第十八話 相棒
「さてノア。これからの作戦を説明する」
「はい」
「いや、ちょっと練り直させてくれ」
「なんでそうすぐ決心が揺らぐのかしらね」
「うるせぇやい」
「ふふっ」
俺とノアは見張りに気付かれないように岩陰で小さく笑いあっていた。
ノアが俺にしっかり喝を入れてくれたおかげだ。
お互いの弱いところがみえて、改めてお互いの信用は盤石なものになった。
俺はノアと一緒に戦っていける。
「よっしゃ、決まった。まずノアが出来ることを教えてくれ」
それを聞いたノアは首をかしげる
「それは……あの盗賊達に対して使えそうな物。ということでいいのね?キリがないわよ?」
「んじゃ要約で」
「無茶苦茶言うわね……でも、そうね。要約するとしたら、私から月までの距離を半径とした範囲ならだれでも殺傷できるわ。手加減は出来ないけれど物体の破壊も同様に。あと火・水・風は天災とか言われてる程度の規模ぐらいなら操れる。多分ね。試してはいないけど」
予想を遥かに超えるスケール感に面食らってしまう俺だったが、ここまでの旅で形成されたノアの能力の思い出を振り返り、なんとか精神を安定させる。
落ち着くんだ、ノアはまだまだ隠し玉を持ってると考えないとこの先が思いやられるぞ。
ノアと一緒にやってくんだろ!
「ふむふむ。催眠とかは?」
「出来ないと思うわ。攻撃には特化しているのだけれどそういう精神とかごちゃごちゃしたのは私の……私の……?」
そうやってノアは何か不思議そうな顔をして悩むように黙り込んでしまった。
何か自問自答するような物言いだったが、俺にはその意図は分からない。
俺が少しノアを待っていると、ノアはまだ確信に至ったような表情ではないが口を開いた
「たぶん、私の担当ではないんだわ。ハッキリとは分からないけどその力は他の神様がもってるはずよ」
「他ねぇ……確かノアと同列の神様は四人いるんだっけか。なら担当分けされてるのも分かるな。無いもんは無いんだ。頼りにはしてるけど無茶な期待はしない。気にするなよノア」
「ありがとう」
そういうとノアは安堵の表情を挟んだのち会話を続けた。
「それで?私はどう動けばいいのかしら」
「あぁそれなんだけど。まずその赤い箱もらっとくよ、ありがとう」
俺はノアに取りに帰ってもらった赤い箱を指差す。ノアが降ろし俺が背負う
「次の指示は随時出す。自分にだけ不可視化をかけといてくれ。さてと、ノア。あのアジトの屋根。消し飛ばせ」
「お安い御用!」
ノアは俺に聞かない。
大丈夫なのか、次の事を考えているのか、結果どうなるのか。
もし、俺がノアの立場でもそうだろう。
何より、ミスっても許せる。
相棒が断言しているのだから、聞くのはヤボだ。