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俺、女神に憑かれてます  作者: 塚田恒彦
六章 闇討ち編
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第四十一話 病院

 病院に向かう間は何度も分かれ道がある。家と家のわずかな隙間も、通る人からすれば道だろう。

 今日は何故だか様子が違う。何本かの道ごとに冒険者らしき人物がニ・三人で立っているのだ。

 そのくせ、歩いている冒険者は居ない。別にこの近くに目的地があるのではなく、そこに居ることが目的なのだろう。要するに冒険者が駆り出されるような警戒状態なのだ。

 俺が通ると一様にこちらをチラリと見るが、何もされない。なんのための配置だろうか?事件とかではなくなにかしらの祭りなんかの警備だったら平和的で良いのだが。

 そんなときどこかで見た顔の冒険者がいた。名前は知らないが、ノアが盗賊団を降伏させたときに師匠と一緒に駆けつけてくれた人だ。話を聞こうと近づくと、先に気付いてくれたようで逆に話しかけてきた。



「エリク君だよね? キリータさんとこの」

「はい。盗賊団の件はご協力ありがとうございました。

 お聞きしたいのですが、この異様な警戒は何があったんですか?」

「あぁ、君には説明しておくべきだろう。ここは同僚二人に任せて私が歩きながら説明するよ。目的地は病院だよね」



 そういうとその冒険者は歩き始めた



「見舞いです。キリータの」

「うん。過労だと聞いていたそうだね」

「正確な原因が判明したと? 疫病の類では無いと信じたいですが」

「いや、断定できたわけではないよ。ただここ二日、ひどく体調の優れない様子で病院に運び込まれ、昏睡状態になってしまった人間が異様に多い。

 もう数十人はやられてる。となれば過労などの個人的な理由ではない。強力な魔術や魔物の仕業である可能性が高い。疫病や毒物の可能性も捨てきれない。そんな訳で絞り込めた訳ではないんだ。すまない」

「謝ることはないですよ。情報感謝します」



 原因が判明していれば一つ悩みのタネが消えたのだが、現段階ではノアの無自覚な能力が原因である可能性を持っていなくてはならない。都市の外に出るという行動を先送りにして、こうして見舞いに来ているのは選択としては誤りだ。ノアが原因だと思いたくないんだろうな、俺は。

 そう思案しながら歩いていると、気付けば病院前まで来ていた。同行してくれた冒険者に『見舞いに寄っていかれますか』と尋ねたが、朝方一度見舞いに来てくれていたとのことで、また持ち場へ帰っていった。

 俺は正面から病院へと入っていった。以前は無かったのだが今日は手荷物検査をしているようだ。当然仕込み武器だらけなのだが、ナイフのみ自己申告してその冒険者に預けた。

 人は疑問が解消されると気が緩んでしまうもので、武器を持っていないかという疑問にナイフを渡して答えることで追及されることなく入ることが出来た。さきほどの冒険者と入り口まで来たのが見えていて安心したのかもしれないな。

 さっさと師匠の病室へ向かう、特に出来ることも無いがムーランの話をつぶやきながら花瓶の水でも変えようか。



「おはよう」



 俺の言葉ではない。師匠だ、半身を起こしてこちらを見ている



「一日と半日待ったよ。それと今は夜だ」

「そんなに寝てたんだね」

「ホントだよ心配させやがって……」

「おいおい泣くのが早すぎないかい?」



 師匠にはははと笑われているが、俺の涙は止まらなかった。

 本当に良かった。俺は不安定な足取りで近くにあった椅子に座りこんだ。そしてちょうど夕食を運びに来た看護師さんに事情を説明し、少しづつ俺の精神は落ち着きを取り戻していった。

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