第二十二話 組合
「ほら起きた起きたぁ!」
突如師匠に俺とノアは師起こされる。朝ではあるようだが
「もっとゆっくりさせてくれよぉ……」
「そうですよぉ……」
「いや、なんかさ。起きろー!ってやってみたいじゃない?」
「そんなことのために安眠を妨げるな……」
「ほんとそれ……」
「ありゃ。エリクはともかくノアちゃんもちゃんと疲労してるのね。なんだか安心したわ」
「それってどういう――」
ノアが聞こうとするが師匠が遮る。
「なんでもないよ~ご飯用意してるから降りてきな~」
そういうと師匠は部屋から出て行った。
師匠らしくない発言だが、ノアの人間らしさが垣間見えて安心したということだろう。
師匠も最初ビビってたし。
「ま、なんでもないつってんだからなんでもないんだろう」
「そうかなぁ」
「そうだろ、一階に降りよう」
「うん」
一階に降りると、机がまともに使えないこともあり、カウンターにパンと卵焼きにサラダが人数分用意されていた。
飲み物はリンゴジュースだ。
「ありがとう師匠。優しすぎて怖いよこの二日間」
「ありがとうございます」
「いいっていいって。ま、私も盗賊業から足を洗って長いからねぇ。丸くもなるさ。食べましょ食べましょ」
「「「いただきます」」」
他愛もない雑談で朝食は過ぎていった。
食べたら組合に顔を出しに行くとのこと。
昨晩決まった通りノアは店内で掃除だ。魔道具屋のじいちゃんが昨日の盗品奪還の礼にとノアの服と礼金を渡しに酒場まで来てくれるらしい。
それを待つのと掃除を兼ねて、ノアはお留守番だ。
「んじゃ、食べ終わったことだし行きますかぁ。ノアちゃん、あのおじいさん以外の人が来たら『キリータは夕方には帰ってくる』と伝えて頂戴。悪い人が来たらそのひとよりちょっと強いぐらいの力で応戦してあげてね~人間ってすぐ死んじゃうから。はっはっは」
「ま、そういうことだ。留守番頼んだぞノア」
「りょーかい!」
俺と師匠はノアと別れ、冒険者組合に向かった。
建物は中央商店街の中心付近にあり、歩いて10分ほどで着いた。
胸の位置ほどにある両開きの扉を押して中に入る。
中は冒険者達が喋れる丸机が10ほどあり、その奥に四つ受付が見える。
店に入って振り返ると扉の左右の壁には難易度別に依頼が貼られていた。
その前で数人の冒険者が依頼書を眺めている。
師匠は俺を入り口の扉の脇に立たせ、自身は何やら受付嬢となにやら話を付けているようだ。
数分待っていると俺の所へ師匠が話していた受付嬢と共に帰ってきた。
「終わったの?」
「いやぁ予想はしてたけどちょっと事情がごちゃごちゃしててねぇ。二階についてきてくれ」
その後受付嬢に二階の応接室に通され、ここでお待ち下さいと言われ待機することになった
「なぁ師匠。俺は今から誰と会うんだ?」
「ビルタの冒険者組合長」
「お偉いさんだよなぁ」
「ん、まぁね。何度か会ったことはあるけど穏やかな人さ。多少の無礼は気になさらないだろうけど丁寧にな」
「今回はあの盗賊団関連だろうけど師匠は内容聞いてんの?」
「いや、聞いてはいないけどお前について聞きたいことがあるってぐらいなんじゃないのかい? お前達があの盗賊団を倒したのは組合にとって予想外だったのさ。言ってなかったけど来週にでも踏み込む予定だったしねぇ」
「え!? そうなのか!?」
「あの盗賊団について調べてでもいないとおかしいじゃないか。昨日お前たちを追いかけて渓谷まで行ったんだぜ? 以前から場所が分かってないと追いかけようもないじゃないか」
「あぁ俺とノアが頑張って見つけたって感じじゃないのか……」
「そう落ち込むだろうと思って言わなかったんだよ。お前ら自身でちゃんと発見したのになぁ」
「なんかこう……二番煎じと言いますか」
「あーもう。うじうじうるさいねぇ。ほら、来たよ立ちな」
気付かなかったが足音が応接室の扉の前まで来ていた
「やぁやお二方。待たせて申し訳ない。少し仕事場がごたついていてね」
入ってきたのは50代ほどの男性だ。
衣服は冒険者ではなく事務員のそれだが、体格や手の頑強さから屈強な戦士であったことが伺える
「いえいえ、とんでもない。ホラ、エリク礼しな」
「ぐぇ」
師匠は俺の後頭部を押し付けて無理矢理礼をさせた。
首がもげそうになったがなんとか耐えた。
「ははっ、師弟とは聞いていましたが仲がよろしい様で」
「ええまぁ、良い弟子ですよ」
師匠が俺の頭から手を放す。俺と師匠は組合長に誘導され対面の形でソファに座った
「申し遅れました。わたくし、エルタ区冒険者組合長ヴェルコ・ソイリオともうします。キリータさんとは区の警備面や冒険者のサポートでよくご協力頂いていますがエリクさんとは初対面ですね。名前は好きに呼んでいただいてかまいません」
「エリク・ジェリネです。よろしくお願いしますソイリオさん」
「よろしくお願いします。ではお二方、早速ですが本題に入ります」
ソイリオさんは笑顔のまま続けた
「エリクさんは我々の敵ですか?味方ですか?」