俺は、両方の始祖だ
※本日二話目
「……そ、それって……」
「……そうだ、テネスになるアメだ」
傷だらけになり地面に伏せた格好の美雪に、答える。……イーラが渡してくれて、しかもおっさんが一枚噛んでるなら、俺達の不利になるようなことはないハズだ。
「……何でてめえがそれを……」
呆然としたような須藤の声。
「……おっさんとイーラの見送り行った時に、イーラから渡されたんだよ。ほら、俺だけ別だったじゃん?」
俺は軽く言いつつ、アメの包み紙を開ける。
「……止めろ! てめえがそれを食べるのはダメだ!」
須藤は焦ったように制止の声を上げる。……俺がテネスになることに、何か特別な意味でもあるのか?
「……知るかよ。悪いが俺は」
言いながらアメを宙へ放る。
「……てめえを倒すためなら神にでも悪魔にでもなってやるよ」
ニヤリと笑って会長に言い、落ちてきたアメをガリッと噛み砕いて飲み込む。
「……っぁ!」
焼けるような身体の内側から湧き出る熱に、俺は思わず呻く。
「……賢人!」
姉ちゃんが心配そうな顔をして俺を呼ぶ。
「……賢人のバカ」
呆れたような坂井。
「……クソが」
吐き捨てる須藤。
「……賢人」
今にも泣き出しそうな美雪。
「……ぐっ、あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺は咆哮の共に、内から何か力が湧き出るのを感じた。俺の潜在能力が外殻となって現れてるんだろう。
「……」
変化を終えた俺は、身体中に漲る力に驚く。ドラゴン・アクセルの時よりも強い力を感じた。
といっても姿は自分じゃよく分からないが、ドラゴンに近い。テネスとα特有の漆黒の装甲は健在で、蝙蝠のような翼と雄々しい尻尾、鋭い鉤爪、ドラゴンのような頭。そして、半ばから折れたような両刃直剣を左手に持っていた。
「……へぇ? これがテネスになった感覚か。面白いな」
「……君のその力も、俺が統治してあげるよ!」
俺が呟くと、会長が突っ込んできた。……テネスになった途端、自分が持つ能力が理解出来た。
「……悪いが、俺には勝てねえよ」
俺は言って軽く剣を振るう。それだけで破壊の嵐が吹き荒れ、会長を吹っ飛ばし体育館を滅茶苦茶にする。
「……俺の能力その一! 破壊だ」
俺は右手の人差し指を立てて告げる。
「……そして俺の能力その二!」
俺は剣を体育館に突き立てて、力を流し込む。黒いオーラが体育館を全体を包み、次の瞬間には綺麗さっぱり元通りになっていた。
「……再生」
「……はははっ! いいねぇ、賢人君! 君の能力は素晴らしいよ! 是非とも俺に統治されてくれたまえ!」
会長は無傷から浅い傷を増やしたが、笑って言ってきた。
「……悪いがそれは無理だ。俺はテネスでもあるが、アウラでもあるからな。――変身」
俺はテネスになった姿から、ベルトを出現させてアウラへと変身する。通常状態でもカッコいいαだが、ドラゴンが混じってさらにカッコよくなった気がする。だがもうドラゴン・アクセルの意味はなくなってしまった。アウラのガントレットと、テネスの刃折れの剣。この二つが両立した姿こそが、俺の力だと今なら断言出来る。
「……アウラの始祖α」
俺はゆっくりと会長に歩み寄る。
「……だがそれは同時に、テネスの始祖でもある」
俺は思い出していた。テネスが存在した理由を。確かテネスが生まれたのはアウラのせいであり、希望と絶望を表しているという。
「……希望と絶望を宿したアウラの始祖αが、テネスを生み出した」
俺はチラリと須藤と坂井を見て言う。二人は気まずそうに視線を逸らした。
「……つまり俺はアウラの始祖αになった時点で、テネスの始祖でもあるってことだ。だからこそイーラとおっさんは俺にアメを渡し、分かたれた二つの存在を一つにしようとした」
俺は言って、会長と数メートルの距離を置いて立ち止まる。
「……だから悪いが、もう終わりにしようぜ、会長」
「……ふざけるな! 君がアウラとテネスの始祖だからって、何で俺の計画を邪魔されなければならないんだ! ふざけるなぁ! 俺は世界を統治する! この力を使って! ワールド・コントロール!」
会長は狂気に囚われて言い、両手を上に伸ばす。何をやってるのかと思って見ていると、次第に黒い光の球体が体育館の壁をすり抜けて会長の身体に吸い込まれていく。……まさか、世界中のテネスの力を集めてるのか?
「……集まれ、俺の力達! 全てを統治するこの力で、俺は君を倒す!」
無数の光が吸い込まれたところで中断し、圧倒的速さを以って俺に突っ込んでくる。
「……くっ!」
アウラとテネスを同居されたイレギュラーな俺でも、完全には見切れなかった。両翼、両腕、尻尾、両脚、剣を使って攻撃を防ぐのが精いっぱいだ。
「……クソッ!」
俺は全身から破壊の嵐を放ち、会長を遠ざける。
「……甘いよ、賢人君!」
会長は言って俺の腹部をぶん殴る。どうやら一旦距離を取ったようだ。……クソッ。まさかアメ食ってもここまで押されるなんて思わなかった。
「……チッ!」
俺は舌打ちしつつも会長の動きを見える範囲で先読みして剣を振るい、際どい攻撃をするが、当たらない。
「……まだまだだねぇ!」
会長の狂ったように楽しげな声に続いて来る重い衝撃に、俺は後退させられる。
「……クソッ。――っ!」
俺は呻いてから突如としてやってきた激痛と疲労感によろめく。パキッと装甲が何故か砕けて、一部が崩れていく。
「……がっ」
俺はそのまま、吐血した。……口元を覆う部分が砕けてよかったとも思うが、何でこんな急に。
「……アウラとテネスと強制的に同居させたツケが回ってきやがったな。早くどっちかを解除しろ! じゃねえと身体が持たねえぞ!」
須藤が舌打ちして怒鳴ってくる。……本来なら、というか元来は同じだったんだが、本来ならアウラとテネスは互いに相反する存在。それを無理矢理同居させたんだ、そりゃ拒絶反応が起こったりするわな。
「……やはりその程度か、アウラぁ!」
会長は言いながら、俺に猛攻を仕掛けてくる。
「……ぐっ!」
ダメージと自滅で、どんどん装甲が削られていく。……クソッ、何とかしねえと。
「……こうなったら全部、破壊してやるよ!」
俺は言って、破壊のドラゴンを顕現させる。オーラとしてドラゴンを纏い、薙ぎ払って周囲を破壊し尽くす。会長の片腕を破壊出来たものの、すぐにどっかからテネスの力を呼び集めて回復させてしまう。
「……うっ、ぐっ!」
俺が纏う二つの装甲が、ボロボロと崩れ去っていき、身体にもダメージがある。……さすがにダメージがヤバい。
「……これで終わりだぁ!」
霞みかけた視界で、会長が何か色々なモノを放ってくるのが見えた。
「……クソッ、があああぁぁぁぁぁ!!」
俺は咆哮した。すると口のある場所から漆黒の光線が会長に向かって放たれ、会長の攻撃より速く貫いて上半身に大きな穴を穿ったが、変身も変化も解けかけた俺に、強烈な攻撃を受ける術はなく、そのまま呑み込まれて意識を失った。
意識を失う直前、何やらブツブツと会長が吐き捨てて去っていくのが見えた気がするが、追うことは出来なかった。




