蜜柑編5
ん・・・ここは?
俺が次に目を覚ましたのは、暗い路地裏。辺りには雨が降っていて、俺はびしょ濡れだった。
「・・・んだよ!」
なにか聞こえる。右のほう?俺は進んで右側を覗き見る。
「やめて・・・ください」
そこには男数人に腕を捕まれた女性が。
「んー?聞こえねえな」
俺はさっきと同じように女性を助ける。そして殴られ、蹴られ。そして意識が遠退いていく。
・・・百回は繰り返しただろうか。いろんな場所で、いろんなシチュエーションで、いろんな・・・殺されかたで。
一回ごとに痛みは消えるものの、痛みは回を重ねるごとに増えていく。最初は殴られる程度だったのが、さっきは銃弾で撃たれた。
そして数えきれない位死んだだろうか。めずらしく草の上に出現して・・・。
「大丈夫ですか!?帝様!・・・はっ、もしや息をしていないのでは?こ、ここは、じ、じ、人口・・・呼吸を・・・でも、そんなの・・・いや、これは神命救助です。やましい気持ちなど断じて御座いません」
目を開けるとそこには目を瞑って唇をつき出した桜花の顔が近くに。・・・いやいやちょっとまて!これは止めさせるべきか!?それがいい選択なのか?このままにしといてもいいんじゃないか?このまま・・・いや、止めとこう。男たるものキスと○○○○は自分から、が俺のポリシーだ。
「桜花。起きてるぞ」
目を開ける桜花。とたんに赤面し、後ろを向いてしまう。
「ん?俺、戻ってきたのか?」
「ホッホッホ。いや、見事。よく同じ行動をとりつづけられたな。・・・よかろう。小僧の思いは伝わった。どれ、蜜柑孃のところに行くかね」
・・・俺、テストクリアしてたのか。
俺は今も後ろを向いている桜花を呼ぶ。
「桜花、馬車出してくれよ」
「ああ、なんという失態を。桜花一生の不覚。なんということを・・・え!?ば、馬車で御座いますね。承知いたしました」
なんだ?何をそんなに慌ててるんだ?
それにしても、嫌な試練だぜ。なにが傷は負わないだよ、痛みは感じるけど傷は残りませんってか?屁理屈にも程があるぜ。
「はっはっは。神なんてそんなもんじゃ。そんなんだと他の神にいつか騙されるぞ」
・・・次から疑ってかかることにしようかな。神様。
「あはは・・・。で、でも無事で良かったです」
急にジラルドが桜花に耳打ちする。
「・・・お主、あの小僧のことじゃが・・・どう思っておる?」
「ど、どう・・・とは?」
「好いておろう」
「・・・はい」
「いわんのか?」
「今はダメです。そう・・・決めました」
「そうか・・・なら何も言わん」
「ん?二人ともなに話してんだ?」
「何、たわいもない世間話じゃ」
・・・そんなこんなで橙玉邸に戻ってきた俺たち。よし、行くぞ!