けどな、俺は賢人の親友なんだよ
※二日連続更新です
突如行われた全校集会。そして配られたアメ。何故かそれがどういう意味かを知るクラスメイト達でさえも、アメを食べて、全校生徒の約八割がテネスと化していた。
教師だと半分ぐらいだ。夢見る少年少女だと、会長の言葉に惑わされやすいのかもしれない。
「……そうだ。さあ、始めようじゃないか。俺達の世界を作るために!」
何をバカなことを言ってるのかは知らねえが、ヤバい。統計的に雑魚エネミーっぽいテネスは、潜在能力のなさを示してる訳だが、まだ未来のある十代が一番人型に近くなりやすいという。すでに才能を開花させてるならあまり強くはならないらしいので、まあ人型にならず獣だったり雑魚だったりすることもあるんだが。
ほとんどが人型に近いテネスとなっていた。
「……まずは手始めに、四人の敵を紹介しよう。羽白川賢人、坂井理奈、須藤切也、浅井美雪。彼らは正義の味方などと言われているが、実のところ我々のように力を持った者達を倒しているのだ。つまり、彼らは俺達の敵で、我らこそが正義だ!」
何を訳の分からんことを、と呆れたのは数秒。周囲のテネス達から睨み付けられた。……一度テネスになったらテネスにならないって設定があったハズなんだが、どうやらアメの研究でも進めたかして強化してあるらしい。前は雑魚になったヤツも人型になっている。
……チッ。厄介なことをしてくれやがる。
「……で? 俺達を殺そうってのか?」
俺は仕方なく、いつでも変身出来るように身構えながら会長に聞いた。
「……ああ、もちろんだとも。君達アウラはテネスになれないと聞いているからね。生かす意味がない」
会長は冷徹な目で俺達四人を見据える。……嫌な目をしてやがる。自己チューの癖に生意気すぎんだろ。
「……な、何でそこまでする必要があるんですか!」
美雪が会長に食ってかかる。
「……何でって。下らないことを聞くね、君は。俺の人生に、計画に、邪魔だからだよ。ただ、それだけだ」
「……人を殺すのもそんな理由ですか」
「そんな理由? バカなことを言う。俺の邪魔、そのことが人が死ぬのに充分な理由だよ」
美雪の責める視線を受け流し、陶酔したような恍惚の表情で会長は言った。……何て思考回路してやがんだよ、こいつは。
「……自己中すぎんだよ、てめえは。俺がぶっ倒してやる。――変身」
吐き捨てるように言って変身するのは、須藤。
「……全く、最後に厄介な敵が現れたモノね。――変身」
呆れたように言って変身するのは、坂井。
「……あなたは間違ってます。個人の理由で人を殺すなんて。――変身」
会長を睨みつけて言い変身するのは、美雪。
「……とりあえずてめえの計画とやらは、全部俺がぶっ壊してやる。――変身」
俺も三人のノリに付き合って言い、変身する。
「……いいね、君達。往生際が悪いのは悪役としていいよ。じゃあ三人は足止めしてくれ。羽白川賢人君は中央に投げてくれ」
会長が言うと、俺は堕天使型に抱えられ、中央に向かってぶん投げられた。……何が目的でこんなことをするのかは知らねえが、とりあえず抵抗しないでおく。
「……」
俺だけが、真ん中に開けた通路になっている中央へ、降り立つ。……テネスになったヤツがなってない二割の口にアメを押し込み、俺達アウラ以外は、全員テネスとなっているのが見えた。
「……俺だけこんなとこに呼び出して、何の用だ?」
俺はいつでもドラゴン・アクセルを発動出来るように腰に手を添えて身構える。
「……君にはこれから行うショーのメインとして舞台に上がってもらった、ただそれだけのことだよ」
「……ショー?」
言い回しが一々ムカつくヤツだが、今はそれどころじゃない。人型に近いテネスが千人近くいるんだから、そりゃヤバい。正確には千人もいない六百五十人程度なんだが。
「……そう。ショーだよ。宏介君!」
「……っ!?」
「はい」
ほぼ人にしか見えない派手な装飾のない会長のテネスに呼ばれた名前を聞いて、俺は驚く。従順な返事をしてテネスの集団から大きな跳躍を見せて飛び出したのは、一体のテネス。
背中から蜘蛛の腕を四本生やした、人型のテネス。見るからに近接向きで、身体能力が高そうなテネスだ。
「さあ宏介君。君の手にした力を見せてくれたまえ」
「はい、会長」
会長の声に応えて駆ける構えを取るテネス。……宏介じゃない可能性も否定出来ないが、俺があいつの声を聞き間違えるハズがねえ。だとしたら操られてるのか? あいつは正義の味方に熱を見せてたハズだ。
「……宏介、なのか……?」
俺は呆然として尋ねる。
「……ああ。けど会長に操られてる訳じゃないぜ? 会長は確かに凄いこと言ってるが、はっきり言って世界とか俺にはどうでもいい。そんなんで俺が操られる訳ないだろ」
「……」
だとしたら、何で会長に従う?
「……俺はただ、お前に失望したんだよ。お前が正義の味方だって分かった時、『やっぱりか』って思った。お前ならやりそうだな、とも思ってたしな。高校生ぐらいって聞いた時、マジでお前なんじゃないかって疑ったよ。でも証拠はねえし新聞を見ても何のことかさっぱりだ。やっと記憶が消えないようになって、お前が正義の味方だって分かった時、俺は羨ましかったし、嬉しかったし、納得した。けどな、そんなことより俺は、失望したんだよ。俺は確かに無力だし、お前の力になれるかは微妙だ。それでも、俺にぐらいは打ち明けて欲しかったんだよ!」
「……宏介」
「……お前の力になれなかったし、お前に秘密を打ち明けられなかったし、力がないから打ち明けられても何とも出来なかったかもしれないけどよ。俺はお前の力になれなくても、相談ぐらいはして欲しかったんだよ!」
「……宏介」
吐き捨てるような宏介の本音。俺はそれを聞いて、愕然としていた。宏介がそんな思いをしてたからじゃなく、俺が間接的に宏介をも騙してたことに。
宏介は言いたいことは言ったとばかりに、構える。脚を開いて右手を下に向けた構えだ。……何かの漫画に似てる、と思ってたら鳥の鳴き声のような音と共に掌に雷が宿っていく。
「……おいおい。いくら何でもパクリはダメだろ」
「……うるせえ。俺がアニオタだって知ってるお前なら分かるだろ、この気持ち! 一回でもいいからアニメの技やってみてえって!」
俺がジト目を向けると宏介は何故か力説した。
「……でもマジパクはダメだからな。雷鳥!」
くるりと掌を上に向けて、顔と同じ高さまで持ってくる。掌に溜まった雷から雷で出来た鳥が出現し、俺に向かって突っ込んできた。
「……グランド・アクセル!」
俺は土の力を使うカードを差し込み、雷鳥を土の壁で防御する。
「……俺は力を手に入れた」
バリッ。
「……っ!」
宏介が俺の左に回り込んでいた。
「……蜘蛛の身体能力と雷の力を手に入れた俺は、もうお前に負けない!」
「……がっ!」
俺は腹をぶん殴られ、後ろまで吹っ飛んで体育館のドアにめり込む。……クソッ。滅茶苦茶強い。確か同じ大きさに生物を揃えた時、一番強いのは蜘蛛か蟻って聞いたことがあったな。
「……よくやった、宏介君」
会長が檀上から下りて宏介に近付く。
「……ありがとうございます、会長」
「……ところで、何で殺さない?」
「……装甲にヒビ入れたんで、しばらくは動けませんよ。いつでも殺せますから」
「……それもそうか。よくやった、宏介君。君には何か褒美をやrないとね」
「……ありがとうございます、会長。じゃあ早速――」
ドスッ。爽やかな笑顔を浮かべていた会長の身体に、四本の蜘蛛の腕が前後から突き刺さった。
「……か、会長!」
生徒会役員が呼ぶが、宏介はそれを無視して瀕死状態の会長をぶん投げる。
「……悪いな、会長。俺は確かにあんたに憧れてるし、賢人に腹が立った。けどな、俺は賢人の親友なんだよ。親友を殺せって言われて、そう簡単に頷けるか! 俺はあんたを倒して賢人の力になる。それで俺の目的は達成する」
蜘蛛の腕四本を構え、戦闘態勢を取る宏介テネスが、とてもカッコよく見えた。




