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俺、女神に憑かれてます  作者: 塚田恒彦
四章 時空編
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第三十二話 信用

 冒険者組合に着き、受付嬢に窓口からソイリオさんを呼んでもらった。

 早朝という訳では無いのだが、偶然にも冒険者は居ない。

 聞かれて困る話という訳では無いが、混んでいないのは気楽で好都合だ

 待つこと数分、受付横の従業員用の扉からソイリオさんが出てきた



「お待たせして申し訳ありません」

「いえ、とんでもありません。ソイリオさん昨日はありがとうございました」

「礼など要りません、見捨てるなんてしませんよ」



 ソイリオさんはにっこりと笑ってから続けた



「それでエリクさん。キリータさんは目覚めましたか?」



 俺は首を横に振る



「今の所目覚める兆しはありません。そこでソイリオさんに頼みたいことがあって来ました」

「本題はそちらですね。場所を変えましょうか?」



 そう言ってソイリオさんは二階に続く階段を指さした



「いえ、ここで大丈夫です。まずですが、ししょ……キリータの医療費は私の報奨金を全て渡すのでそれでお願いします」

「全てですか? それだと、かなりの期間寝たきりのような計算になってしまいますよ」

「何があるかわからないのでと言うことです。余ったらキリータに渡して下さい。それで手持ちの資金も無くなりますし町の外へ仕事を探しに行きます」

「この町も良いところですよ?キリータさんの酒場で寝泊まりをしては?」

「いや、それは……」



 言葉に詰まった。

 自由に使える住居を手放して外に仕事に行くなんておかしい話だ。

 師匠の療養している病院も気がかりなはずだというのに。

 しかし俺はノアを人のいない場所に早めに連れて行かなくてはならない



「いえ、すみませんエリクさん無粋なことを言いました。何か理由があるのでしょう。犯罪がらみではないですよね?」

「それは! 断じてありません!」

「分かりました。他には?」

「信用のおける冒険者に住居として酒場を貸し出してくれませんか? 盗人に酒場を荒らされてはかないませんから。そしてその賃料をキリータの医療費の足しにしておいて下さい」

「冒険者にはこちらで声をかけてみましょう。他には?」

「ありません。わがままな頼みとは分かっています。どうか頼まれてはくれないでしょうか?」



 俺が深々と頭を下げて頼み込むとほんの一瞬、間があったが直ぐにソイリオさんは承諾してくれた



「頼まれましょう! 一切私に任せていただいて構いません、ですが週に一度くらいは顔を出してくださいね。キリータさんがそう長く眠っていることは無いと思いますので」

「ありがとうございます。えぇ、必ず顔は出します。ではこれで失礼します」



 そう言うが早いか帰ろうとするとソイリオさんに呼び止められた



「エリクさん、急ぐ足を止めて。心配事を話していきませんか?」

「配慮痛み入ります。ですが、私が解決しなくてはならない事なので」

「そうですか。ではお気を付けて」



 ソイリオさんは俺が隠し事をしていると、終始見抜いているようだった。

 だが面倒な依頼も受けてくれたんだ、これ以上巻き込むわけにはいかない。

 今回もまた深く聞いてくることは無かったが、キリータさんの弟子なら信用できるということなのだろうか、ありがたい話だ。

 だが勢いで進め過ぎたような気はしなくもない。

 師匠の倒れた原因が、ノアの力の影響というのもやはり予想の域を出ないうえに、町の外での仕事のアテもない。

 けれどノアが誰かを傷つける可能性は減らせるのだ、長い付き合いになるだろうし、もう少し探り探りな期間があってもいいだろう。

 俺は今後の事を思案しながらノアの待つ酒場へと向かった。


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