【13章】過去の襲撃
13章 過去の襲撃
(久々に襲撃を受けましたねぇ)
リオはコナツの怒鳴り声を聞きながらも、周囲を見渡し、ぼんやりと考えていた。
コナツは怒っているが、リオは自分でも驚くほどに冷静だった。
初めて殺されかけたという訳ではない。殺されかけたことなど何度だってある。
(皇帝に即位してからは初めてかもしれませんね。私が皇帝であることが、気に食いませんか)
「皇帝陛下、お怪我はありませんか?」
「いえ、私は大丈夫です」
エレニが訊いてきたので、平然と返す。事実自分は無傷である。それよりも、エレニが横にいるがーー。
「クロノス、他の魔術師が来たなら交代しましょうね。もう少しだけ頑張ってください」
「···はい、皇帝陛下···」
クロノスのほうが苦しそうだ。
雷で構成された檻を保持するに魔術師として力を使っているからだろう。
クロノスが辛そうだからと魔術を使わなければ、またタラコスは襲ってくる。皆のためにも、タラコスはこのまま封じなけければならない。
魔法と違って、人間が使う魔術には制限がある。横で見ていると、剣を使うよりもしんどいように思えた。
(私は、守られているばかりですね)
リオは横目でコナツの姿を見た。
「匂いはわかるんでしょお!?誰があんたと取引したのよっ!!言いなさいっ!」
コナツは、タラコスに対して怒鳴っていた。
自分を襲撃したことに、怒っている。
(あの時も···)
『リオ様っ!!』
自分達が育ったスモリペン島で、コナツは大きな声で叫んだ。
暗殺者に斬りつけられた時だった。
赤い液体が、白亜の床を汚していた。彼女の左肩から吹き出たそれは、彼女のきめ細かな肌を汚す。彼女の左肩からは血が滴っていた。
自分の頭を、彼女の胸が抱いている。
強張っている彼女の身体は、恐怖していることがわかった。けれど、彼女は自分よりも小さい体で、自分よりも恐怖を感じながらも、絶対に自分から離れようとしない。
絶対に自分を死なせるものか、と強く思っているようだった。
『何よ、あんた···リオ様は傷つけさせないわよっ!!』
コナツは怒鳴る。
元から怒りっぽい彼女だ。自分はずっと彼女を側においたていたが、まるで妹のようだと思っていた。自分が一から言葉を教え、隣で自分の世話をする彼女。
そんな彼女が、暗殺者から自分を庇い、自分の盾になったのだ。
コナツに傷をつけた出来事を、リオは忘れない。
絶対に、忘れられるはずがない。
(あの凄惨な事件を、忘れられるはずがない)
「···コナツ、あまりそれに近づかないで下さい。危険です」
リオはぎゃーぎゃー騒ぐコナツの左肩を抱き、優しくタラコスから引き離した。




