登校のはじまり
「遥、食べてる間でいいから何か話してよ。つまらない、ひま~。」
「こっちは暇じゃないんだけどなぁ・・・」
「いーじゃん。可愛い妹の頼みぐらい聞いてくれたって罰は当たらない。ううん、むしろご利益があるね!」
たぶんだけど・・・小さくそう言うと。
「ふぅ、分かったよ。可愛い妹様の仰せのままに。それじゃ占いでもしようか。」
占い。遥のそれはもう気持ち悪いくらいに当たる。
天気予報よりも正確に天気を当てたり、車に気を付けるように言った日には、水溜まりを通った車に水をかけられ、新たな出会いがあると言った日には、席替えで友だちが増え、足元に特に気を付けるように言った日には、足の小指をドアにぶつけ、階段を昇ると蹴躓き顔から転び、降りると踏み外し転がり落ちる。
…もう占っているんじゃなくて呪ってない?と言いたくなる結果なのだ。
「よし来い!」
気合いを入れて言うと。
「それじゃあ・・・ あなたは今分かれ道に立っています。看板にはそれぞれこう書いてあります。
『ミギ、幸福アリ。サレド続カズ、サラナル不幸ニ出会アウダロウ。』
『ヒダリ、幸福ナク不幸ナクタイラカナル道ナリ。』
さぁ、どちらの道を選ぶ?」
右は良いことの後にそれ以上の悪いことが起きて、左は良いことも悪いこともないと。うーん・・・
「右の道。」
「不幸になるのが判っているのに?」
「だって、その後にもっと幸せになれば良いじゃん。」
それを聞くと遥は悲しそうな声でただ、そうか。と呟いた。
「それで結果は?」
少し怖いけれど聞いてみる。
「大丈夫。このままで、そのままで、大丈夫。
あ、ただ頑張ってね?」
そう言って後ろを指さした。
「え?」
恐る恐る指さす方を見ると時計が・・・やばっ、このままだと初日から遅刻!?
「い、行ってきます!」
「待って待って、これ持っていきな。」
そう言って可愛らしい巾着を投げてくる。
「何これ?」
「落ち着いたら見な。行ってらっしゃい。」
「よく分からないけど分かった!今度こそ、行ってきます。」
そう言いながら玄関を飛び出していく。