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俺、女神に憑かれてます  作者: 塚田恒彦
二章 ビルタ区編
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第五話 盗賊

 帝都ファータシュバンは円形の城壁に囲まれた都市である。

 その円は四つの町に分けられ、各々ビルタ、グラッド、ジェルタ、ドングの名がつけられている。

 そしてその円の中央部に位置するファータシュバン王城を合わせ、5つの区域から形成されている。

 中央に配置された王城は昼の間は門を開放しており、四つの町の経済を回す機関部となっている。

 金を巻き上げ民を虐げるような王ではなく、民を活かす王だ。

 他国と比べて発展の勢いが段違いに高い。

 帝都の外も属国が固めており、その国力は世界一と言っていい。



「そろそろ見えて来たな」

「あれが帝都ファータシュバン。まずはビルタの町へ行くんだよね?」

「そう、色々準備したいからな」



 ノアはビルタ側の森の上空で停止すると地面へ降下していった。

 着地も無音、人がいないことを確認すると、ノアは結界を解除しそれと同時に不可視化も解除する。

 足元にいたウサギは突然人間が出現したことに驚き、脱兎のごとく逃げていった。



「ついたよ。エリク、空の旅はどうだった?」

「冗談抜きで最高だったよ。また利用したいね」

「ではこちらの質問用紙にお答えを……」

「商会かよ」

「冗談だよ。ではビルタの城門へ向かおうかぁ」



 そういうとノアはさきほど上空で確認したビルタの方角へ歩き始めた。

 俺もすぐその横に追いつき、ビルタへ向かう。

 距離はそう遠くない、10分ほど歩けばたどり着くだろう。

 だが歩き始めてすぐに厄介なことになった。

 盗賊である。


 人から隠れる職業柄、人の気配には敏感だと自負していたがノアと出会ってここまで観光気分が抜けていなかった。

 後ろ10mの距離まで人が近づいてきていたのに、気が付けなかったのである。

 いくら気が抜けていても森の中だ。

 何をしても物音がするので、ここまでの接近を許すことは無い。

 そうなればこいつ”ら”の職業は盗賊かそれに類するものに絞れてくる。

 盗賊たちもこちらが気付いたと分かると姿を現す。

 三人。

 いや木の陰からゾロゾロ出てくる。

 合わせて七人のようだ


「おいおい兄ちゃんこの辺は俺たち黒狼団の縄張りだぜぇ?」

「おっ? 横の姉ちゃんはえらい上玉だな。こんな綺麗な銀髪、人買いにでも売れば結構な金になるぜ」

「売る前にあの姉ちゃんの身体はちょーーーとばかし遊ばせてもらうがな!」

「そんなわけだ兄ちゃん。見たところ盗賊の装備だが……おっとナイフをしまってくれよ。俺たちは切り合い殴り合いは嫌いなんだ。抵抗しないで死んでくれると助かる」



 ここで背を向けて逃げれば、矢で射抜かれるかナイフで刺されるかの未来だ。

 こういう奴らには挑発での時間稼ぎが有効なはず



「誰がそう簡単に死んでやるかよ。てめぇらノアに汚い言葉をかけんじゃねぇよ」



 軽口を叩きながらも、俺の右手に握られたナイフは震えていた。

 この人数には勝てない、正面から戦えば殺されに行くようなもんだ。

 相手が二人なら可能性もあったが、まずこの人数には正攻法では逃げることすらできない。

 ナイフを持たない左手でノアの肩を引き寄せる。



「いいかノア。今から正面の一人を殺る。この喋ってる姿勢でのナイフ投げだ。成功すれば相手は一人が殺されてビビる。その一瞬は全員が確実に守りの姿勢になる。その瞬間に逃げろ。俺は追加で二本ほど投げてから追っかける。ビルタの城門入ってすぐのキリータの酒場に行け。そこの女店主は知り合いだ。俺の名前を出せば……ノア? どうした?」



 俺が話している途中からポカンとしていたノアがあぁなるほどと言いながら立ち上がり、盗賊の方へ歩いていく。

 俺は数秒固まるが、直ぐにある予感が頭をよぎる



「待てノア! お前を引き換えに逃げるなんてできない! 俺はお前に会って! 自分を変えられるって思って!」



 眺めていた盗賊は大げさに泣く演技をする



「おぉ! こりゃあ涙なしには見られない! なぁお前ら!」

「腰抜けの兄ちゃんは逃げることしか頭に無いってのに! かーー! 泣かせるねぇ!」



 そして盗賊達は俺を指さしてゲラゲラ笑っていた。

 こうしている間、通行人も冒険者も来ないことから、奴らの縄張りであることの再確認程度しか頭が回らない。降りる場所ぐらいもっと考えてノアに言っていれば。俺が死ぬことも。ノアをこんな目に遭わせることもなかったのに。俺はただ自身の無計画を嘆くしかなかった。



「ノア、ごめん」



 そういうとノアはこちらにくるりと振り返り、困ったような顔をした



「ううん、謝らないで。カッコよかったよ、私を守ろうとしてくれたのはあなたが初めてなんだと思う。記憶は無いのに、なんでかなぁ心があったかくなった気がする」



 ノアはにっこり笑って続けた



「決めた。私がそばに居たいと思った最初で最後の人なんだから」



 瞬間、ノアは少女の雰囲気では無くなった。これは。あの時の。



「エリクは私が死なせない」



 ノアは右手を左腰に当て、”居合の構えを取った”



「降り神憑き《三刀・銀ノ高坏(ぎんのたかつき)

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