俺は、正義の味方だからな!
※本日五話目
「……賢人」
ムスッと頬を膨らませて拗ねる、美雪が俺の前に立ち塞がった。……俺が学校へ行くルートを歩くことを見越しての待ち伏せなんだから、凄いと思う。ってかやっぱり俺の考えは筒抜けなのね。
「……美雪か」
俺は苦笑して美雪と数メートル離れた位置で対峙するため、立ち止まる。
「……理奈と愛人になるって約束して、切也君と親友になって、佳那さんと結婚の約束とキスして」
「……うっ」
何故かそこまで筒抜けだった。……何故だ。
「……家から出てきたところを行こうとしたら手紙に向かってツッコんでて近寄りがたかったし」
「……うぐっ」
確かにあれは傍から見たら恥ずかしい。まさにおっさんの言う通り、挙動不審だった。
「……それで躊躇ってたら皆が順番に現れたし」
「……そ、そうか」
恥ずかしい挨拶をしていたのが見られてたとなっては、俺も顔が熱を持つのを避けられない。照れ隠しじゃないが、頬を掻いた。
「……じゃあ私は、賢人の何?」
「……」
ちょっと泣きそうな美雪の問いかけ。……簡単に言えば、クラスメイト。細かく言って、委員長と問題児。こうして名前で呼び合うような、友達。アウラとして共に戦った、仲間。どれも美雪と俺の関係であり、しかしどれも愛人(?)、親友(?)、妻(?)には劣る関係だった。
「……賢人は私にとって、何だろうね」
「……さあな。先生だったりして?」
答えに困り、料理を教えることもあったのでそう言った。
「……それもあるかな。でもそれじゃあ、弱いよ。私はもっと、賢人と近い関係がいい」
美雪の、遠回しな告白。……いや実際にコクった感じじゃないから分かりにくいし、自信はないが。
「……じゃあ彼女に一番近い友達、とか?」
「……それっていつの間にか失恋してることあるよね」
勇気を出してみたものの、しっくりこない。しかも美雪に呆れられてしまった。……俺にとって美雪とは。
姉ちゃんを除けば、圧倒的に親しい女子。これが今の関係だと思う。
キスまでした姉ちゃんと比べれば劣るが、俺が恋人に選ぶとしたら必ず最終候補までは残る。だがその先にいくかは、自信がない。
俺にとって美雪はどんな存在なのか。
「……私は賢人のこと、好きだよ?」
美雪が迷う俺に、先手を打ってくる。いつの間にか俯いていて顔を上げた俺に、歩み寄って抱き着き顔を胸元に埋める。
「……私は賢人のことが、好き。いつからかは、分かんないけど。自覚したのは多分、襲撃した時。賢人が危ないって聞いて、凄く不安になったの。私は賢人が死ぬのが、嫌。傷つくのも、見たくない。でも、応援はしたい」
美雪は嗚咽を漏らしながら、告白を続ける。
「……テネスに助けられた時、助けてくれた。それも、多分好きになった理由の一つ。でもきっと、私は入学式の日から、惹かれてたと思う。襲われた日、わざわざ眠ってる賢人を起こさないで眺めてたのも、きっと好きだったから」
美雪は言いながら、それでも泣き続ける。
「……私は賢人のことが好きで、死んで欲しくない。ホントは生徒会長と戦うのも、行かないで欲しい。でも頑張って、勝ってきて欲しい。矛盾だけど、私の気持ち」
美雪はそう言って、ギュッと俺に抱き着く力を強める。
「……美雪」
そういえば、と思い返す度に、傍には美雪がいた。姉ちゃんが遠くから見守ってくれてるなら、俺が入学してから一番近くにいたのは、女子では美雪だろう。最初はあんまり仲良い訳じゃなかったし、面識も少なかった。居眠りしたのが原因で出会って、送ってる最中にテネスに襲われ、秘密を共有した。俺がアウラだってバラしたのも、美雪が一番最初だ。
何故かは分からない。でもその後も、俺の傍にいてくれたのは、美雪だった。美雪がアウラになる前は日常で。アウラになってからは戦いでも。
美雪が傍にいてくれたから救われてたんだと、今になってようやく理解した。
「……美雪」
俺は声をかけて、スッと顔を上げさせる。涙を流して泣く美雪の顔を見て、無性に胸が苦しくなった。……そんな顔は、しないで欲しかった。
「……っ」
俺は思わず、美雪の唇に自分の唇を重ねていた。美雪はビクッと身体を震わせるが、抵抗はしなかった。……こんなんで美雪に笑顔が戻るなら、いくらでもしようと思えてしまう。
「……美雪。俺は絶対に戻ってくる。だから泣かないで、待っててくれ」
「……うん」
美雪はまだ涙を流している。だがそれは少し嬉し涙になっていて、よかったと思う。
「……戻ってきたら、ちゃんと付き合おう」
「……っ。う、うん。その、よろしくお願いします」
俺が真剣な表情でそう告げると、美雪はボッと顔を真っ赤にして頷いた。丁寧な口調になってるのが、可愛かった。
「……じゃあ、行ってくる」
「……うん。頑張ってね、賢人」
「……ああ。じゃあな、美雪」
俺は行って美雪を放し、立ち去って肩越しに手を振る。多分だが、美雪も手を振ってくれてるだろう。
学校に着くと、驚くべきことに大勢の人が集まっていた。先頭には宏介がいる。
「……賢人ぉ! お前はどうせ一人で戦おうとしてるだろうから、応援に来てやったぞ!」
だから有り難く思え、とばかりに宏介が叫ぶ。
「……アウラってのは希望なんだろ? だったら俺達の希望を、お前に託す! だから会長に勝ってこい!」
宏介が叫び、大勢の人達から声援が送られてくる。
「……余計なことしやがって」
俺は笑って小さく呟く。……せっかく泣かないように我慢してたってのに、泣きそうになっちまうだろうが。
「……俺は戦えないし、命を懸けて戦うなんて真っ平ごめんだ! でもな、戦ってくれるお前に、何もしないってのは嫌なんだよ! 俺達の想いはお前に託す! よろしく頼んだ!」
ビシッ! と親指を立てて叫んでくる宏介。他の人達も皆、俺に声援を送ってくれた。……うるせえな。
「……ああ、任せとけ!」
俺は笑って言い、宏介と同じようにサムズアップして、変身する。ウイング・アクセルを使って飛翔し、会長がいる地点へと向かった。
「……やあ。やっぱり来たね。俺の前に立ち塞がるか、アウラの始祖ぉ!」
絶大な力を有する会長。姿形は変わらなくとも、途轍もない力を持ってるのがヒシヒシと伝わってきた。
「……ああ。だって――」
俺は頷いて、どこはの島の上空で、会長と対峙しながら、二枚のカードをガントレットに差し込む。
「……アウラ・アクセル、テネス・アクセル!」
『アウラ・スピリッツ&テネス・アビリティ』
無機質な声が俺に続き、俺が持てる最高の力が顕現する。
テネス化した時と同じような、漆黒のドラゴンに似た姿。左手には半ばで折れた刃折れの大剣が握られており、右手には進化したガントレットが嵌められている。
「――俺は、正義の味方だからな!」
「ほざけぇ!」
俺は全力を以って、会長と激突する。……余波で人が死ぬかもしれない。俺が死ぬかもしれない。地形が変わるかもしれない。環境に大きな影響を与えるかもしれない。
だがそれでも、俺は全力で最強のテネスと戦った。
だって俺は、正義の味方なんだから。
これで本編は終わりとなります
次話はエピローグとなります




