相談のはじまり
「ははー。なるほどなるほど。これから一緒に殴りに行く?」
「いやいや、そんな、家来る?みたいな感じで言われても・・・。覚えていなくてもしょうがないよ」
少し悪そうな笑顔でいきなり物騒なことを言う。
小悪党っていうのはこの子のためにあるのではと思ってしまった。
最近の若者・・・怖い
「感情を理性で制するほどオトナじゃないので」
中学生なので!と胸を張る鈴ちゃん。
思わずほんわかしてしまった。
やっぱり小悪魔かもしれない・・・
「まぁ、それは置いといて。3つほど気になることがあるんだけど、これは聞いてもいいのかな?」
「ん、なに?駄目なら黙秘するからなんでも聞いて」
黙秘すると言われて質問するのは複雑だけど、と前置きをしてコホンと咳払いをすると、ピッと人差し指を立てた。
「クエスチョン1デデン!タツ兄ぃって1人で帰ってきたんだよね?」
「え?・・・たぶん。おじさんもおばさんもいないって」
「ふむ~?・・・だけど女の人はいたと。あと殴らないっと」
「なんでそんなに殴りたがるの」
こんなに活発(?)な子だったっけ?
「この間やってたテレビの影響かな『どんな事件もボコって解決!脳筋デカ』っていうやつだけど、知らない?」
「し、知らない・・・」
「本能で人の嘘を見抜いて殴るから最初は問題になるんだけど、裏表なく正面からぶつかって『悪いことは悪い』って言って人を改心させていくんだよ!っとこの話は後でいっか」
少し気になるかも
鈴ちゃんは、むむむっと少し考えるとまたピッと人差し指を立てて、さらに中指も立ててピースに変えた。
「クエスチョン2デデデン!タツ兄ぃのこと、どう思ってる?どうしたい?」
「それは・・・その・・・ほら。まだあの女の人のこととか分からないし、それに約束だって覚えてなかったし、な、なにより久しぶりに会ってもあんな感じだから・・・」
「はぁー・・・そういうことを聞いてるんじゃないの。さっきも言わなかったっけ感情と理性は違うって」
「えっ」
「どうなるかをじゃなくてどうなりたいかを聞いたの!理由でも理屈でもなくて心はどう思ってるの?」
「・・・」
「それじゃぁもらっちゃうよ?いいの?」
「え!?」
「やっぱり嫌なんじゃん。ねぇ、お姉ちゃん。駄目な理由を考えてる時点で、駄目なんかじゃないんだよ」
「・・・うん。まだはっきりとは言えないけど、とられたくない、かな」
あれ?なんかものすごく生温かい目で見られてない?
気のせいだよね?そうに決まってる!
なんてことを考えてるとまた手を、じゃなくて力が抜けたように手首だけで小さく挙手をした。
「質問その3」
「あれ?デデン!っていうのはもうやらないの?」
「えーっと、これが聞いてもいいか判らなかったんだけど」
「あ、無視なんだ・・・」
でもさっきの質問より聞きにくいことってなんだろう。
自分で言うのもアレだけど結構言いにくい話だったと思うんだけど。
「ソレ、なに?」
鈴ちゃんの指差す先には、今朝、遥から渡された巾着があった。
「え?あぁこれ?可愛いでしょ」
「か、かわいぃ?」
おや?今度は少し顔が引きつっている?
可愛いのに。この外れかかった目玉とか・・・誰も理解してくれないんだよね。
「学校行く前に遥に渡されたの。落ち着いたら1人で見るようにって。あ、遥は」
「知ってるよ。この辺りではお姉ちゃん家はちょっとした有名人だから!でも、遥さんが・・・。ふーん。中身なんだろ?開けてみよ!」
いつの間にか我が家が有名になっていたらしい事実に気を取られたせいで、あっと思った時には巾着がもう鈴ちゃんの手の中にあった。
そして、巾着から出てきたのは1枚の写真だった。
「か、可愛ぃ・・・これっていつ?」
「えっと確かクロが引っ越しする時に撮ったやつかな。撮ったのは覚えている・・・けど写真初めて見た!なんでこれを遥が持ってたの?というかなんで今なの!」
「あの人もけっこう不思議系な人だから。疑問に思ったら負けだよきっと。それよりもっと見せて!この頃はお姉ちゃんの方が背が高かったんですね」
今のクロに会ってないのにそんな言い方をされると、遠まわしに小さいと言われた気がする。まぁ、事実なんだけど。
「タツ兄ぃなんて背伸びしても届いてないし」
その一言であの頃の記憶が鮮明に甦ってきた。あの夢で見た約束と、その続きまで。
「ごめん!ちょっと行くところができちゃった!またね!」
言わないといけないことも言えないことも分かった。
だからこそ行かないと。
鞄を手に駆け出そうとした時、後ろから声が掛かった。
「あ、行く前にもう1つだけいい?」
「急いでいるから、簡単なのならね」
「なんでタツ兄ぃのこと『クロ』って呼ぶの?クロって名字だよね、普通名前から『タツ』になると思うんだけど」
「え?それは・・・上手く思い出せないけど初めは確かに『タツ』って呼んでたんだけど、クロが親戚から何か聞いて『タツ』がダメとかって話になって、結局クロて落ち着いたーんだったかな」
肝心なところは思いだせないけど、昔のことを思い出したばかりだったからか他のところは自信を持って言える。
「それじゃあ、私からも1つ聞いていいかな?」
「どんとこい!」
「さっきの、どこまで本気だったの?『もらっていい?』なんて」
「それはー、秘密。行かなくていいの?」
スマホの時計を見せながら促してくる。
「い、行くけど。なんかずるい!次は絶対聞くからね」
「はいはい。またねー」
そして私はまた、まだ履きなれない靴で走りだした。
「まだ5時前かー。トラのこととかは後から来るもう一人に聞けばいっか」
本当は今回で一区切りのはずだったのに・・・
ただそこまでやると絶対に間に合わないんです!!
『脳筋デカ』は予定になかったんです
ただ、考えたら面白くなちゃって、別の物語に使うことにしました。
他にも話の流れで入れられなくて没になった会話とかもあるんですよ!
乞うご期待!
(たぶん出来ないと思うのでちょっと考えた設定とか活動報告に載せて終わると思います。ネタは思いつくのに表現力と文章力があぁぁ。。....)
あれ?おかしいな 予定にないことやって予定が終わらない...