ふぅ、下校中だっての
「……」
気まずい。
美雪を一緒に帰ろうと誘ったのだが、道中は二人共黙っていた。
……どうしよう? 何か話題を振った方がいいのか?
「……ねえ」
「ん?」
沈黙に困っていると、美雪の方から話し掛けてくれた。
「賢人は噂の正義の味方に興味ないみたいだけど、信じてないの?」
美雪も沈黙に困っていたんだろうか。かなり適当な話題だった。
「まあ、実際に見たわけだし、いるってことは信じてるけどな」
俺は美雪の質問にやや苦笑して答える。
「居桐屋くんみたいな熱狂的ファンじゃないけど、いるってことは信じてる?」
「まあそんな感じだな。ファンがいるとは全然思いもしなかったが」
苦笑したままで言う。正体を知ったらがっかりするだろうしな。
「美雪はどうなんだ?」
「えっ?」
聞き返すときょとんとしていた。
「正義の味方を信じるかどうか」
「あ、ああ、そういうことね。信じてるけど、そこまでファンでもないわ」
少し戸惑ったように言ったが、あまりファンじゃないらしい。……美雪にファンじゃないって言われてちょっとがっかりするんだが。
「良かった。俺だけファンじゃないのかと思ったぜ」
やや大げさに言う。ってか、自分のファンとかナルシストにも程がある。
「結構人気あって、女子からの人気が凄い高いわよ」
……って、宏介と同じこと言ってんじゃん。
「よく知ってるな」
「え……あ、まあね。ファンクラブに入ってればわかるらしいけど。私はクラスの娘から聞いたわ」
そんなに広がってんのか。もう俺の正体がバレんのも時間の問題じゃね?
「正体がバレんのも時間の問題かねぇ」
当事者の癖にのんびりと言う。
「私は、正義の味方自体には興味ないけど、正体には興味あるわよ」
へ?
「な、何ででしょうか?」
かなり意外な発言だったので、敬語で聞いてしまった。
「……何で敬語なのよ」
美雪は呆れたように言って、
「別に、自分だけで戦おうとする一匹狼さんは誰か、っていうだけのことよ」
少し笑って言う。
「……それは、今日一人でアレに突っ込んだ俺に言ってんのか?」
結局は俺なんだが。
「まあ、それは自分で考えなさい」
……美雪は俺に怒ってるらしい。二つの意味で。
「おい」
「「っ!?」」
急に声を掛けられて二人共ビクッとなる。
「てめえじゃねえよ。そっちの姉ちゃんの方だ」
……話し掛けてきたのは二十代くらいの男。まあ、今の一言で何が目的かはわかる。……わからないでもない。俺も一応男だしな、うん。
「……行くわよ」
美雪も気付いたようで、眉を寄せて不機嫌に男を無視した。
「待てよ。俺に逆らうとどうなるかわかんねえぞ?」
「あん? てめえごときなら余裕だ」
若干イラッとしたのでケンカは買う。
「へぇ? これでもかよ?」
男がニヤリとして言うと、俺達を囲むように男達が現れた。
「っ!?」
しかも、全員あのアメを持っている。
「……そのアメ、どうやって手にいれやがった?」
最初に声を掛けてきた男を鋭く睨んで言う。
「どうやってってな。貰ったんだよ。ある人からなぁ」
アメを配ってるヤツがいるのは知っていたが、何で俺の行く先々にアメ配ってんだよ。バカじゃねえの?
「これでも逆らうのか?」
「……ったりめぇだ。この程度でビビってんだったら話になんねえっての」
冷や汗を浮かべて言う。
「じゃあ、ヤるぞ」
男が言って、全員がアメを食べる。
「あ、ああ……。うめぇ。これが力の味ってヤツか。力が、沸き上がってくるぜ!」
男が言った次の瞬間、男達は光に包まれ、テネスへと変化を遂げる。
「……くそっ」
忌々しげに吐き捨てる。
「アア。イイ感ジダァ。……野郎共、女ハ生ケ捕リニ、男ハ後悔サセテ殺セ」
『イエス』
骸骨とドラゴンを足して二で割ったようなリーダー格のヤツが言って、その他のヤツが答える。
……自分を保ってんのかよ。有り得ねえ……!
「っ!」
美雪が息を呑むのが聞こえたが、変身前の俺に出来たことは、精々一撃で死なないことだった。
「がっ……!」
何体ものテネスによって壁に打ち付けられた。
「賢人!」
浅井が叫んでるのが聞こえたが、返事は出来なかった。
「男ヲ後悔サセルニハ、女ヲココデヤリマクレバイイダロウ」
「っ!」
このくそ野郎が!
「イイ案ダナ。ジャア早速……」
ちっ! 正体がバレてもいいから、さっさと変身しときゃ良かった。美雪一人守れねえんだったら、正義の味方の意味がねえよ!
「い、いや!」
浅井がもがいて逃げようとするが、テネスからは逃げられない。
「ーー変身」
ボロボロで倒れているが、手さえ動けば変身ぐらい出来る。
「よっと。さて、これからが本当の勝負だぜ?」
軽く言って立ち上がり、テネスらを睨む。
「っ!? ……賢人が正義の味方……?」
さすがに浅井は驚いていた。
「……正義ノ味方ナンザ、ヒネリ潰セェ!!」
リーダー格のテネスが言って、大半のテネスが襲ってくる。
「雑魚は引っ込んでな」
言って、一枚のカードを取り出す。
「トルネード・アクセル」
ガントレットにそれを差し込み、ガントレットは風を纏う。
「はっ!」
一振り。それだけで雑魚い大半のテネスは小さな竜巻に巻き込まれて、倒された。
「ナッ!?」
「……どうした? さっきまでの余裕は! 俺は今イラッとしてんだよ!」
さっさと倒すぜ。
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