第七話 一致
ビルタの町にはすぐ到着した。
この時点で俺はさっきまでの恐怖感をとりあえず飲み込めていた。
半ば諦めに似た感情ではあるが、ノアの愛は人より重いっぽいから気を付けようという柔らかな表現で、無理やり心の中で決着させた。
気を取り直し難関であるはずのビルタの城門と対峙するのだが、通る際の検問は難なく通過。
高さ20mもあろうかという城壁も、ただ不可視化した状態で城門から悠々と入るだけなので何の障壁にもならない。
偽装の通行手形はそれなりに苦労して入手していたのだが、日の目を浴びることは無かった。
「これがビルタの町かぁ」
初めての大都市に目を輝かせるノア。
ビルタの町の中に入るとまず、王城まで一直線に伸びる中央商店街が目に入る。
ビルタは主に観光や商業の町で、その象徴が中央商店街である。
しかし俺は素早くノアを裏道に引っ張った。
基本的に観光客向けなので、冒険者向けでは無い商店街だ。
だが一歩横道へ逸れると、冒険者向けの専門店が立ち並ぶ面を併せ持つ。
ノアが観光気分な動きをしていたので、少し申し訳なくもあるがビルタの町に来た目的はこちらの方だ。
「ノア、こっち」
俺はノアの手を引きながら、人にぶつからないように裏道を小走りで進む。
この路地は迷路のようになってるがそこは盗賊。
地図はすでに頭に入っているし、人が来ないであろう場所や順路も予測できる。
するとすぐに人気の無い場所は見つかった。
「結界解いていいよ、ありがとう。さて、どこから回っていこうか。やっぱりノアの服かな?」
方針を考えていた俺だったが、ノアが結界を解除するとすぐ、結界で遮断されていたビルタの町の匂いが二人のとある感情を呼び起こした。
「ねぇ、エリク」
「奇遇だな、俺も同じこと考えてた」
「まだ何も言ってないよ!」
だが二人の意見は一致していた
「ご飯だろ?」
「うん!」
路地裏には俗にいう隠れた名店がたくさんある。
庶民的な料理でお値段も優しく美味しいのだ、前情報なしの直感で入るのが通だという。
それは通と呼べるのかはさておき、ノアには俺の茶色いぼろマントをとりあえず着させて変装してもらい、俺とノアは匂いの元をたぐる。
匂いを強く感じるのでお店が近いのは当然だが、その店は今いる場所から数歩先の角を曲がるとあった。
俺とノアは誘い込まれるようにその店に入っていったが、ちゃんと看板ぐらいは見るべきだった。
《キリータの酒場》