第十五話 潜入
「ノア。あいつらから情報を引き出す為に良い作戦を思い付いた。いったん外に出よう」
「分かった。その良い作戦ってのはどんなの?」
ノアと俺は元来た入り口から再びアジトの上空に戻った
「さてさて作戦の話をしよう。聞いて驚けノア。作戦名は忘れちゃった大作戦だ!」
それを聞いたノアは明らかに嫌そうな顔をする
「内容はまだ聞いてないけどさ、その作戦名じゃやる気でないよ」
「じゃあ。作戦名【影】で」
「採用」
「変わり身早っ! まぁいいや内容を説明しよう」
俺はオホン!とそれっぽく作戦内容を語り始める
「まずこの盗賊団の特性を考えよう。この盗賊団は冒険者組合みたいなもんだって話はしたよな?」
「うん」
「依頼の品や、高額で取引されている物品の情報を盗賊たちに流して、その売買の仲介をするのがおそらくこの盗賊団のやり方だ。各支部のリーダー。さっきの事務方っぽいやつだな。あいつの顔は知っていても所属盗賊同士はあまり関りが無いはずだ」
「でもさっき仲良さそうに話してる人いたよ?」
「おそらくあれは例外だ。偶然どこかで協力関係にあったんだろう。逆にあれが組合型の組織である証拠だ」
なんで?という顔をするノアにすこし自慢げに理由を解説する
「例えばだノア。
あの場にいる人間全員が共に戦う仲間だとしたら、帰ってきた仲間に一人しか反応しないのはおかしいんじゃないか?」
「言われてみれば」
「まぁ全員とは言わなくても一人しか反応しないのは違和感がある。しかも酒飲みが絡んでる奴だけだ」
「ふむふむ」
「ここから導き出される答えはただひとつ!奴らは支給される装備や保証のある売買ルートに惹かれただけの面識のない盗賊たちの集まりだ!つまりお互いの事なんて気にしていなければ知りもしない!」
「ふむふむ!」
「作戦【影】とは!そんな盗賊団の支部にひっそりと侵入し、同業者のフリをして酔ってるやつを中心に情報を聞き出す作戦のことだ!」
「内容は地味なんだね」
「うるせーー!」
そんなこんなでも俺の作戦の成功率は高いはずだ。
まずノアには俺を奴らの死角におろしてもらった。
続いて、キリータの酒場からあの赤い箱を運んできてもらうように指示を出した。
倉庫にぎっしりつまった財宝はまず持って帰れないと思っての指示だ。
こいつらが溜め込んでいる財宝を正規の冒険者組合に持っていけば、いくつかの財宝を取り返してほしいという依頼と一致するはず、そうすりゃもう一攫千金間違いなしだ
「それじゃ頼んだぜノア。持ってこれたらまたこのアジトの上空で待機していてくれ」
「わかった」
「さてと、【影】始動だ!」
気付けば辺りはもうすっかり夜になっていた。
いつにもまして綺麗な満月が出ている。