田舎道
僕は着替えしか入っていないリュックを背負い、
携帯と財布をポケットに入れた
チリンチリン...
あ、窓閉めとかないと
風鈴の音で思い出した僕はさっと窓を閉めた
うるさいだけと思ってたけどたまには役に立つじゃないか
心の中で風鈴に話しかけ
僕は部屋を出た
母さん、行ってくるよ
あら、もう行くの?
昼過ぎには着きたいからね
そうなの、おにぎり握ったんだけど、まだ少し暖かいかも
んー、電車ですぐ食べるよ
そう?お腹壊さないでね
あっちで迷惑かけられないでしょ
うん
じゃあこれ、はいっ
母さんが、おにぎりを俺に手渡した
じゃあ行ってくる
気をつけてね
着いたら一応連絡してね
あー、はいはい
じゃあね
母さんはまだ何か言いたげだったが
僕は振り返らず玄関で靴を履き家を出た
あっつー。
行きたくないなあ。
日差しが容赦無く僕の気持ちを蝕もうとする
いつから鳴き始めたのか、
僕の気持ちとは裏腹に
蝉も元気よく鳴いている
それから駅に着いて
電車に乗り2時間
バスで40分
着いたのは山もある海の近くの田舎だった
い、田舎、、、
予想はしてたけど。
ここから歩いて30分くと白い家がみえてくるらしい
もう疲れてきた
話によると海を見て右手にまっすぐ
一本しかみちがないので迷うこと無く着くらしい
大丈夫なのかな
そう思いながらも歩き出した
10分くらい歩いたかな
誰ともすれ違わない
人がいない
だんだん意識が朦朧としてきた
日射病になりそうだ
俯きながら汗を手で拭う
ふと顔をあげる
げっ、分かれ道あるじゃないか
目の前の道は真っ二つに分かれていた
はあ、電話するか、
携帯に手を伸ばした
大丈夫?
後ろから女の人の声がした
同時に
ふわっとひんやりした風が僕の周りを過ぎていった
振り返ると
白いワンピースを着た高校生くらいの女の子が立っていた
一瞬その子は目丸くして驚いたように見えた
?
そう思ったのもつかの間すぐに悪戯っぽい笑みを浮かべた
迷ったの?
その子はクスクスと笑った
暑さでのイライラもあり少しむっとしたが、
頷いた
自慢じゃないが、僕は女の子が得意ではない
勿論、彼女なんていたこともない
可愛いなと思う女の子や、よく話す女の子はいるが
女の子とゆうものはどうも難しい
ちょっとしたことで怒るし
自分の求める言葉が返ってこないとすぐ機嫌を悪くする
絵が好きでもないのに好きだと言うし
少し画家を覚えれば話を合わせてくる
まあ、これは全部学校でよく話しかけてくる女の子の話だ
暑さで朦朧とする中そんなことをふと思い出していた
女の子は近づき僕の顔を覗き込んだ
しょうがないなあ
私が案内してあげる
着いてきて
すると女の子はスタスタと右の道に向かって歩いた
え?
どこ行くかわかってるの?
僕は追いかけながら声をかけた
大丈夫大丈夫〜
彼女は振り返らずにスキップする
僕はイライラした
間違ってたらどうするんだよ
もうこれ以上無駄な体力は使いたくないんだよ
そう言った途端目の前がぐらっとした
ーーっと、
転びそうになるのをなんとか耐えて
道に腰を下ろした
う、なんか気分わるい
おにぎりのせいかな
日射病かな
汗が額から滴り落ちた
と、思ったらまた
ひんやりした風が僕の周りを横切った
顔をあげると
彼女の顔が目の前にあった
えっ
僕が焦ってうつむこうとすると
彼女が僕の頬を両手でつつみこんだ
ひんやりする
き、気持ちい、、
もう、情けないなあ
そう言って彼女が目を閉じるから
僕も目を閉じた
少しずつ体の熱が吸い取られていくようだった
だんだん回復してくると
頬を両手でつつみこまれたこの状況が恥ずかしくなった
も、もう、大丈夫だから
あ、そう?
彼女はぱっと手を離した
僕は恥ずかしくて
立ち上がった
本当に情けない
初対面の年下の女の子の前でこんな、、、
ちょっとー?
お礼もないのかなあー
彼女は立ち上がりながら笑った
あ、ありがとう
どういたしましてー
すると彼女は僕の手を掴んだ
な、なに?
また倒れちゃ困るでしょ
手、つないでてあげるからいこう
彼女の手は相変わらずひんやりしていた
僕は一瞬、断ろうと思ったが、
情けないがこのひんやりした手に触れていると
気分が良くなるので黙って付いて行った
あ、場所、、、
大丈夫だって!
白い家でしょ?
え?なんで知ってるの?
んー、、
このへんに来る人なんてそういないし
白い家の客人くらいだもん
そうなんだ、、
無言で女の子に手を引かれて僕は歩き始めた
なんか、この感じどっかで、、、
そう感じたときまたひんやりした風が僕のまわりを横切っていった
あ、そういえば、君、手冷たいね
.....
彼女は黙って前を見ている
あ、また僕、女の子に言ってはいけないこと言ったのかな
そう思って俯いた
ねえ、女の子と手つないだことないでしょ?
彼女に僕を見て笑った
ない
あ、でも小さい頃なら、、
そう言うと彼女は嬉しそうな顔をした
だと思った
女の子ってね、冷え性なの
特に末端冷え性が多いからね
足とか手が冷えるんだよ
そうなんだ、、、
僕は今まで彼女がいなかったことを
見透かされているようで恥ずかしくなった
そう思うと女の子と手を繋いでいることが特別に思えてきて、心臓が大きく音を立てた
ば、ばれませんように、、、
歩いていると、白い家が見えてきた
よく見ると人が見える
すると彼女は振り向き、
ぱっと繋いだ手を離した
あの家だよ
もうここからはわかるよね?
あ、うん、
ありがとう
じゃあ、私は帰るね
ああ、ありがとう
すると彼女は来た道を戻って行った
家を見ると人がこっちにむかって手を振っている
手繋いでいるところ人に見られるの嫌だったのかな
彼女いないような僕とだし、、、
あ、名前
名前くらい聞こうと思って振り返ったが、
彼女はもういなかった
歩くの速いなー、、
僕は白い家に向かって歩いて行った