蜜柑編2
桜花が指差した先にあったのは、オレンジに輝く美しい家・・・もとい豪邸だった。軽く見ただけで部屋が何十と有りそうな大きさ。この距離でも分かるくらい森の中で目立っていた。
「うお・・・でっけえ」
「はい・・・何度見ても立派なお家ですね」
蜜柑様・・・どんな人、いや神様なのだろうか。その姿が間近に迫っていると知ると、興奮が押さえきれない。
「帝様、とてもわくわくしていますね」
「え?」
「見れば分かりますよ。早く会いたくてしょうがないという顔です」
顔に出てたのか。・・・ん?前にも似たような事が・・・?
「帝様・・・?」
「いや、大丈夫だ、桜花。・・・ところで馬車は何処に止めるんだ?」
「着いたら小さくして仕舞っておきます。必要になったら私に声をお掛けください。・・・そろそろですね」
ふう、やっと着いたか。2時間位かかったかな。門にはインターホンの様なものがあったので、早速押す。
「・・・どちら様ですか」
出てきた声は60歳程のしわがれた声。
「十六夜帝と申します。この度は是非、蜜柑様の綺麗なお顔を拝見したいと思いまして」
「お帰りください。・・・連日の求婚で蜜柑様はかなり参ってらっしゃいます」
「だからこそ来たのです。少しでも蜜柑様を癒すことが出来たらと思いまして・・・。駄目でしょうか」
「・・・少し話をしましょう。お入りください」
そういって門が開かれる。中は広く、門から扉まで100メートルはある。
・・・蜜柑様は疲れてるのか。こりゃ今日は諦めるかな。無理して会っても意味はないし・・・。
俺はドアをノックする。直ぐにドアが開き、白髪の老人執事が出てくる。
「着いてきて貰えますかな?」
「はい・・・」
俺と桜花は執事に着いていき、客間に通され座って待つ。
「なあ桜花。あの人は?」
「さ、さあ・・・?蜜柑様の豪邸には沢山の執事が勤務しています故・・・」
見たとこ一番偉そうだったが・・・。
ガチャ。ドアを開けて入ってきたのは先程の老執事。
「遅くなって申し訳御座いません。私、蜜柑様の執事をしております、桑原宗一と申します。以後、お見知りおきを」
そういって対面に座る宗一さん。
「先程も申し上げましたが、十六夜帝と申します」
「帝様の神子でございます。火酒見桜花と申します」
「帝様に桜花様・・・お願いでございます。どうか蜜柑様の心を癒してくれませんか?」
「やはり、心が・・・」
「ええ、連日の求婚者に一人一人対応していた心の優しい蜜柑様は、余りにしつこい一人の求婚者によって、心を病んでしまわれたのです」
「・・・」
「どうか、蜜柑様を助けてやってはくれませんか。この爺、もう長くはありませぬ。せめて元気な蜜柑様を見てから逝きたいのでございます」
「分かりました。とりあえず蜜柑様に会わせていただけますか」
「・・・こちらです」
そういって部屋を出る宗一と俺たち。
蜜柑様がいるという二階へ向かうのであった。