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俺、女神に憑かれてます  作者: 塚田恒彦
六章 闇討ち編
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第四十六話 右腕

「エリクさん。ノアさんが配置に付いたようです」

「ムーランは覚えたか、冒険者の配置」

「覚えました。誰も巻き込まずに、実行できます」

「よし、やるか」



 俺は松明をブンブンと振り、上空に居るノアに合図を送る。

 するとノアも火を振り回し、応答がきた。

 これでノアが戦闘可能かつ、冒険者が動いていないことの確認を済ませる。



「ムーラン! 路地全部、地面ごと持ち上げちまえ!」


「いきます、操流土(そうりゅうど)!」



 ムーランが手のひらで、地面にグッと力を込めた。

 すると大きな揺れと共に、目の前で数百もの土の柱が生成されていく。

 その勢いで、路地にあったものを全て、ノアの待つ上空へ放り投げるのが目的だ。



「よし。柱のてっぺんを全部つないで、飛び地が無いように綺麗な平地にしてくれ。それと俺が上れる階段を作ってくれ」

「わかりました」


 ムーランが再び地面にグッと力を込めると、下から見えていた天井部分の隙間が、みるみるふさがっていく。そして俺のすぐ傍に、土の階段が形成されていった。

 すぐに階段を駆け上がろうとして、一段目に足をかけると、ノアのいる最上段が強い光に包まれた。



「順調だな」



 恐らく奴の瞬間移動には、条件があると考えていた。何ら縛りが無く、連続使用ができているのなら、複数人で路地の入口に立っていた冒険者が襲われないというのはおかしい。

 俺は襲えたが、冒険者を襲えない理由があるはずだ。


 考えるに、奴は強くないのではないか。

 暗闇からの不意打ちが脅威なだけであって、それ以上の武器は恐らく持っていない。そのため、一対一の構図でしか襲ってこないのである。


 ノアには『ムーランに平地の舞台を作ってもらう。ノアは特大の火球で光源を作って、奴自身以外の全ての影を奪ってやれ』と伝えていた。

 隠れられる影が無いのだから、無力化したと言っても差し支えないだろう。


 俺はすぐに階段を駆け上がり、ノアのいる最上段に顔を出す。

 するとノアが大柄な男の背を踏みつけて、月を眺めていた。

 どうやら戦闘というほどのものではなく、ノアが制圧して終了したようだ



「そいつなのか?」

「えぇ。でも焼き殺す訳にはいかなくなったわ。ちょっと見て」



 ノアが男の横腹に蹴りを入れ、仰向けにさせる。

 俺はすぐに、その男の右腕が異様であることに気付いた。

 右腕だけが餓えて死んでいるような、哀れになるほどの細さだったのだ。



「渇きの右腕ね。そこまでして瞬間移動能力なんて欲しがるものかしら」

「それは……なんだ? 呪術の類なのか?」

「まぁそんなところね。餓死者の遺体にまじないをかけて作成するの。

 そしてまじないを発動させ、得たい力を願うと大体その願いに沿った能力が得られるわ。と言っても、制限やら弱体化付きのものだけど。

 エナジードレインは渇きの右腕が元々持っている能力だから、それとは別ね。

 けど代償として常に生気に飢えることになる。そして人格を保てなくなっていくわ。かなり上位の魔術師や呪術師でなければ、渇きの右腕の邪気にあてられて、今回のように無差別に人を襲うようになる」

「そんな恐ろしいもの、誰が使うんだよ」

「渇きの右腕の邪気に耐えられるような上位の魔術師は、腕に頼らなくても十分な力を持っている。大方、奴隷を買った金持ちの道楽かしら。高価な品らしいし」



 俺はノアから倒れている男に目を向ける。腕に操られていたとしたら、罰を軽くしてやる必要があるかもしれないな。

 身内が攻撃されただけに、そう簡単に許したくはないが、コイツもまた被害者かもしれないのだ。



「ノア、コイツの右腕なんとかしてやれるか?」

「この程度の呪術なら、すぐに破壊できるわ。このままだと腕の邪気にやられて、話を聞く前に死なれてしまうかもしれないし、解呪してあげましょう」



 ノアが左手に青い炎を纏わせ、男の右手を焼き始めた。



「なぁノア、コイツの腕は」

「無くなる。正確にはこの呪術を授かってしまった時点で、彼の腕は代償に持っていかれているわ。

 話せば話すほど、胸糞の悪い代物ね」

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