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はじまり

君出会ったのは20歳になって迎えたあの暑い夏だった


専門学生の僕はあと8ヶ月もすれば卒業なのにも関わらず就職先を探すこともなく部屋で携帯を眺めていた


窓を開けて扇風機をつけているせいか窓際で気の早い母さんが勝手に飾った風鈴がチリンチリンと音を立てている


はあ、、、電話するか。


意を決した僕は画面を指で叩いて

携帯を耳にあてた



プルルルルプルルルル



はい



あ、父さん、俺、一眞だけど、



おおどうしたんだ

まぁ大体察しはつくけどな


父さんはそう言って笑った



うん、予想どおりだと思うよ

...俺、父さんと働きたいんだけど




そう言うと思ったよ

もう絵はいいのか?




うんもういいんだ

自分の実力がわかったから




まあそう肩を落とすな

全く関係ない仕事ってわけじゃないんだ




うんわかってる




ただなあ、今年は人を採用る余裕があるかなあ、




そんな、父さんが話を持ってきたんだろ

父さんだって俺と働きたいって言ってたじゃん




そう簡単じゃないんだよ

一度話してみるけどな

まあオーナーはお前も会ったことある人から大丈夫だと思うぞ




オーナー?父さんの仕事のひとなんて知らないよ




まぁ会ったのは小さい頃だったからな

あ、じゃあ仕事だから切るな

勉強しとけよ




わかった

今日は帰ってくるの?




今日は明日の展示会の準備があるから帰れないんだ

母さんにもあとで電話しとくよ

じゃあな




うん、じゃあ。





僕は携帯を置いて部屋の真ん中で仰向けに寝転んでそっと目を閉じた




僕はもう夢を諦めたんだ

もう絵は描かない



才能、センス、そうゆものが必要なのはわかってた



でも、自分にもそういったものがあるような気がしてた



なかった



ただそれだけのことだ



喪失感に包まれた



今の自分にはなにもないな、

いや、最初から何もなかったのかも



電話をかけるときはまだ未練があったが、

急に夢を追いかけていた自分がバカらしくなった



僕は起き上がり窓の外を眺めた



僕の気持ちの変化を無視するように

相変わらず風鈴は音を立てている





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