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んじゃ、尋常に勝負しますか

え~っと、まあ読んでみて下さい。


「ア……ウア」


 敵は腹部を壊されつつも、立って俺を睨んでいた。


「……やるな」


 今ので倒せるとは思わなかったが、ダメージは負わせたようだ。


 必殺技で止めをさすにはいいダメージだ。正義の味方には必殺技がつきものだろう?


「メテオ・アクセル!」


 カードを再び変える。今度は普通の、黒いカードではなく、金色のいかにも必殺技のカードっぽいヤツを入れる。


 すると、ガントレットが金色に光った。


『アクセル・レボリューション』


 男の声のような機械音が聞こえる。ガントレットの必殺技は五個ぐらいで、敵に止めをさすにはいい威力だ。


「だらぁ!」


 十メートルは先にいるテネスを殴る。


 ガントレットから金色の光球が放たれる。それも、テネス全体を覆うほどの大きさで。


 そういえば、もう一体いた気がする。すっかり忘れていたが、大丈夫なんだろうか?


 ーーと思っていたら、俺の放った光球の目の前に飛び出して、堕天使型のテネスを庇った。


「……」


 仲間思いのいいテネスじゃん。


「アァ!」


 撃ち終わって、チャンスと見たのか突っ込んでくる。


「残念でした。まだ撃ち終わってないから」


 俺はニヤッと笑ってガントレットを構える。


 そして、スピード・アクセルよりも速く拳を撃ち出す。その分、巨大な光球が放たれる。


「流星群ってな」


 テネスがなすすべもなく倒れるのを見届けて、軽く言う。


 そして、テネスがクラスメイトに戻った。


「……ふぅ。この、堕天使型のテネスになったヤツだけは覚えておかないとな」


 強かったのはこいつの素質だろうし。


「ん~。どうやって運ぼうか?」


 俺一人で五人運ぶのはきつい。


「まあ、目を覚ますまで待つか」


 運ぶのは無理だろうし。


「宏介にメールだけはしとくか」


 俺が無事だって教えてやんないと。やけにシリアスな約束しちまったし。


 ◇


「やっと帰った」


 俺はぐったりして言った。


「羽白川、助かったよ」


 俺が助けた五人の内一人が言う。


「別にいいって。しかも、俺が助けたんじゃねえし」


 俺は笑って返す。


 一応、俺が時間を稼いでる時に正義の味方が来て、敵を倒したってことにした。目撃者はいないし、俺が正義の味方だってバレることはないだろう。


「……色々聞かれなきゃいいんだけどな」


「ん?」


「いや、何でもない」


 正義の味方のことを聞かれても、曖昧に答えよう。イケメンかどうかは、普通って答えるしかねえし。ってか、顔見えないんだから気にしなくていいのか。


「さて。教室戻ったら帰る準備しなきゃな」


 化け物に襲われるという恐怖体験をしたのにも関わらず、軽く言う。まあ、元人間なんだからしゃーない。元人間なら襲われても平気だろ。化け物とは思えないんだから。


 ◇


「賢人!」


 教室に入った瞬間、宏介が俺の名を呼んだ。


「ん?」


 呑気に返事する。


「お前な、何で写真撮ってこなかったんだよ!」


「……」


 そっちか。俺とあんな約束しといて正義の味方情報をよこせと。


「それどころじゃなかったっての」


 しかも自分で自分を撮ってどうすんだよ。ナルシストか。


「バカ! 写真撮ってこないなんてふざけてんのか!」


 宏介が珍しくマジギレしていた。


「あん? 命の危機に遭遇して写真撮ってこいなんて、宏介の方こそふざけてんじゃねえのか?」


 そこまで言われると若干イラッとくる。


「記者の人はちゃんと写真撮ってたじゃねえかよ!」


「記者のプライドと習性だろうが! 俺はスクープを追うようなヤツじゃねえんだよ!」


 俺もマジでキレ始めてんな。もっと冷静になんねえと。


「記者を侮辱すんな!」


「侮辱なんてしてねえだろうが!」


 もう完全に怒鳴り合いになっていた。クラスメイト及び担任は、一歩引いて見てるだけだったが。


「侮辱だろ! 記者がスクープを追って何が悪いんだよ!」


「悪いなんて言ってねえよ! ただ、俺は記者じゃねえんだから写真撮れなくてもいいだろっつってんの!」


「じゃあ、顔見てねえのかよ!」


「見てねえよ! 仮面被っててわかんねえっての!」


「何だよ! 使えねえな!」


「あ? じゃあお前が助けに行って素顔を聞けばよかっただろ!」


「……この! いいよ! そこまで言うんなら、勝負でどっちが正しいか決めようぜ!」


「……いいだろう。泣いて謝りたくなるような敗北を味あわせてやる!」


「それはこっちのセリフだ!」


 もうここまで来たら引き下がれない。


 こうして、久し振りにケンカした俺と宏介の、変則バトルが始まった。


 ◇


「一回戦はゲームだ!」


 何でだよ。


「何回勝負にすんだ?」


 一回戦と言われてもな。


「五回か三回」


 まあ、そうだよな。


「一人二つの得意種目を指定して、最後に平等な勝負をすればいいんじゃねえ?」


 俺は宏介に提案する。


「じゃあ、それでやるぞ」


 宏介が珍しくやる気満々だった。俺もやる気出さないとな。


「やるからには手加減しないぜ」


 俺はいつものように笑って言った。


「当たり前だろ! 手加減したら許さないからな!」


 宏介はまだ怒ってるらしいが、俺は何か冷めた。


「俺はゲーム、UFOキャッチャーだ。平等はチェスがやりたい」


 宏介が自分の得意種目を言う。


「んじゃ、俺はしりとりと靴飛ばし。平等はじゃんけんがいいな」


 俺は軽い調子で言う。

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