深宇宙での海賊との艦隊戦を想定して内蔵されたのであった。

そしてコランダム777の中腹部分からは、左右1隻ずつ計2隻の戦闘偵察艇が出てくる。

こちらも「戦闘」偵察艇と名乗るだけあって、このような海賊との戦闘にも充分堪えうるように設計されている。

その他にも船体の様々な部分から色々な艦艇が射出されて、次々と発艦し、それぞれ配置につく。

さらに船体の各所から妨害電波、電波妨害物質の散布、視覚撹乱など、計測妨害をするためのあらゆる手段が実行されていた。


一方、海賊艦隊の方ではわずかに混乱をきたしていた。


「敵に動きあり!火災?

いや煙幕を炊いています!」


その報告に海賊頭の副官はあきれたように話す。


「煙幕ぅ?なんだそりゃ?

宇宙でそんな事をしても何の意味もなかろうに?」

「攻撃しますか?」


その部下の意見にギムナールは慎重に答える。


「いや、そうして慌てて攻撃して、ガンダルもヘマをやらかして捕まったのかも知れん・・・

何しろあいつは短気で喧嘩っ早いからな・・・

下手に攻撃をしたら、われ等もガンダルの二の舞になるやも知れん。

様子を見よう、それに敵の狙いはそうした混乱を狙ってのこちらの同士討ちかも知れん・・・どうせ煙幕なんぞ、宇宙空間では5分も持ちはせん。

その程度待ったとて別に変わりはあるまい。

しかしワープだけは気をつけろよ。

敵の狙いは煙幕にまぎれてのワープ逃走かもしれんからな」


自分の部下があっさり捕獲された事もあってギムナール・イヴァンも用心深い。


「がってんでさ」


しかし、30秒もすると計測係から驚きの声が上がる。


「これは・・・!?」

「どうした?」

「敵の数が増えていきます!

20mから50m級の船がおそらく10隻以上!

さらに小型艇多数、妨害波のために計測は不能です!

それ以上は妨害波による障害のため詳細は不明!」


レーダーを見張っていた海賊船員が報告をする。


「何だと!そんなバカな!」


海賊の副官が叫ぶとギムナールも叱咤する。


「小型戦闘機はともかく、あの大きさでそんなにデカイ戦闘艦がいくつも搭載してあるわけないだろう!

しっかり見ろ!」


相手は確かに200mクラスの探査船だ。

今まで出会った探査船よりも大型だし、最新鋭というからには当然多少の武装はしてあるだろう。

何より辺境の治安を維持すると豪語するからには、戦闘機の数機くらいは積んでいるだろう。

しかしそんな大きな戦闘機を十隻以上も搭載している訳はないし、第一そんな物を積んでいたら肝心の探査機器を搭載する場所がなくなってしまう。

ありえない事だった。

しかしそう考えるギムナールにレーダー手が再度報告をする。


「そんな事いってもレーダーに出てるんですぜ!」

「敵の妨害波で数がおかしくなっているんだろう!

乱反射で数がおかしくなっているんじゃないのか?

それとも単なるダミーか、立体映像じゃないのか?」

「いや、全部にそれぞれエネルギー反応がありますぜ。本物だ!」


やがて煙幕が晴れてくると、そこには探査船を中心とした数十隻の艦隊が現れる。

忽然と現れたその陣容に驚きを禁じえない海賊たち。

何しろさっきまで1隻しかいなかった宇宙空間に50m級の戦闘艦が2隻、30m級が10隻、20m級が4隻、そして小型攻撃機が実に40機以上出てきたのだ。


「な・な・な・なんだありゃ?」

「大将!あんなの聞いてませんぜ」

「全部で17隻、10m以下の小型戦闘機も40機以上いますぜ!」


「うろたえるな!あんなモンははったりだ!」 


あわてふためいる海賊たちをギムナールが叱咤する。

そこへ私の通信が入ってくる。


「宇宙海賊の大将、聞こえるか?

こちらの戦力はご覧の通りだ」


余裕を見せる私にギムナール・イヴァンも驚きの表情は隠さずに素直に問う。


「驚きましたね・・・一体どんなトリックを使ったんです?

船長代理殿?」

「ははっ、それは企業秘密さ、

で?どうするね?」

「そうですな、

少々驚いたのは事実ですが、部下たちの手前、降伏するわけにもいきますまい。

それにそのトリックの種を見てみたい気もしますのでね」

「では、戦闘開始、ということで良いかな?」

「そうですな」


私は通信を切ると直ちに命令を下す。


「では戦闘開始だ、諸君。

電波妨害解除、警護艦と中型戦闘機の指揮は副長が執ってくれ、

中型・小型戦闘機の指揮は戦闘長が、本船とダミー船と実験艇の指揮は私が執る」

「了解しました」


すでに述べられているが、この汎用宇宙探査船には工作室があり、そこでは乗員している者達が思い思いに暇つぶしも兼ねて各種開発研究等に使用している者もいた。

私もその御多分に漏れず、それなりの研究をいくつかしていた。

戦闘機の開発もその一つであり、私が研究していた物は武装ダミー船と小型重武装艇であった。

ダミー武装船はその通りの物でダミー船でありながら、武装を施されていた。

通常ダミー船と言えば、ゴム状の物で出来た拡張展開式の、ただそこに浮かんでいる物であるが、中には多少の小型エンジンを積んでいて敵の目を晦ます程度に動かす物もあった。私が考案した物はそれをさらに改良と言うか、場合によっては改悪とも言える改造を施した物であって、そのダミー船にさらに武装を加え、砲撃を可能としていた。

戦闘に際して、動ける上に砲撃も出来るとあれば、本来ならば画期的とも言えるが、その分、格納状態での大きさが大きくなりダミー船本来の目的である、多数射出して敵の目を晦ますという目的からすれば、外れた物ではあった。

一応試作品がいくつかは完成していたが、私としては場所を取りすぎるので、もっと小型化をと考えており、まだまだ改良の余地がある物だった。

一方、重武装艇というのは連邦の標準小型艇である10m級の宇宙船を、いかに重武装が出来るかに特化した無人小型艇の事だった。

こちらもまだ実験中で、主砲こそ30m級の戦闘コルベットと同等の物を搭載しているものの、エンジンとの兼ね合いが不安定で、まだまだ実戦に耐えるかどうか、疑問の物であった。


「ダミー艦は本船か、警護艦の陰に隠れて敵を任意に攻撃、重武装艇はエネルギーを充填しながら、敵の駆逐艦に接近せよ」


「警護艦と中型・小型艇はまずは敵の旗艦と駆逐艦以外を全て行動不能にしてくれ」

「了解しました」


たちまち各艦艇が攻撃を初め、敵の戦力は次々と葬られていく。

そして数分後には、小型戦闘機の活躍により、敵は大型艦が3隻のみとなった。


「よし、あれであと3隻だな」


ナタリー副長が報告をする。


「敵旗艦は大型艦だけあって、恐ろしくスクリーンが強固です。

 外層スクリーンは破れましたが、内側が中々硬いです!」

「では、重武装艇を敵のスクリーンの手前で自爆させろ。

それでスクリーンが弱った所を主砲と副砲で集中攻撃だ」

「了解しました」


私の指示に従い、小型艇が敵の旗艦に近づく。

不審な小型艇の接近に、海賊の旗艦の中では海賊たちが騒ぎ立てる。


「何だ?あの小型艇は何しに来たんだ?」

「慌てるな!なるほど、あの小型艇はあの大きさにしては強力だが、うちのスクリーンは破れん!

何しろスラスキーの特製だからな!

例え至近距離で撃たれたとしても破れはせん!安心しろ!」


そう叱咤するギムナールの旗艦に近寄ると、小型艇二隻は大爆発を起こす。


「なっ!爆発しやがった!」

「自爆攻撃か!」

「スクリーンはどうだ?」

「大丈夫!持ってますぜ!」

「そうか」


ホッとするギムナールだったが、その後に砲撃が加わる。


「敵の砲撃です!

「主砲と副砲による集中攻撃!」

「なに?」


さしもの特製スクリーンも重武装艇の2隻の爆発とコランダム777の集中攻撃により、崩壊する。


「内層スクリーン崩壊!」

「何!」


コランダム777の艦橋でも私が叫んでいた。


「今だ!機関部にニードル光線発射!」


コランダム777からニードル光線が撃たれ、敵旗艦の後方部に穴を穿つ!


「後部被弾!」

「機関がやられました!」

「ぬぬぬ・・・」


もはや運命が尽きたとみたギムナールがマイクを握る。


「スラスキー、聞いているか?こちらギムナールだ」

「どうした?ギムナール?」

「やられた!敵は最新鋭の銀河連邦探査船だ。

今までの探査船とは比較にならん戦闘力だ」

「なに?わしのスクリーンが破られたのか?」

「ああ、相手はたったの1隻なのに、こちらの全戦力を上回るほどだ。

まるで巡洋艦を相手にしているようだ。

しかもただ最新鋭ってだけじゃないぞ、あの指揮官は結構食わせもんだ。

気をつけろ!」

「ほほう?お前さんがやられたとはな、そりゃあなどれんわい」

「ああ、せいぜい気をつけてくれ、後は頼んだ」

「わかった」


何者かとの交信を終えたギムナールが私に通信を送り、敗北の意を伝える。


「降参だ」

「では攻撃をやめていただきましょうか?」

「ああ、全艦攻撃停止だ」


前回のガンダルの時と同様に海賊たちを移乗する。

しかし、今回は人数が多いだけに大変だ。


「全部で旗艦に20人、他の船にそれぞれ10人から15人、その人間を合わせると100人を少し超える程度だと思います」

「独立拘留区画の限度は何人だったかな?」

「48人が2区画ですから96人、それに中型収容区画を利用すれば130人までは問題ありません。

人数的には何とかなるでしょう」

「そうだな、副長、副長補佐のうち誰かを監督官に・・・」

「すでに監督官の任務に就いているエダジマ3等士官ではいかがですか?」

「そうだなエダジマ君、君を改めて管理官に任命する。

取調べと監視をよろしく」

「了解しました」



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