第十二話 発見
二店目は大通りにあった青果店。
続く三店目は精肉店と師匠の酒場の食材を順調に買い揃えていく。
が、四店目の酒屋で酒瓶を五本も買われると重量的に辛くなってくる
「師匠、箱に入れていいか?ノアが後で取り出してくれるからさ」
俺は背負ってる箱を親指で刺した。
酒場に置いたまま外出するのは気が引けるという理由で、側面を俺の背に縄でくくりつけてここまで運んできたが本来の無限収納庫として使うべきではないか。
「やめときな」
「なんで」
「その箱はかなりのお宝だ、お前の説明が正しけりゃな。あんまり人前で出すもんじゃないよ」
「そういうものならちょっと踏ん張るか」
そんな俺を尻目にノアは曲芸師並みのバランス感覚で野菜を積み上げて運んでいる。
「ノアはホントに芸達者だな」
俺がそういうと、ノアは一瞬片手を外して「よっしゃ!」とガッツポーズをする。
当然バランスは崩れるが直ぐに持ち直した。
とても真似出来ない芸当だが、滅茶苦茶目立っているのでその辺は後で注意しておこう。
四店舗目の買い物の後五分ほど歩いて師匠の店、キリータの酒場に帰ってきた。
「さてと酒は私がやっとくから食材を厨房に置いてゆっくりしといてくれ」
「「はーい」」
「さてとノアこれからどうしよう?」
「何だか気が抜けた感じだねエリク」
「そうかなぁ。まぁノアとどうやって旅していくか考えててな。それでちょっとぼんやりしてる」
「あっごめんね、ありがとう」
実際のところこれからどうしよう。俺には二人でやりたい仕事が思い付かなくなっていた。詰まる所俺の仕事がほぼないのである。ノア一人に任せた方がどう考えても安全で合理的だという現実が俺に付きつけられる
「まぁでもノアはアホだからな」
「急にひどい物言いですね」
「でもステータス滅茶苦茶高いだろうしすごいと思うよ!」
「まずアホって言ったことを謝罪しろぉ!」
俺とノアが喧嘩していると師匠が地下から上がってきた
「おーおー仲良いねぇ。そんなお二人にはそろそろノアちゃんの服を取りに行ってもらおうか」
「もうそんな時間か」
「いや、そんなに経ってないけど多分完成してるんじゃないかな。ホラ、あのじーちゃんの時間設定って一時間余裕持たせるじゃん?」
「ホラ。じゃないよ、知らないよ。まぁいいや分かった。ノア行こうか」
「はーい!」
俺とノアは荷物を師匠に預け、魔道具屋に向かった。
道は大通りを挟んで一直線に進めばいい。
覚えている。
「じーさーん。できてる?」
俺は店に足を踏み入れる
「えっ……?」
さっき見た整頓された店の姿は無く、店内は物取りに荒らされていた。
宝石が散乱し、床はポーションでぐちゃぐちゃになっている。
高価なポーションや宝石は軒並み奪い取られ、もう商品として使えそうなものは少ししか残っていない。
俺はすぐにじーさんを探す。
そしてすぐに見付けることは出来た。
じーさんは店の中央でうつぶせに倒れていた。
体は……とても冷たい。