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何者だよ!  作者: 星長晶人


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40/50

……、何の冗談だ?

「……ちょっとぉ」


「……?」


 空港までおっさんとイーラというテネスを作っていた敵の盟主と名乗る見た目幼女にしか見えない二十代の女性を見送りに来ていた俺達アウラ四人だったが、おっさんから俺以外の三人に新パーツともいえる新たな装備を貰っていた。


 その間俺だけイーラに呼ばれ、少し離れた人気の少ない場所に来ていた。


「……これぇ、あげるぅ」


 間延びしたような口調でそう言って差し出された小さな手の中にあったのは、アメだった。


「……っ!? お、おい。どういうことだよ?」


 俺はあからさまに狼狽する。だってそのアメは普通の菓子じゃなく、人をテネスへと変化させるアメだったからだ。


 本来アウラである俺が相反するテネスの力を使うなんてことはあり得ねえし、使う気もまたなかった。


「二人で話し合って決めたから安心していいよぉ。これは君の潜在能力を最大限に引き出してテネスにしてくれるからぁ。でもぉ、これを使うような相手に会わなければそれが一番なんだけどぉ」


 アウラがテネスになるなんて負担が大きすぎるしぃ、とイーラは言う。……おっさんも容認してるのか?


「……テネスになった彼は四天王を束ねる最強のテネスだったけどぉ、もっと強いのがいるからドラゴン・アクセル程度じゃ勝てないんだよぉ。だから応急措置みたいな感じかなぁ」


 イーラは驚く俺に対して説明を続ける。


「……つまり、どうしても勝てない相手にだけ使えってことか」


「……うんぅ。使わないのが一番だけどねぇ」


 イーラはこくんと頷いた。……チッ。力不足を痛感してる時に渡されると、飲むことを視野に入れちまうじゃねえかよ。


「……そうか」


 その後何故か何も書かれてない真っ白なカードをおっさんから渡され、須藤と坂井が驚いていたが、そんなことはどうでもよかった。


 生徒会長がアメを大量に所持している。その事実を聞かされながら、しかし須藤が決定的な証拠を掴めずにいて、一週間が過ぎた。


 その間ただ何もせずにいた訳じゃない。早朝のランニングをやったり、筋トレをしたり。別に無駄なことじゃない。小さなことではあるが、アウラに変身すると元の身体能力から上乗せされる。特に俺みたいな近接型だと、なおさらだ。


 身体を鍛えることは悪くない。だが、二日目からは何故か美雪が家の前にいて、一緒に走っていた。美雪も力不足を痛感したそうだが、俺としては美雪がいなかったら負けてたんだからいてくれて助かったと思う。


 一週間が経って、唐突に全校集会が、生徒会主催で行われることになった。


 俺達四人は何か嫌な予感がしつつも、体育館へと大人しく集まった。


「皆さん、本日は急な呼びかけに答えていただき、ありがとうございます」


 女子副会長の三年生で眼鏡をかけたキツそうな感じの女子が、檀上のマイクに向かって第一声を放った。生徒会の会長、男子副会長、女子副会長、書記、会計、庶務が檀上に並び立っている。


「本日は生徒会長より、重大な発表があります」


 女子副会長は続けた。……何だ? こう胸がザワつくような嫌な感じがする。


「……久し振りだね、と言っておこうか。俺がこの学校の生徒会長、神馬(じんば)神司(しんじ)だ」


「「「キャーッ!!!」」」


 会長がマイクに近づいて一言発しただけで、全校の女生徒から黄色い声援が送られた。……確かにサラサラの金髪に煌めく金色の瞳、超絶に整った顔にスラッとした長身。最強の超絶イケメンだ。


 女子ってのはああいうのがいいのかと、少し気になって美雪と坂井を確認してみるが、二人とも呆れた様子だった。……おぉ、爽やかなイケメンに呆れられる女子なんて、そうそういないってのにな。二人共かよ。


 ちょっとホッとしていた。


 須藤を見ると今すぐ怒鳴り散らすんじゃないかってくらいに苛立っていて、ピキピキと額に青筋を浮かべていた。


「ありがとう」


 会長は平然とした顔で声援を受け取り、爽やかな笑顔を浮かべた。


「さて。本日発表する重大な事項とは、これにある」


「「「……っ!」」」


 会長は手に取って見せたモノ。それはアメだった。驚いたのは俺のクラスメイト達だけだったが。


「これは潜在能力を引き出し外殻とする特殊なアメで、食べると異形の怪物になってしまうが強さと自身の力を引き出すことが出来る。俺は研究を重ねてついに、人と怪物との両立を可能とした。こんな風にな」


「「「……っ!?」」」


 生徒会に所属する六人の身体が、テネスへと変化したのだ。これには全校も、教師さえも驚いている。


「……この力は非常に便利かつ危険なモノだ。一歩間違えば正義の味方に消されてしまう。だが考えてもみてくれ。この力があれば世界をもっとよく出来る。様々な能力があり身体能力を上乗せ出来るため、紛争地域で活躍することも出来る。この姿で死んでも生身にはダメージがないというモノが存在するから命も危険もなく、だ」


 ……何を言ってやがる。


「さあ、俺と一緒に世界をよくしようじゃないか。君達にはその力がある。それを、今から証明してみせよう」


 会長は両手を大きく広げ、大層な演説をする。生徒会役員達がアメを体育館全体に行き渡るように放り、何らかの能力を使ったのかゆっくりと浮遊して、俺達アウラ四人以外の生徒、教師の手元にアメが渡る。


「……これを飲めば力が……」


 そんな声が聞こえて隣を向くと、俺がいつか倒した堕天使型テネスになった、それなりに強い男子がいた。目は虚ろで正気じゃない。


 ……どうなっていやがる。


 俺が呆然と焦燥の狭間にいる中で、周囲の生徒達は、教師でさえもアメを食べていく。


 ……止めろ。


「……さあ、俺と一緒に世界を変えようじゃないか」


「「「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」


 会長の呼び声に、テネスと化した軍勢が応える。取り残された俺達はただただ呆然とするだけ。中には飲まなかったヤツもいるが、隣のヤツに勧められて飲んだりしていた。


 異常なまでに会長の演説に陶酔しているような症状。これが会長のテネスの力なのか。


「……生徒、会長っ……!」


 俺が睨み上げるその先で、生徒会長は爽やかな笑顔を脱ぎ捨てニヤリとした笑みを浮かべていた。

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