はい、決戦は中盤です
「会長って波動も撃てんの?」
「ハイスペックな会長の、拡張版だ」
拡張されてんじゃん。まあ、かなりの実力は持ってるんだろうけどな。
「チート並みの実力じゃんかよ」
俺は呆れて言う。
「強いからチートじゃないけどな」
そうかよ。
「じゃ、次の勝負だな」
おそらく、浅井と俺(正義の味方)が戦うんだろう。
正義の味方って、どんな技使うんだろうな。
「やっぱりか」
俺は次の勝負の画面になって呟いた。
「ん?」
「いや。やっぱ正義の味方使うんだなぁ、と思って」
俺の呟きが聞こえたらしい宏介に言う。
「当たり前だろ」
少し嬉しそうに言う。
「そっか」
それは何より。
「じゃあ、始めるぞ」
「はいよ」
第三バトルが始まった。
「ファイナルアタック!」
宏介が言って、弱攻撃だか強攻撃だか知らないが、攻撃してくる。
「おっ?」
ジャンプして、必殺技のような蹴りを放ってくる。
「へ?」
喰らったら、一撃でやられた。思わず間の抜けた声を出してしまう。
「俺の勝ち」
ニッと笑って宣言する。
「……正義の味方、強すぎねえ?」
俺は本人であるにも関わらず、呆然として言った。
『……同意』
クラスメイトも頷いた。
「因みに、弱攻撃だ」
もうチートじゃん。
「まあ、生身の人間と正義の味方が戦ったらこうなるだろうけどさ」
俺は苦笑して言う。
「そうなのか? 実際に見てないからわからんけど」
テネスを倒せるのに生身の人間に負けるってことはないだろうしな。
「ま、普通に強いと思うぞ」
少し曖昧に答える。
「そっか。まあ、この勝負は俺の勝ちだよな?」
頷いて、確認してくる。
「ああ。次は、しりとりだよな」
頷いて、さらに確認する。
「……本当に得意なのか?」
宏介が疑わしげに聞いてくる。
「もちろん。俺の趣味は百科事典読みだぜ?」
ニヤッと笑って言う。
「嘘つけ。スポーツ系だろ?」
少し睨むようにして言う。まあ、運動は得意だけど。
「ま、意外な才能ってのがあるんじゃねえの?」
俺も自信はないけど。
「知らん」
不機嫌だなぁ。
「じゃあ、俺からいくぜ? ーーリンゴ」
「ゴリラ」
「ラッパ」
ーーと、定番の順でしりとりをしていく。
ー三十分後ー
「イオン結晶」
「う? うらめしや?」
宏介が段々追い詰められていく。
「それは駄目だろ」
「えっ? じゃあ、瓜?」
よく出てきたな、そんなの。
「リトマス紙」
俺も、しりとりやると色々出てくるんだけどな。俺もびっくりするし。
「し、し?」
「降参してもいいんだぞ」
「しは……ない。俺の負けだ……」
落ち込んだ様子で言う。
「これで一勝一敗か。次はUFOキャッチャーだ」
俺は言って、暗幕の掛けてあるのを見る。
「だな。オープン!」
宏介の一声で暗幕が取られる。
「……なるほど」
普通にUFOキャッチャーが置いてあった。
巨大なぬいぐるみを取るらしい。
「ルールは、五回の内の何回で取れるか。少ない方が勝ち」
「両方が取れなかった場合は?」
「引き分け、だな」
「オッケー。二台あるってことは、二人同時にやるんだな?」
「ああ。一応同じようにしてある」
公平だな。
「んじゃ、やるか」
これは宏介に勝てないだろうけど。
「始め!」
審判の浅井が言う。
「……」
まずはどこまで下がるか調べるか。掴めるか試して。
「ん?」
結構アームの力が強いな。一発でいけるか?
「よし」
チャレンジ精神は忘れずに。
「あっ」
ミスった。
「もう俺の負けかよ……」
宏介の方を見ずに言う。まあ、宏介ならこれくらい一発で取れるだろう。
「よしっ。取った」
宏介の方からそう聞こえた。
「……やっぱな」
俺もやっと宏介の方を見て、確認する。見事、一回目で取っていた。
「この勝負も宏介の勝ちか。俺は後がなくなったな」
俺は肩を竦めて言った。
「次は靴飛ばしだろ? だったら勝てるんじゃねえの?」
自分が勝っているせいか、余裕そうに言う。
「ルールは一発勝負な。より遠くまで飛ばした方の勝ち」
シンプルだろぉ?
「やっぱ、身体能力が関わってくる競技か。俺は負けそうだな」
眉をひそめて言う。いいじゃん。勝ってんだからさ。
「んじゃ、やるか。宏介からいいぜ」
俺は後攻を選んで宏介を先にする。
「……んじゃ、やるか」
宏介は引いてあるラインとこに立ち、真剣な面持ちで言う。
「……」
数歩下がり、助走をつけて足を思いっきり振る。ーーが。
「おわっ!」
転けた。
『……』
静寂が訪れる……。靴は三分の二ぐらい履くのが常識だろうに。そのままでやるか、普通?
「……やり直せ」
「……はい」
さすがに反省したのか、落ち込んで言う。
「ちゃんとやれよな」
俺は呆れて言う。
「わかってる」
今度はちゃんと踵を踏んで、靴を飛ばした。
「三十三メートル!」
記録係のヤツが言う。へぇ。結構やるじゃん。
「次は俺だな」
俺はラインとこに立って言う。
「勝てるかどうか微妙過ぎて喜べないんだが」
宏介がボソボソと呟いていた。
「ま、先攻だからな。しゃーねえって」
俺は笑って言う。
「じゃ、どうぞ」
宏介に言われて、数歩の助走をつけて足を思いっきり振った。もちろん、踵は踏んである。
俺の靴は小さく放物線を描いて直線的に飛んでいく。
「……五十メートル!」
よしっ。
「おいおい。俺、負けたじゃんかよ」
宏介が呆れたように言う。
「当たり前だ。俺が選んだ競技だぞ」
俺はニヤリ、と笑って言った。
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では、二週間後にまたお会いしましょう。