【16章】告白のテスト
16章 告白のテスト
「ほ、本当に告白するんですか?私···」
メラニアの部屋で、か細い声で彼女は言った。
今日のメラニアはパジャマ姿ではなく、白いワイシャツに茶色い長いスカート姿という清楚な恰好であった。
コナツ達は「告白することが完治の条件」であることをメラニアに言った。彼女はとても驚いていた。
これからクロノスが彼女の想い人を連れてくると告げると、顔を赤らめながらも、長い髪を赤いリボンでまとめ上げ、服を着替えていた。彼女は落ち着かない様子でそわそわとしつつ、不安気にコナツのことを見つめた。
「大丈夫!告白すると、氷の花が溶けるのよ!」
「そんなお伽話みたいな話···」
「大丈夫!」
コナツは力強く言った。
彼女にはテストに協力してもらわないと困る。これは、確実で安全な、けれど完治の条件を試すテストなのだ。
「大丈夫、です」
セゾンも大きく頷いていた。セゾンが城の使用人たちに命じて、身辺調査をした上で、メラニアと想い人が両想いであると知っている。
「連れてきたぞ」
メラニアの部屋の扉を叩き、クロノスと青年が入ってきた。メラニアはハッとし、顔をより紅潮させた。
「ヤニス!」
「メラニア、気分はどうだい?ずっと伏せっていると聞いたけど···」
ヤニスという青年は、朴訥そうだが真面目そうな青年だった。茶髪はとても短く、メラニアのことを心から心配する顔をしている。
「ええ、気分は大丈夫···」
メラニアは、顔を俯かせた。彼と会えたことを喜び、口元がにやついている。
「あの···そのね···今日来てもらったのは、言おうと思ったことがあるからなの」
コナツは横でメラニアを見ていて、とても不思議な気持ちになった。恋する乙女というのは、愛らしい。
これから彼女がヤニスに告白するということは知っていても、ヤニスのことが好きだという気持ちが自然と伝わってくるようだった。
「す、好きなの···ずっと、ずっと、好きだったの!」
今まで秘めていた想いを、メラニアは告げた。
声は震えているが、想いを伝えるという恐怖に立ち向かっている者の証だった。彼女の目はヤニスに一心に向けられ、少し目も潤んでいた。
「メラニア、僕も君のことがずっと好きだった」
「本当···!?」
メラニアの瞳は潤んでいた。
感動のため、涙が零れ落ちそうだったのだろう。
(それはそうよね。相手の男がメラニアのことが好きなのも、調べたもの)
コナツは知っている結末であった。元々2人が両想いだと知っていたから、このテストが行われたのだ。
(羨ましい···)
両想いであることはわかっていても、コナツは感動しあう2人が羨ましいと思った。
お互い想いが通じ合い、幸せそうに微笑んでいる。
---でも、自分は仕事をしなければ。
「はい、メラニア!良かったわね!じゃ、氷の花について確認させて頂戴っ」
えっ、えっ、とメラニアは戸惑った。想いを遂げた余韻に浸っていた彼女に構わず、コナツは乱入し、メラニアの胸元を掴んだ。
「あ···」
メラニアの胸元を見た時、コナツとメラニアは呟いた。男性陣に見えないように胸元を確認すれば、そこには――。
「溶けてる···」
「なんだと?」
メラニアの氷の花は、溶けていた。
美しい氷の花弁が水を垂らし、溶けていく。ぽたぽたと落ちていく水滴はメラニアの胸と衣服を濡らしていく。普通の氷が溶けていくよりも、早すぎる。部屋の中は暑くもないのに、氷の花は姿を保てなくなるようにして、形を崩していった。
メラニアの胸から、元々そこに存在していなかったかのように、氷の花は溶けきった。
「···マンゴラドラの茎も、ニンフの髪も、飲んでないわよねっ!?」
「マ、マンド···?そんなの、飲んでいません」
ピロスの薬も、彼女は飲んでいない。
だとすれば―――。
(本当に···片思いの相手との恋が叶えば、氷の花が解けるのね)
信じがたかった。
恋が成就すれば、氷の花が溶ける。若い少女達の命を奪うのは、片思いのせいだというのか。
(じゃあ、片思いしたままのあたしは···?)
自分の余命は、あと19日だ。




