おう、任せたぜ
「……美雪」
俺は現れた魔法使い風のアウラに呼びかける。
「……うん。私も戦うから」
紫色のアウラは決意の見える声で頷く。……なら俺が口を出すまでもない、か。でも確かに心配ではあるし、その辺は俺がカバーした方がいいかもしれない。っつっても、俺も満身創痍で偉そうに先輩風を吹かせる余裕はないんだが。むしろ俺がフォローして欲しいくらいだし。
全身ズタボロで変身が解ける直前って感じだしな。ぶっ倒れたまま起き上がれる気がしない。
「……ほう? しかし今更一人増えたところで我ら二人に敵うハズがない。聞けばアウラの中で一番強いのはαだそうだからな」
豹型が嘲笑う。……いや、見てみろ。αである俺がこうして地面に倒れてるんだぜ? αが一番強いってのは迷信じゃねえのか?
「……らしいわね。でもさすがに二対一じゃαも勝てないんじゃないの? だってあなた達、強いんでしょ?」
美雪は冷たい声音で豹型に応えた。……こんな強いヤツだったか? 美雪は。俺と初めて話した日もテネスを怖がる普通の少女だった気がするんだが。
「……ほう? 我らが強いと分かっていて駆けつけるとは、見上げたモノだな」
「……じゃあ、あなたは敵が強いと分かってたら逃げ出すの?」
「……」
笑う豹型に言い返し、沈黙させる美雪。そこからは強い意志が見て取れた。……相変わらず立てずにぶっ倒れている俺は、なかなかにカッコ悪いが。
相手側も、盟主とやらを護るために戦ってるんだから、逃げ出す訳がない。それを分かってて言い負かしたんだろうから、美雪はさすがだった。
「……自己紹介するわよ。私は新たにアウラとなった、εよ」
εは堂々と杖を構えて、名乗る。α、β、θより長い名前だ。ギリシャ文字なんてよく知らないので分からないが。
「……ほう? では一人で我らに勝てるとでも思っているのか?」
「……そんな訳ないでしょ。アウラ初心者の私が、アウラの歴が長い二人とαが苦戦する相手二人に、勝てる訳がないわ」
「……ほう?」
「だから、回復させてもらうのよ。――フル・ヒール」
挑発する豹型に答えつつ、εが杖を掲げて唱えた。……するとどうしたことか、カードを差し込む様子もなく淡い黄緑色の紋章が俺の下の地面に描かれ、淡い黄緑色の光が俺を包み、見る見る内に回復していく。
「……おぉ」
ドラゴン・アクセルの装甲も、俺の身体が受けたダメージも。全てが治っていた。だから完全回復なのか。失われた両翼と尻尾が戻ってきて、スッと立ち上がることが出来た。
「……すげえな。あの傷があっという間に治っちまった。しかもカードを使わないで発動出来るとか、マジで魔法使いみたいだな」
俺は自分の身体を見渡しつつ、笑って言った。完璧に治っていて、正直驚いている。
「……ありがと。私は博士が開発した新型のアウラ。カード不要タイプのアウラなの。でも燃費が悪いし覚える名前が多すぎて。この短時間じゃあんまり数は覚えてないの。だからあんまり役に立たないかもだけど」
美雪が変身したεが照れたように微笑んで言った。……フォルムが魔法使いっぽいんだよな。しかも女性らしい身体つきになっているし、あんまり近接は得意じゃなさそうだ。
「……いや、俺を回復させてくれた時点で結構有り難い。ってか来てくれてありがとな、ε。助かった。で、どっちがいけそうだ?」
「……お礼を言われるようなことじゃないわ。それで? あの二人の能力は何?」
εは俺の礼に苦笑したようで、聞いてきた。
「……あの豹型が超高速の近接攻撃。あのゴツい双盾型が反射と圧縮の能力を持つが、遅いな」
「……そう。じゃあ私があのゴツい方をやるわ。豹の方は任せてもいい?」
「……ああ、助かる」
「……相談は終わったか?」
俺とεで役割分担をしていると、豹型は突っ込んできていて、俺の背後に回り込んでいた。
「ロック・ウォール!」
しかしεが俺の後ろの地面に茶色い紋章を描いて岩の壁を展開する方が早く、間に合った。……紋章が描かれてから展開する速さが半端じゃない。かなりの速度で展開されるため、紋章を見たらすぐに対処に移らないと厳しそうだ。
「……ほう? 今の攻撃を防ぐか、アウラ。だがαの方だけで対処出来るか?」
豹型は拳を連発して岩の壁を砕き、俺を嘲笑う。
「……対処するさ。ちょっと厳しいが、そんなことを言ってられる状態じゃねえからな」
俺は双盾型と対峙するεと背中合わせになって、豹型を見据える。
「……ほう? やってみろ、アウラの始祖」
「……やってやるぜ。ドラゴン・アクセルに金のヤツは使いたくなかったんだけどな。バースト・アクセル。ついでにこれもやっとくか。メタル・ドラゴン」
『アクセル・レボリューション』
豹型に言われて告げ、通常のガントレットに二枚目として金色のカードを差し込む。ドラゴンの方にも違うカードを差し込んだ。
ドラゴンの方が鋼色になり、全身に金色のオーラを纏う。
「……後のことなんて無視だ。まずはてめえを倒してやるよ、豹野郎!」
「……ほう? 先程まで俺のスピードについてこれなかったヤツがよく言う。貴様を盟主様の下に行かせる訳にはいかんな」
俺が言うと豹型も嘲りながら応えて、激突する。




