おい、何の茶番だよ
※二日連続更新です
俺達四人が驚きを以って地下へ続く階段から登場したぺったんこ幼女を見ている最中、最強ともいえるテネスが跪いて盟主らしき幼女に礼を尽くしている。
「……えっと、子供――がっ!?」
俺が「子供」と言った途端、跪いていたテネスは高速で俺の前に移動してきて、ぶん殴ってきた。いきなりの行動に俺は吹っ飛ばされたが、テネスは他の三人を襲うことはなくさっさと盟主の下へ戻っていった。
「……α!?」
「……デリカシーのない男は嫌われるわよ」
「……バカが。人には触れられたくないコンプレックスがあるもんだろうが」
俺を本気で心配してくれたのはεだけで、他二人には呆れられてしまった。
「……いってぇ。そんなこと言ったって、おっさんの元同僚にしては若すぎねえか?」
ほとんど小学生だぞ? 中年のおっさんとはかけ離れた年齢に見える。ってか一緒にいたらただの犯罪者だ。
「……うるさいなぁ。こう見えても二十六歳だよぉ」
すると同意しかけた三人に、ロリ幼女が告げてきた。……マジでか。
「……どうしますか? 必要であれば殺しますが」
「「「……っ!」」」
「……別にアウラはどうでも良いよぉ。ただあいつさえ殺せればぁ」
テネスが言って俺達は警戒するが、盟主はにっこりと笑った。……あいつって誰のことだ? いや、テネスを作ってるヤツだしどう考えてもおっさんのことだよな。
「……おっさんを殺す気か」
「……そうだよぉ。彼さえいれば何でも出来るからねぇ。あっ、一つ出来ないことがあったぁ。まあいいやぁ」
盟主は跪いたテネスの頭をよしよしと撫でながら言う。……出来ないことだと? それが何が分かればこいつの計画を阻止出来るかもしれないな。
「……出来ないことっていうのはぁ、最強のテネスを倒すことかなぁ。彼は二番目の傑作なんだよぉ。だからぁ、一番強いテネスには勝てないのぉ」
盟主はあっさり言うが、それじゃあ阻止するヒントにならない。何とかテネスの方を倒すか盟主を捕えるかするしかない。
「……そういやお前がアメ作ってるんだってな? じゃあ一応聞くが、学校で誰がアメを買い取った?」
「「「……っ」」」
俺は驚く三人を無視し、盟主を見据える。
「……あはぁ」
盟主はニタリと笑う。
「……それ聞いちゃうんだぁ。いいよぉ、答えてあげるぅ。君達の高校でアメを買ったのはぁ、生徒会だよぉ」
盟主はあっさりと答えてくれる。……生徒会だと? 確かにそれなら辻褄が合う。いつか宏介とゲームをやった時のことだ。ゲームのキャラの中に生徒会長がいた。確か、滅茶苦茶強い設定になっていたハズだ。ってことはさっきの盟主の言葉を信じるなら、最強のテネスがそっちってことになる。都合のいい解釈かもしれないが、学校で一番強いといえば生徒会長の名前が上がるだろう。それくらいの才能があれば、最強のテネスにもなれるんじゃないだろうか。
「……β」
俺は真偽を確かめるために、調査に当たっていたβに声をかける。
「……生徒会については何も調べられてねえ。情報がねえんだよ。他んとこは全部調べたけどな」
βは苦々しい口調で言う。……ってことは、それが答えだ。
「……あはぁ。分かったぁ? 君達の学校は、生徒会長が支配しようとしてるんだよぉ。一度会ったけど凄かったよぉ? 彼と違ってあの子は恐ろしく自己中心的で自己陶酔が激しく、誰かのためじゃなくて自分のために動くような子だしぃ」
盟主は愉快そうに笑う。……才能を持ちすぎた者、か。まあこいつの言葉を信じれば、だが。
「……兎に角、あなたにここは通させないわ。大人しくしなさい」
θが話を戻す。
「……あれぇ? いいのぉ? 言っとくけどぉ、殺す気があればいつでも殺せるんだよぉ? ねえぇ?」
「……はい。もちろんです」
盟主が嘲笑う。テネスが追従する。俺達四人が構える。
「……反射甲」
ブウゥン、と透明な膜がテネスの周囲に展開される。……反射させる膜か? どっちにしろヤバそうだな。
「……ε。θの合図で例のヤツ、使ってくれ」
「……う、うん」
「……私なのね。まあいいけど」
「……じゃあβ、あいつが何かする前に、ぶっ倒すぞ」
「……はっ。蜥蜴はさっさと這い蹲ってろよ」
「……てめえこそ焼き肉になってチーンとか、笑えねえからな」
εに指示し、βと軽口を叩き合う。そしてそのまま突っ込んだ。しかしテネスが展開した反射甲は外側からの攻撃を反射させるらしく、全く攻撃が出来ない。それなのに敵からは光からの爆発が届くため、ほぼ一方的な展開となる。その間に敵は大砲を二発ずつ撃ち、中で縦横無尽に反射し続ける。……四発ってことは一人一発当てるってことか。マズいな。
「……今よ、ε!」
「……うん! アビリティ・キャンセル!」
そこでθが合図し、εの特殊能力が発動する。アビリティ・キャンセルとは、文字通り能力を中断させるモノだ。制限時間はあるが、反射甲が消えるため敵は無防備になる。
「……がぁ!」
「……ぐっ!」
「……あぁ!」
「……っ!」
だがβ、俺、ε、敵に四発が当たり、残るはθただ一人。俺とβはあまりの威力に変化が解除され、元のアウラに戻ってしまう。θは必殺技であるメテオ・フォースで敵に連弾を浴びせた。
「……へぇ? 結構やるねぇ。でも彼には勝てないよぉ。じゃあぁ、殺しちゃおっかぁ」
「…………はい」
フラフラだったが、満身創痍の俺達三人と違って立っていた敵は、大砲と拳を構え光線を放つ。
「……止めるんだ、イーラ!」
そこに参上するおっさん。……え。
「……っ! 見つけたぁ! あいつ、あいつから殺してぇ!」
「……はい」
「……止めるんだ、イーラ! こんなことをしても何の意味もない!」
盟主の命令を受けて大砲を向けるが、気にせずにおっさんは駆け寄ってくる。……何でおっさんがここに。ってかイーラって誰だよ。
「……うるさいうるさいうるさいぃ! 何も分かってない癖にぃ!」
ドォン! と放たれる大砲。おっさんは生身で受けて吹っ飛んだ。
「……おっさん」
「……違うんだ、話を聞いてくれ」
血みどろになりながらも、立ち上がるおっさん。
「……話なんて聞きたくない!」
ドゴォン! と放たれる空気圧縮砲。おっさんは生身で受けて吹っ飛んだ。……これヤバくね? 死ぬじゃん。
「……少しでもいいから、聞いてくれ。俺に、謝らせてくれ」
フラフラと立ち上がるおっさん。そこには信念を感じた。
「……謝るって、何ぃ?」
「……俺が、悪かった。俺が世間体なんて気にしなければ、こんなことには」
「……っ。でもそれはぁ、言い訳でしょぉ?」
「……そうだな。言い訳だ。だがこんなことになって俺はやっと分かった。もう世間体なんてどうでもいい」
「……っ」
「……だから頼む、俺と結婚してくれ、イーラ」
「…………」
……え? 俺達は今、何を見せられてるの?
「……今度はぁ、ちゃんとするぅ?」
「……ああ、もちろんだとも」
「……じゃあぁ、いいよぉ?」
「……ありがとう、イーラ」
「……っ。博士ぃ、博士ぃ」
抱き合う二人。……ねえだからどうなってんの? いきなりすぎて展開が見えないんだけど。
「……よかったですね、盟主様」
何故か涙ぐんだ様子の敵。そして他の三人も感動している。……え? だから何で? ってか俺だけかよ、ついてけてないの!
「……うんぅ。これでお別れだねぇ。今までありがとぉ。潜在能力を引き出してこれだけ強くなれたんだからぁ、きっと頑張れば何でも出来るよぉ。自分を信じてねぇ」
「……はい、盟主様」
盟主が言ってテネスに触れると、テネスが黒い粒子となって消えていく。テネスが消えた後には、どこにでもいそうな青年が横たわっていた。
「……イーラ。これからは一緒にいよう」
「……博士ぃ」
強く抱き締め合う二人。小さく嗚咽を漏らすεと、鼻を啜るθとβ。……いやだから、何で?
その後一件落着ということで、テネスの本拠地は制圧を完了した。
俺は後になってから、事情を聞いた。
どうやら二人は大学の同級生らしく、恋人同士だったとか。だがアウラとテネスについて知った矢先、遊園地デートをしていたところでおっさんが逮捕されてしまう。理由は幼女誘拐容疑。
その時は免許も持っていたため事なきを得たのだが、それによっておっさんはロリコン、歳の差、などという言葉に敏感になってしまい、イーラを遠ざけた。
その結果アウラとテネスに研究内容が分かれてしまい、仲違いしてしまった。
だが世間体を気にするまでもなく、離れてからイーラのことが好きだと自覚したおっさんは、アウラに協力してもらっていつか拠点に乗り込み、謝ろうと思っていたらしい。
作戦が終わってから数日後、二人は海外に新婚旅行に出かけた。……最後まで戦いを見届けろよ
と思わないでもなかったが、二人の幸せそうな顔を見ると何かもうどうでもよくなった。
俺達四人は二人を空港まで行って見送った。その時おっさんからは俺以外の三人に何かを渡し、俺は何故かイーラからモノを渡された。
それは、テネスに変化するためのアメだった。




