再会と謎の組織
スコルビアで再会する二人の人物。
リクトに迫る脅威。そして無慈悲に放たれるリクトの魔法。
確か、あの時自分は魔物に襲われていた。
複数の魔物に囲まれていて、自分一人だけでは対処しきれなかった。
元を正せば自分が悪いのだ。逃げ出してしまったから。
信じていた人たちに裏切られ、居場所を失った。
皆が自分の命を狙って攻撃をしてきた。
怖かった。だから逃げた。
妹を残して。
魔物が自分に襲い掛かってくる瞬間、頭の中を走馬灯のように駆け抜ける記憶の数々。
もうだめだ。そう諦めた時、彼は現れた。
次々と魔物を蹴散らし、彼は最後に自分を見てこう言った。
「・・・大丈夫か」
「・・・リア」
時刻は夜。昼間リアと別れた後リクトは宿に向かって部屋を取った。なぜここにいるのかとかこの街についてとかいろいろと聞きたいことはあったが聞く事を我慢して別れたのだった。
「それでも少しは話を聞き出すべきだったのかもしれないな」
そう呟いた後、部屋の扉が軽くノックされた。この街に知り合いが入るとすれば昼間にあったリアくらいしかいないし、リアの性格を考えると此処には来ないとわかるのでおそらくは此処の従業員だろう。そう思ってリクトは扉を開けると、そこにはやはり此処の従業員のエプロンをつけた女性が立っていた。
「あの、お客様から渡してもらうようにと頼まれました。それで、中を見ればわかると申されていて・・・」
遠慮がちに差し出された一通の手紙。
「ありがとうございます」
リクトは手紙を受取り、扉を閉めてから手紙の中身を見る。
「・・・『窓を開けて待っていろ』・・・? ってことはまさか・・・・・・」
紙にはその一文しか書かれていなかったがリクトの記憶の中にはこんな手紙を送る人は一人しか思いつかなかった。
手紙を握ったまま窓に走り寄ってバンっと勢い良く窓を開ける。その瞬間、強い風が吹き込みリクトは思わず腕を目の前で交差して目を閉じた。一拍の間があってから自分の後ろに人の気配が生まれる。
リクトは振り向いてからその人の姿を見て顔を輝かせた。
「ディルバさん!!」
ディルバ・レストバース。リクトに生きるための力を与えてくれた人物。そして命の恩人だ。恩人といえばリアもそうだが、ディルバにはリアとは比べ物にならないほど助けてもらっている。
「やっと外に出れたようだな」
抑揚のない淡々とした口調。知り合ってすぐの時は怖いと思っていたのだが慣れてしまえば怖くもなんともない。・・・怒られなければ。
「洗礼の旅には各地にある神を祀っている場所七箇所を回る事以外に決まりはない」
「・・・?」
なぜこんな事を言うのだろうとリクトが首をかしげると、ディルバはリクトの目を見て口を開いた。
「やつが動き出した」
「っ!」
心臓を直接握られた様な衝撃を受け、リクトはよろよろと数歩後ろに下がった。
やつとは、リクトの人生を狂わせた元凶といえる人物だ。リクトに取っては始まりの人物とも言える。
「ディノアード・・・」
俯いたリクトの口からその人物の名前がこぼれ出る。何度殺したいと思ったことか。あいつのせいでリクトは居場所を失った。いや、居場所なんてもともとなかったのかもしれないが。
「なんで・・・」
ぐっとこぶしを握りこんだリクトの肩をディルバは軽く叩く。
「旅には俺も同行する」
一緒に行動するようになったリクトとディルバ。いってしまえば昔と同じような状態だとも言える。ディルバに助けてもらった後はずっとディルバと一緒にいて武器の使い方や魔法をたくさん教えてもらった。魔法は元々は親に教えてもらったとネリウムたちには言ったが決して嘘ではない。確かに親に魔法を教えてもらったがそれは基礎部分を教えてもらったに過ぎない。ディルバには簡単な魔法から高度な魔法までいろいろと教えてもらったのだ。
「オマエ、『ミコ』ダナ? 『ミコ』、コロス」
「・・・なっ」
考え事をしていたせいで反応が遅れ、いきなり現れた男に腕を掴まれた。男の反対の手には剣が握られている。
ここは裏路地にある小さな空き地で、ディルバは情報を集めてくると言ってどこかに行っている。場所が場所なのでここで物音がしても人はこない。つまり、奇襲にはもってこいの場所だ。
「このっ」
リクトは掴まれていない右手で剣を抜き、男が振り下ろしてくる剣を受け止めた。体制が悪いせいでうまく体に力が入らず、力負けしてしまいそうになる。
「ふっ飛べ!」
下級魔法ファイヤーボール。動きがとれない状態からリクトは相手の腹部にめがけて火の玉を放つ。男の腹部に直撃したそれは、爆発を起こし、リクトもろとも吹き飛ばす。しかし、吹き飛ばす目的だけに使われた今回の魔法は火力自体が低く、ダメージは殆ど無い。
「何者だ」
「コロス。ワレ『ミコ』コロス」
話が通じない。リクトは舌打ちをして男に向けて走りだし、男も体制をたて直してから走り出す。攻撃範囲に入った瞬間男が剣を振り下ろす。単調な動きだ。
リクトは男の剣を自分の剣で受け流し、そのままの流れで右切り上げ。
「ッ!?」
剣を流されたことでバランスを崩した男の右腰から左肩めがけて切り上げられ、そこからパッと紅い血が舞った。
「雑魚が・・・」
倒れた男を見下ろしながらリクトは低く呟く。男の血で汚れた剣を手に持ったまま男を見下ろす。リクトの青い瞳が氷を思わせる。
「・・・フ、フハハッ!ワレタオシテモマダ『ナカマ』クル!!」
「言いたいことはそれだけか?」
男が傷口を抑えながらよろよろと立ち上がるがリクトは動かない。
「アノカタイルカギリオマエゼッタイニシヌ!!」
男の言葉は聞き取りにくいがなんとか言いたいことは理解できた。自分を狙っているのと仲間がいること。あの方と言っているので組織かなにかがあるのだろう。自分が巫女であることを知っているので警戒し無くてはならない。
「目障りだ」
リクトは目を細め、ある魔法を放った。
それは空から男をめがけて真っすぐ落ちてくる雷。中級魔法、サンダーボルト。一瞬で男を黒焦げにしたリクトは。剣に付着していた血を振り払って鞘に終う。
「・・・面倒なことになりそうだ」
リクトを襲ってきた男は一体何者なのか。
突如現れるディノアード。それに対しリクトとディルバはどう反応するのか。
荒れる旅はいったいどうなるのか?
次話:赤い髪と大きな剣
すみません。今回話しがグダグダになってしまいました。ごめんなさい。