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俺、女神に憑かれてます  作者: 塚田恒彦
七章 ??編
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第四十八話 今後

 事件の聴取は予想より早く終わり、二時間ほどで酒場に戻ることができた。

 慣れない作業で思ったより疲労してしまった俺は、すぐに二階へ上がり、寝てしまった。


 起きると、一階から肉の焼けるいい匂いがしてくる。昨日の夕飯を食べていないので、正直重いくらいの朝食が食べたかったところだ。そんなことを考えながら、俺は階段を下りて行った。



「おはようエリク。よく寝られた?」

「おかげさまで。俺が寝ている間に何かあったか?」

「ついさっきだけど、冒険者さんが報告に来たよ。『昨晩の被害件数は0件!』ってね」



 これでこの件は終わりか。

 俺はカウンター席に腰を下ろし、ノアに手渡された水をグッと飲み干した。


 そういえばムーランの姿が見えない、と思ったところに、ちょうどムーランが帰ってきた。

 手に持っているのは封筒。恐らく中身は昨日の件の書類だろう、まだ書くことあったのか



「おはようございますエリクさん。これ冒険者組合の方に頂いたんですけど」

「まだ何かあったのか?」

「そう面倒なものじゃないですよ。報奨金のお支払いについての書類です」

「よっしゃあ!」



 正直に言うとすっかり忘れていた。

 俺がやらねばという使命感だけで動いていたために、これは嬉しい誤算だ。

 ムーランから書類を受け取り、封を切る。



「報酬は、150万ゼタ。こりゃ結構高いな。俺組合員じゃないんだぞ結局」

「この国だと、半年は普通に暮らせそうですね」

「やったねエリク」

「いや嬉しい、嬉しいのだが。中途半端に大金を持つと、野盗とかに狙われたりするだろ」

「野盗に狙われたとして、盗られる心配あるの?」

「心配なさそうだな!」



 ノアとムーランという戦力が居るため、通常の旅で心配するようなことは大抵解決できる。

 神にちょっかいをかけられながらの旅になるので、危険極まりないのだが、もし俺が野盗に襲われたとしても、心配すべきは野盗側の安否になるだろう。



「他は特に重要な記述は無いな。んじゃあ、病院に行って、組合でお金受け取って。

 それと、酒場に入居者募集して欲しいっての、取り消しておかないとな。師匠はそのうち復帰するんだし」

「その後はどうしますか? 街を出るとか、出ないとか」

「考えとく」



 ノアの作った肉野菜炒めを食べながら、今後の予定を思案する。

『ノアが今回の事件の原因ではないか』という推測はハズレだった。そのため、急いでこの街を出る必要性は今のところない。

 だが、今後のことを考えると、他の街を目指して動き出すべきだろう。


 現在はっきりしている目的は、ノアの記憶を取り戻すことだ。事件が一通り片付いたのだし、ムーランが知っている情報をできる限り聞き出して、今後の行き先を決めよう。

 敵ではないと確認できたムーランだが出会い方が最悪で、その後すぐに渇きの右腕と戦った。情報はほとんど聞けていない。




「ありがとうノア。朝食、美味かった」

「どういたしまして」

「さて、2人とも。作戦会議のお時間です。議題は次に向かう場所。

 まず旅の目的は、ノアの記憶を取り戻すことと決めている。俺には目的が無いし、ムーランはノアに付いていければそれでいいらしいからな」



 俺は、ノアとムーランをテーブル席に誘導する。

 座ってもらったところで、俺も再び2人の方を向いて座り直した。



「重要な部分はまず、ムーランがどこまで知ってるかだ。というかムーラン、言えないこととかあるか?」

「いえ、知っている範囲であれば、なんでも答えられます」



 どこから聞いていこうか。ムーランとノアの立場、これまでの経緯。ジルクラッド四楔について知っていることは、聞いておきたい。あとは他の勢力とかか?



「ノアとムーランが、リエイと戦った理由から聞いていこうか」



 そうして俺はムーランに話を振る。

 


「結論から言うと、ノアさんの持っていた生命と破壊の神の力を、自分の管理下に置くことがリエイの目的でした。

 まず、神という存在達は各自何かしらの役割を持っています。ですがそれを失う場合があります、それが封印です。その場合は他の神がその任に付きます」

「生命と破壊の神の力を得て、リエイは何がしたかったんだ?」

「リエイは、何かがしたかったわけではありません。生命と破壊の神の力が強大過ぎたので、不安要素だったのでしょう。ノアさんは昔からリエイと意見が合わないこともあったのです。

 ノアさんはリエイとエレの二人に倒され、ノアさん側に付いていた僕もすぐにやられました。目覚めたのはノアさんと同時か、少しあとぐらいです」


「それで今に至ると。

 ムーランの記憶があってノアの記憶が無いのは、リエイが言っていたようにやられ方の程度の差なのか?」

「『生命と破壊の神』の力を奪われるまでやられたからでしょうね。

 その力を持っていた時期の記憶が、能力ごと失われてしまったのではないでしょうか」

「能力と記憶が連動してるなら、能力を取り返せば記憶が戻るってことはないか?」

「前例がないのでなんとも言えませんね。ですが、賭けるならそこになるでしょうね」



 最終目的は、リエイから『生命と破壊の神』の力を奪還することになりそうだ。

 交渉してみなくては分からないが、すんなり返してくれたりしないだろうか。



「ムーランはノアの護衛か何かだったのか?」

「僕は勝手にくっついて行動していただけです。四楔シロが適当に作って廃棄したなりそこないの神を、ノアさんは救ってくれました。僕はその内の一人で、弟のように扱ってくれていました。

 当時の仲間たちが今どうなっているかは分かりません」

「私の話をしているはずなのに、全く身に覚えがないっていうのも変な話よね」



 なりそこないの神と言うくらいなのだから、ムーランほど高性能なのはレアケースなんだろうな。なぜムーランは廃棄されていたんだろうか。

 しかし、四万年あってリエイがまだ現役な時点で、戦力としては期待できなさそうだ。


 目的としては変わらず、ノアの記憶を取り戻すでいいか。

 だがリエイに会うためには、あちらからの接触を待つしかない。

 そうなってくると、今やるべきことは無いという結論に至ってしまう。

 神の住処にでも、こちらから行ければ良いのだが。



「俺としては、今やるべきことは特にない。リエイに会えるまではどうにもすすめないと思うんだが、何か良い案はあるか?」

「私はない」

「僕もないですね。こちらからリエイに接触する手段は知りませんし。奴の気分次第です」

「私に会いたいって?」



 しばらく理解が追い付かなかったが、隣にリエイがいた。

 そうだ、前図書館で会った時もこんなタイミングだった。驚きはしたが、冷静を保たねば。

 ノアとムーランはリエイを警戒し、注視している。

 俺は椅子からずり落ちかけた半身を起こし、とりあえずリエイに応答する。



「あぁ……うん」

「こう突然出てこられると、驚く前にあっけにとられるから楽ね。変にびっくりしなくていい」

「お二人が警戒を解いたので、僕も警戒を解いていますけどいいんですか?」

「敵対しているわけじゃないから大丈夫だ」



 俺はリエイの表情をチラリと確認する。深刻な話をするっていう感じではない、話を盗み聞きした上で現れたのだから、もうこれは全て解決してしまう勢いで、話が進むのではないか。



「リエイ、単刀直入に言うわね。

 私の、ノアの生命と破壊の神の力を返してちょうだい。

 できないなら一戦交えるだけよ」

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