所詮、この程度か
※本日一話目
「……クソッ! 生徒会役員!」
会長は姉ちゃんに蹴飛ばされ見下ろされたことが気に食わないのか苛立たしげに吐き捨てて、生徒会の役員を呼び寄せる。生徒会役員達は素早く駆け寄り、会長はフラフラと立ち上がる。
「……見せてあげるよ、俺の本当の力を」
会長は言うと、虚空より剣を出現させ、右手で掴むように握った。それで姉ちゃんに襲いかかるのかと思いきや、数回振るって生徒会役員達を切り裂いた。
「「「……っ!?」」」
わざわざ味方を斬る意味が分からない。見ていた俺達は驚愕した。
斬られた役員達がテネスからただの人に戻り、倒れる。その際何か黒い光の球体が役員達から出て、会長の身体に吸い込まれていった。
すると会長に開いていた穴が瞬時に塞がった。……何だ? 倒したテネスを吸収する能力なのか? いやそれだとこの洗脳みたいな状態の説明がつかない。
「……説明してあげよう。俺の能力は統治。ただ全ての人々を統べ、全てのテネスの力を自分の身体に統べることが出来る能力だ」
会長は余裕そうな態度を取り戻してベラベラ喋る。……チッ。つまり洗脳は人を統治する能力の一環で、今の現象はテネスを統べる能力の一環って訳か。なるほどな。確かに最強のテネスだ。
「……確かに厄介な能力だが、それだけじゃあ私には勝てないな! 私のこの、弟愛には!」
……だからお姉様、お願いします。どうかこれ以上俺を辱めないで下さい。
俺の願いは通じず、パワーアップした会長に突っ込んでいく。
パワードスーツがどれ程のモノかは知らないが、それでも姉ちゃんは会長を圧倒していた。
「……チッ。使えないクズ共め!」
会長はおそらく役員達に対して吐き捨て、逃げを選択しながら剣でテネス達を切り裂きどんどん力を上げていく。
「……へぇ? これなら私も本気でやれそうだな」
半数程の力を蓄えた会長に対し、姉ちゃんは少し嬉しそうに言った。……強すぎる姉ちゃんは強盗制圧時も、手加減しなければならない程で、あまり本気が出せない。それが今、さらに強くなってもまだ全力で戦える相手がいるんだから、そりゃ嬉しくなるとは思うが、少しだけ、姉ちゃんにそんな顔をさせた会長が羨ましかった。
俺は今までの姉ちゃんの発言を見れば分かる通り、姉ちゃんに溺愛されていて敵対することはない。姉ちゃんが俺相手に本気で戦うこともない。そのため、俺が相手だと本気を出せないのだ。
「……やってみろ、警察官!」
会長が吼えて、突っ込んでいく。相当な速さだ。俺が今まで会った中で一番速かったテネス、宏介よりも速い。だがそれでも姉ちゃんは、蹴りをタイミングよくくらわせて吹っ飛ばした。……あれを初見で見切れるとか、アウラやテネス関係なく最強なんじゃないだろうか、俺の姉ちゃんは。
テネスの半数を粗方倒したアウラ三人も、唖然として姉ちゃんを見ている。
「……やってみたぞ、クソガキ。だがまだこれで終わると思うな? 私の愛が溢れて止まらない賢人を殺そうとした罪は重いぞ」
スタスタと壁にめり込んだ会長に歩み寄っていく姉ちゃん。……だからもう止めてって。ニヤニヤして残ったアウラ三人とテネス一人が見てくるんだよ。
「……クソクソクソッ! 何で俺の計画がここまで上手くいかない!? クソォ!」
会長はかなり自己中心的なのか、自分の計画が上手くいかないことに苛立ち、高速で姉ちゃんへと突っ込――まなかった。
「……えっ?」
会長が向かったのは、宏介の下。つまりは宏介のテネスも奪おうというのだ。
「……くらえ」
「……ぐあぁ!」
ドスッと剣を突き立てられ、テネス化が解ける宏介。
「……宏介!」
俺は叫び、剣を抜いた会長に突っ込んだ。熱くなりすぎて、ドラゴン・アクセルも発動しないままに。
「……うるさいんだよ!」
だが突っ込んだハズの俺は会長に背後を取られ、途轍もない強さで殴り飛ばされた。
「……がっ!」
「……賢人!」
俺が壁に突っ込んで呻くと、姉ちゃんが叫んで会長に突っ込んでいく。さっきまでの会長より速い。
「……私の弟に、何をしてる!」
「……処刑だよ! 姉弟揃って、無様に倒れろ!」
だがドゴォ、と殴り飛ばされていく。……マジかよ。宏介一人の力が加わっただけで、そこまで違うモノなのか?
「……ライトニング・ボルテックス!」
会長の頭上に紋章が描かれ、大量の雷が巨大な龍を象って会長に突っ込んでいく。
「……甘いんだよ」
だが会長は突如現れた岩の壁でドーム状に覆われ、雷を防ぐ。
「……てめえこそな!」
岩の壁が解除されたのと同時に背後を取るβ。
「……だから、無駄なんだよ」
だが軽く振り向き様の一撃で吹っ飛ばされた。
「……やってみなきゃ、分からないでしょ」
言って銃弾が何発も会長に放たれるが、腕の一振りと共に豪風が吹き荒れ、銃弾を総て薙ぎ払った。……まさか、統治してるテネスの能力も使えるのか?
「……ドラゴン・アクセル! ヘヴン・ドラゴン! ディザスター・アクセル!」
俺は四天王を統べていたテネスと戦った時とほとんど同じ力を発動させる。
「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
溶岩、氷塊、土砂、雪、火災、津波、万雷などの天災を拳に纏い、清らかな光を全身に纏って強烈な、最高の拳を会長に叩き込む。見事に直撃したのはいいが、避けなかったのか?
「……下らない」
「……っ!」
「……この程度なのか、最強のアウラは!」
「……ぐあ!」
俺とほとんど同じぐらいのエネルギーを纏わせた、俺より重い一撃が腹部に突き刺さり、装甲を砕け散らせながら吹っ飛んだ。
「……賢人!」
まだ直接攻撃を受けてない美雪が悲痛な叫びを上げる。……何だこいつ。今の状態での一撃をノーダメージとか、バカげてる。
「……こんなモノなのか? 正義の味方を名乗るアウラ諸君と、警察官!」
「「「……うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」
両手を広げて呼びかけてくる会長に対し、俺、β、姉ちゃんの三人が突っ込み、θとεの遠距離攻撃が襲う。
だがそんな必死の一斉攻撃も、あえなく迎撃されてしまった。しかも、渾身の一撃をまともにくらってしまい、遠距離攻撃で仕返しされ二人も変身が解けて倒れ、姉ちゃんだけが変身してないので解けるということはなかったが、もう身体の方のダメージが深刻で動けないだろう。
俺も内部までダメージがあり、すぐには動けない状態だった。
「……はははははははっ! これは気分がいいねぇ!」
余裕そうに高笑いを浮かべる会長。
「……クソッ」
悔しげに吐き捨てたところで打つ手は――あった。
「ほらほら、どうしたんだ? 俺を止めてみろ、自称正義の味方共。ははははははっ!!」
会長は気に障る高笑いを続ける。……そうやって笑ってられるのも今の内だからな。
「……てめえは、俺が倒してやるよ」
俺はフラフラになりながらも、立ち上がる。……そう。俺にはまだ打つ手が残っていた。秘策といってもいいが、どうなるかは俺も全く分からない賭け。
血を流しながらも立ち上がった俺の手には、イーラから渡されたアメが握られていた。




