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俺、女神に憑かれてます  作者: 塚田恒彦
四章 時空編
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第三十一話 影響

「おはようノア」

「おはようエリク」



 病室に着くと少し眠たそうなノアが出迎えてくれた。

 昨日は寝ないで師匠のそばにいてくれたらしい。



「ごめんな、徹夜なんてさせて。寝てもいいよっていっても、ノアなら起きてるよな」

「ううんいいの。自分の意志だから」

「そうか。ありがとう」



 ノアがふふっと笑い。しばし会話が止まる。

 いつもならここで師匠から『新婚夫婦かよ』とツッコミが飛んできそうなものだが、今日は無かった。



「師匠は……一回でも目を覚ましたか……?」



 ノアは黙って首を横に振った。



「むむ……」



 俺は眠ったままの師匠の顔に目を向ける。

 顔色は良くなっていて、いつもの師匠に戻っている。しかしぐっすり寝ているようで起きる気配は無かった。

 俺とノアは病室に他の入院患者が居ないことから、ひそひそ話すでもなく師匠を起こすぐらいの勢いで普通に喋っていた。しかし師匠はとくに動くでも反応するでもなく、ただぐっすりと寝ているだけで期待していた反応は得られなかった。



「なぁノア。師匠さ、過労で倒れるほどギリギリな体調だったように見えたか?」

「私は……気づかなかったなぁ」

「そうか。あぁでもまさか……」

「なにか気付いたの?」

「ん、あぁいや、なんでもない。別に隠し事でもないさ、気にしないでくれ」

「そう」



 喋っていると巡回の看護師らしき人が来たので、過労で何日も起きないことはあるのかと尋ねてみた。

 聞けば、丸二日起きなかったりする人は居るらしい。

 しかし過労で倒れて病院に来る人はあまりいないので、異常性の線引きは難しいという。

 過労で倒れる人が少ないのか、倒れたら死に直結する労働環境の人が多いのか。はたまた両方か。


 看護師から師匠の朝食を受け取る。

 師匠はまだ寝ていると伝えたが、昼食の際まで残っていれば病院側で処分するので、起きたら食べるでいいとのこと。



「さてと、ノア。後は病院に任せよう。素人が居ても邪魔だしな」

「キリータさんの側にいなくてもいいの?」

「いいのいいの! 俺たちは旅に出るとしよう」

「え」



 旅に出るとしよう、という言葉はどうやらノアとしては予想外だったらしく、会話が急停止した



「なんだよ『え』って」

「店番するわけじゃなく。旅?」

「んまぁこの町も見回ったし。師匠のことはソイリオさんに任せよう。あの人は信頼できる」

「エリクはそれでいいの?」



 それでいいのとは師匠のそばに居なくてもいいの、ということだろう。



「そりゃ心配で仕方ないけど、ずっと師匠を心配してたなんて言ったら拳骨が飛んでくるだろうしな。『ババア扱いすんじゃないよ!』ってな。この町だと師匠に頼りっぱなしだったし俺達は俺達で歩き出さないとな」

「エリクがそういうなら」

「んじゃ、とりあえずノアは酒場で荷物をまとめといてくれ。食べ物も取ってっていい」

「え、いいのかなそれ」

「いいよいいよ。じゃ、俺は組合長さんのとこ行ってくるから」



 俺とノアは病院から大通りまで出たところで別れ、各々の目的地へ向かった。

 急がなくてはならない。

 まだ勘でしかないが師匠が倒れた原因はノアのなんらかの力ではないかと俺は睨んでいる。

 師匠にとってここ数日の大きな変化は俺たちが居たことだ。

 かといって、俺達は場所を借りているだけで、師匠の仕事は増えていない。

 酒場の店主である師匠だ、食事が三人前になったぐらいでは過労で倒れたりしないだろう。

 盗賊の一件の次の日も、師匠に疲れた様子は無かった。

 としたらノア本人の気付いてない力が、師匠に悪影響を及ぼしている可能性は否定できない。

 ここに来た時、ノアが師匠を殺気で殺しかけた事を考えても、ノア本人が気付いていない何らかの力を疑いたくもなってしまう。

 ノアの事は今も分からない部分が多すぎる。

 もちろんそれは最悪の場合だ。

 思い過ごしであればいいのだ、師匠は本当にタダの過労でノアは何もしていない。

 それが最善であることに変わりはない。

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