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俺、女神に憑かれてます  作者: 塚田恒彦
五章 ムーラン編
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第三十三話 少年

 俺は組合からまっすぐ酒場へ向かった。ノアが荷物を片付けてくれているだろうし、お金をソイリオさんに預けたらさっさと町を離れるとしよう。

 酒場に着くとノアがテーブルで少年と喋っている。ノアと会った屋敷で見たような穴あきのボロ布の服を纏ったその少年は中性的な顔立ちだが男だとは分かる。12か13歳ほどだろうか。



「おかえり!」



 俺に気付いたノアが手を振ってくる



「ただいま。その子は?」

「この子はねぇ」

「待った!」



 ノアが説明しようとするとその少年が遮った。加えて言うとこの声で男であることはほぼ確定した。



「俺は……」



何故かその少年はいきなり言葉に詰まる



「ノアを遮っといて初っ端から止まるなよ」

「ちょっと頭を整理しただけだ! 俺はムーラン。この町に住んでる。お前がこの近くの盗賊団を壊滅させたと聞いてここにきた!」

「はぁん……なるほど。弟子入り志望か」

「いや違う」

「違うのか」

「お前が俺の部下になるんだ」

「帰れ」



 俺はムーランの首根っこを掴んで店の外にずるずると引きずっていったが、思っていたより力が強く、振りほどかれてしまった。どうやらまだ言いたいことがあるようだが俺にはコイツの発言以外に気にくわない部分が一つあった。



「もう一度言うぞ、帰れお坊ちゃま。俺がやってるのは遊びじゃねーんだぞ」

「うっ……」



 ムーランが言葉に詰まる。その様子を見ていたノアが口を開き、当然の疑問を投げかけてきた。



「あれっ、この子お坊ちゃまなのエリク?」

「あぁ、推測だったけど、この反応だと当たってたみたいだ。

まず服がボロ過ぎる。ここまでボロボロなのは奴隷やかなりの貧民ぐらいなもんだ。そんな奴が通行手形の必要なこの町でウロウロしてるかよ。加えてこいつは肌ツヤもいいし栄養も足りてる。近づいても悪臭はしないし、むしろ微かに香水のにおいがする。捨てられていた服を着たであろう根性は認めるがガワだけだ」

「そういえば手形が必要ってエリク言ってたね。私たちはズルしたけど」

「手形って出るとき必要だったっけ?」

「もしかしてそのために組合に行ってきたのエリク?」

「あぁ組合の話してなかったな……」



 ムーランを放置して俺は組合で決めたことの概要をノアに話した。お金を全て預けていくという俺の判断にはかなり驚いたようだった。ノアが何かの時の為に少しだけお金を持っておこうという案を出して来たのでそれに乗ることにした。今更だが全額置いていくのは流石に冷静では無かった、ノアに感謝だ。

 そんなことを話している間にムーランが帰ってくれることを願っていたが、どうやらここに来たのはお遊びではなかったらしい。ムーランにチラリと目をやるとちょうどぽろぽろと泣き出すところだった。


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