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俺、女神に憑かれてます  作者: 塚田恒彦
三章 荒野編
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第十九話 疾風

 ノアがアジトを正面に見据える。

 右手の拳を自らの左肩まで引き上げ、足を少し開き身体を左に捻り力を込める。



「ノア不可視化自分にかけないと!」

「これは力技だから結界の術と使う回路が別なの。撃った後切り替えるから!」

「良くわからんがその技撃ったら、すぐ不可視化かけろな!」



 俺はノアの背後5mほどの地面に伏せる。

 松明で照らされているアジトはこちらから容易に視認できるが、あちらからは暗闇に溶け込んだこちらを視認することは出来ない。

 ノアの顔が見られないようにと保険に自分の不可視化は念押ししておいたが、必要ないかもしれない。

 120mほど離れていることもあり、顔などはこちらからも分からないが、奴らに大きな動きは無い。

 先ほどの半宴会状態が続いているのだろうか。

 そんなことを考えている数秒の間にノアの準備は出来たようだ。



「いくわよぉ……風、走って抉れッ!」



 裏拳の構えから放たれたノアの拳は壁に当たったかのようにノアの胸の前で停止する。

 ゴッ……ズゴァォォォォォォォォォォォォォォォ!

 直後、辺りは暴風に包まれた。

 砂埃が酷く目を開けることができず、必死に地面の突起にしがみつくことしかできない。それから数秒後

 ベリベリベリメキメキゴガシャアアア!ズガガゴシャン!バキバキ……バキ…ガシャ

 直接その光景を拝むことは出来なかったが、屋根及びその周辺の資材が吹き飛ばされていく光景がありありと浮かんだ。

 それからまた十秒ほど耐えていると数回の突風の後、風は止んだ。

 うっすらと目を開けると辺りには夜が横たわっていた。


 どうやらノアは屋根だけ吹き飛ばせと伝えた俺の指示から、死人は出したくないといいう俺の意志を汲んでくれたようで、火事にならぬようアジトの松明など照明の類を全て消したため、真っ暗になったようだ。

 辺りが真っ暗になることを、俺は想定していなかったため一瞬慌てたが、それは彼らも同じらしく、即座に数本の松明の明かりが着き始めた。

 自分の位置を示すようなものだが、攻撃を受けた時点で位置はバレていると踏んだらしい。

 俺は闇に紛れて建物から30mほどの距離まで詰める。



「なんだ今のは!」

「誰だ出てこい!」

「クソボケがぁ!」



 数人の怒号が聞こえる。

 他の静かにしている奴らは戦意はありこそすれ、ここで敵対オーラを出すべきでは無いと判断したのかあまり動きがない。

 盗賊は職業柄危機能力が高い。

 前触れの無い突風は自然災害ではなく、高位の魔術師によるものだとしっかり認識してくれているようだ。

 これで第一条件クリアだ。

 余裕綽々な魔術師として颯爽と現れるとしよう。



「やぁやぁ皆様。ちょいと取引と行きませんか?ザルーカさんとやらはまだ生きておられるか?」

「な、こいつが?」

「さっきの……?」



 見張り君と飲んだくれのおっさんは覚えてくれているようで驚嘆の表情を浮かべる。

 他は警戒したまま何も言おうとはしない。



「私がザルーカだ。要件を聞かせていただきたい」



 しばしの静寂を切り裂きザルーカが前列に出てきた



「簡単なことです。大人しく全員に投降していただけるのであればこれ以上攻撃はしません。」

「ぐっ」



 このザルーカという男は俺、正確にはノアの力だが勝てないと理解したようで必死に最善の取引を考えていたようだ。

 しかし目前にして抵抗できる相手では無いという結論に至ったらしい。

 ノアに屋根を吹き飛ばして貰った事が、交渉しやすくするための威圧としてキチンと作用してくれているようだ。



「むぅん!」



 突如ザルーカの右手が素早く捻り、ナイフが飛ぶ。

 ザルーカが抵抗せず諦めてくれそうで安心しきっていた俺は、反応が遅れ顔に直撃する。

 俺を含めその場の盗賊たちはそう思った


 ガギィン


 俺の顔にそのナイフが直撃することはなかった。

 鈍い金属音を響かせ、ぐにゃりと曲がったナイフが地面にはたき落とされる。

 見えたわけではないが、おそらくノアの介入のおかげだろう。

 とっさに俺からもう一押し。



「こ、これでわかったでしょう。降伏しなさい!」



 目の前で理解不能な現象が起き、一瞬目を丸くさせるザルーカ。

 しかしザルーカが諦めたように腕をだらりとさせると、周囲の盗賊も敗北を理解し、緊迫感のあった場から一転、生気が抜けたように全員が降伏した。

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