第十四話 支部
荒野にある大きな谷。
その底に奴らのアジトはあった。
上から見おろすと、ボロ屋根ではあるがそれなりに大きい建物だと確認できる。
馬車は御者だった人間にそのまま引き継ぎ、主犯3人はその中に入っていった。
俺たちは結界を崩さずに、そのまま中まで追跡する。
建物の中は博打をしている奴もいれば、食事をしている奴もいて賑やかな雰囲気だ。
40か50人ほどの人間が確認でき、装備からしても資金は潤沢のようだ。
その中で酒瓶片手に食事をしていた男が三人組に話しかける
「首尾はどうだった〜?」
「楽な仕事だったよ。あの店の爺さんコケて死んじまってよ」
「事故に偽装どころか勝手に事故死してくれたよ」
「プッ。なんだそりゃ、怯える顔を見るのが面白いってのになぁ」
「ケッ、テメェは趣味が悪りぃって自覚しとけよぉ」
「ヘイヘイ、ヘマはしねぇから安心しろ」
そういうと、話しかけた奴は酒を探しに他の食事の席へ歩いていった。三人組はというと、向かっていた方向に体を戻し、また歩き始めた。
建物の最奥に見えている男へ、今回の成果を報告するのだろう。その男は高価な宝石の指輪をはめ、装備品もかなり上質なものを纏っている。
この建物もしくは組織の首領であることは間違いない
「ザルーカさん。今回の盗品です。まずポーションが……」
三人組の一人がその頭領らしき男の前で盗品を確認していく。
残りの二人は奥の倉庫のような部屋に、確認が終わった盗品をを運んでいった。
「確認した。売却出来次第通達する。前回の報奨金はこれだ」
俺とノアはそんな盗賊たちの頭上50センチほどに浮いてその一部始終を確認した。
「エリク、どうする?盗品倉庫以外全部吹き飛ばす?」
「そんな器用な吹き飛ばし方できるのか。ちょっと待ってくれ、こいつらからは他の支部の情報を引き出さないといけない」
「この盗賊団には支部があるの?」
「確定ではないけどおそらくな。装備品などの統率の取れた団はかなり大規模だ。当然、リーダーはカリスマ性に優れた人間であることが多い。だがアイツにはそれがない。盗品から利益の計算なんかするのは事務方の仕事なんだから。だからリーダーは別に居る。盗品の売却ルートがしっかりしていて、かつ盗賊たちから盗品の売却を任せられるなんてよっぽど信用のある組織なんだろう。盗賊版冒険者組合だな」
「エリクは組織とか分からないの?盗賊なんだからスカウトされたりしそうだけど」
「あーそうだな。うん。なんでだろうな。スカウトとかは来なかったなぁ」
「ふーん」
俺の根幹に関わることだが、俺はノアに一つ隠しごとをしている。
とりあえず追及されないなら言わなくてもいいかとも思うが、今後バレる前に言うべきなのだろうか。
俺が盗んだことがある盗品はノアだけだと。
言葉にしてみると口説き文句のようだ。
実際の所、俺は盗賊と呼ばれるよりは狩人寄りの生活をして来ていた。
師匠が盗賊だった手前、盗賊だと自称しては居たが、基本は害獣駆除の依頼で食料と生活費を得ている猟師の状態だった。
俺はそんな過去をまた胸にしまった。