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蜜柑編12

 ジラルドが杖を振り上げた瞬間、俺達四人の体を光が包む。余りの眩しさに目が眩み、目を開けていられない。

 ……ようやく眩しさが収まり、目を開いた俺は辺りを見回して気づいた

 床がない。にも関わらず落ちてもいない。浮遊しているようだが、歩こうと思えばそこにはしっかり、足に応える感触がある。

 幻想的な靄に包まれた空間に俺達四人は転移していた。

 ワープの影響だろうか、少しクラクラして頭が痛い。

「さて、全員居るな? 神力の説明をするぞい!」

 俺を含めた三人が頷き、和室の位置関係のまま説明が始まる。

「神力、それは天界に生まれた誰もが等しく持つ神の力。個人差はあるが誰しもが習得、使用できる。弧才能と修行を行えば赤子であっても使用できるのじゃ。今回の事件にはその神力が関わっていると見える。神力は良くも悪くも使用者の想いに左右される力。悪の心を持つものは必然的に悪い力になってしまうじゃろう」

 そこまで説明されたところで手を上げて質問する。

「んと、今回の心への閉じ込めっていうのがその神力って力のせいなんだな?」

「そうじゃ。そして相手に作用する形の神力は解除条件を満たす、もしくは使用者に解除させるしか解決する方法はない。今回は条件がわからんから自ずと使用者に解除させる形になるな」

 やはり無理やり解除させるしかないのか……。

「使用者は帝国の第一王子だそうですね」

 宗一さんが口を開く。

「世界規模で見ればそこまでの大国とも言えませんが……国は国です。そう簡単にも行かないでしょうね。しかもあの王子のことです。恐らく自分の罪は認めないでしょう、正当な手段での解決は出来ない、と思ったほうがよさそうですな」

「そうじゃな。原始的な手段を用いることになるじゃろう……。しかし、うーむ……」

 ジラルドが唸りこんでしまう。やはり無謀なことなのだろう。国に喧嘩を売るとなればただ事では済まない。

 桜花もうつむいて考え事をしている。……無意識なのだろうか? 指を顎に当てている仕草に小動物のような雰囲気を感じる。

 おもわず見惚れてしまっていると、桜花はこちらに気づいたようで、驚いたように喋りだした。

「ど、どうかなされましたか?」

「いや……な、何か思いついたかと思って」

 同様を悟らせないようにしたが、素っ気無くなってしまった気もする。

「……このまま考えているよりも、見に行った方がいいかもしれません」

 桜花にしてはいつになく強気な口調だ。

「見に行くって、その帝国をか?」

「はい。どんな作戦を行うにしても情報収集は大事です。聞き込みや城の立地を調べたり、やることは沢山あります」

「確かに、何か思いつくかもしれないしな。ジラルド、それでいいか?」

「うむ……そうじゃな。ならば明日出発しよう。今日はもう遅い」

 明日か。あれ、そういえば……。

「なあ桜花? 天界の時間の流れってどうなってるんだ?」

「特別なことがない限りは人間の世界と変わりませんよ。時間の単位も暦も、帝さまが元居た世界のものと変わりありません」

「なら良かった。現在時刻は午後の九時ってとこだな。体内時計が狂う心配もなし。よし、じゃあ明日出発するって事で今日は解散か」


 俺達は再度ジラルドのワープを経て、橙玉邸の和室に戻ってきた。

 俺と桜花は一時的に一階の空き室を使わせてもらうことになり、案内された部屋に入る。室内は旅館の一室を思わせる和室。さっきまでの部屋のような広さはないが、人一人が生活する分には十分すぎるほどの広さだ。

 荷物と呼べるほどのものもないので、特にすることの無かった俺はすぐに寝てしまった、 

 翌日の朝。どうやら朝に弱いらしい俺は桜花に起こされ、橙玉邸の前に連れてこられる。

「遅いぞ、帝」

「老人と違って朝に弱いんだよ俺は……」

「全く、朝から口だけは元気じゃな。ほれ出発するぞ桜花」

 桜花は懐からキューブを取り出すと、ここに来るときに使った馬車を出現させる。

 四人全員が乗り込むと、ジラルドが頭に響くほどの声を出す。

「目標は北東のフィル帝国。出発じゃ!」

 

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