第十話 給料
俺はこれまでの経緯を師匠に話した。
赤い箱から出てきたことや、飛行術や盗賊との戦闘など、何もかも事細かに説明した。
これまでは、ノアの事は俺が一人で何とかしよう。
人に言うべきでは無いと思っていたが、師匠になら話していい。
いや、意見を聞くべきだという考えに切り替えることにした。
師匠の知識や盗賊としての技能もそうだが、観察力・思考力は常人ならざるものがあり、そのことを俺が誰より知っているからだ。
この人になら相談できる。
「ふんふん。箱……うーん……。分かった。対策を立てておくべき事項は何個か浮かんだかな」
「師匠、俺はまずどこからすべきだろう?困難の多そうな旅だ、師匠と話し合って明確な指針や対策を立てておきたい」
「まぁ待てそう焦るな。うしろうしろ」
俺がうしろを振り向くといつの間にか店内はピッカピカになり、ノアがこっちを見ていた。あ、ちょっと怒ってる
「そういうわけだ。」
と言うと師匠はノアに
「ノアちゃんありがとう。お礼にご飯を振舞わせてほしい!」
「やった!」
ノアは無邪気に喜ぶ。
そうだった。
美味しそうな匂いにつられてここに来たんだったな。
師匠と話し込んで、ノアを待たせる形になっていたことを忘れていた
「ノアちゃんがお仕事をしてくれたからその対価としての食事だけど、エリクにもお情けであげよう。あぁ私も丸くなったものだ」
「今日は俺を殴らないしな」
「今日は別だ、ノアちゃんに吹き飛ばされたくないからな」
そういうと師匠は先ほどの肉野菜炒めを俺に出し、ノアには新しく作り直し、出す。
少し冷めてはいたがとても旨い。
横でノアも美味しそうに食べている。
後で果物も出てきた。
なんだか今日の師匠は全体的に優しいな。
久しぶりだから心境の変化もあったりするんだろうけど素直に嬉しい。
まぁノアの存在もあるんだが。
「食事と言うには少なかったかな。今日はまだ買い出し行ってないからねぇ。
ちょっと二人も買い出し手伝ってくれないかい?」
「その流れでなんで仕事が増えるんだよ!」
「まぁいいじゃないか。今日は酒場の二階の部屋で寝ていいからさ。晩の食事も出す。あとノアちゃんに町っていうものを歩いて体感してもらいたい。こっちの方がメインさ、だから三人でって言ったんだ。普通お前一人に任せるだろ」
「なるほど、確かに」
「反論しろよ」
「なるほど、確かに」
「うーん、まぁいいや。行こうか二人とも。まず最初はノアちゃんの服だね」
「私の服?買い出しってキリータさんの店の食材じゃ……」
「いいんだよノアちゃん。さっきの給料の続きさ。私は気前が良いんだ」
そういうと師匠は店の外へ出る。それを俺とノアは追いかける。師匠は大通りの方へ向かっていった。