げっ、何気にピンチじゃん!
少し遅れてしまいました。
次もいつ投稿するかわかりませんが、よろしくお願いいたします。
「んじゃ、自己紹介開始~っと」
ぐるぐる眼鏡をかけたダサい感じの髪なのに、かなりスタイルのいいアンバランスな先生が言った。
「なんとなく君から!」
ビシッと宏介を指差して言う。
「俺っすか!?」
宏介がビックリしたように立ち上がって言う
「え~っと、居桐屋宏介です。趣味はーー」
「女漁りだな」
俺が補足する。
「そうそう。って、やめろよ! 俺の第一印象悪くなるだろ!」
一旦頷いてからツッコむ。
「ったく。特技はーー」
「ナンパだろ」
俺がまた補足する。
「そうそう。って、やめろっつってんだろ!」
ノリツッコミがいい感じやん。
「居桐屋くんが女好きってことはわかったから。次は口を挟んだ君ね」
俺かよ。
「っと、羽白川賢人だ。よろしくな」
短く言って、次の人に移る。そうやって自己紹介が進んで行った。
◇
「ちょいさぁ。何であれのことしか話さないんだよ」
あれとは、謎の正義の味方のことだ。自由時間に皆、そのことばっかり話している。
「なんだよ、他の話題があるってのか?」
何か怖いぞ、宏介。
「いや、かなり有名だけどさ」
テレビでもやってるし、めっちゃ有名だしな。って、他人事かよ。
「はぁ。まあ、いいんだけどな」
もう諦めることにした。ここまで広がってたら隠せないし。
何で俺は最初っから隠蔽しなかったんだよ。情けないな。
「お前はいいのか!?」
は?
「何がだよ」
「モテそうなライバルが出てきて!」
「いや。俺は正義の味方のライバルじゃねえし」
何で俺と正義の味方が同じレベルなんだよ。ってか、どっちも俺だし。
「……はぁ。これだから賢人は」
宏介が呆れて言う。なんだよ、それ。
「ホント、救いようがねえな」
救いようがねえって……。見捨てんのかよ。
「今日話しかけてきた女子だって、お前目当てだっただろ?」
知らんし。
「まあお前のことだから気付いてないんだろうけど」
……なんかずっと呆れられてるんだが。
「……それは置いといて、何で正義の味方を俺まで探さなきゃいけねえんだよ」
話を変える。俺の話題から遠ざけるのは無理でも、時間稼ぎぐらいはしなければ。
「もちろん、お前のイケメンレーダーを使うためだ」
おい。なんだよそれ。イケメンレーダーとかダサいネーミングセンスを発揮するのは勝手だが、そんなもんはねえ。
「この俺といい、イケメンを呼び寄せるのがお前だ」
うんうん、と頷いて言う宏介。……イケメンを呼び寄せるかどうかは知らないが、お前はイケメンじゃないと思うぞ。
「俺の周りにイケメンはあんまいないぞ」
イケメンそうなヤツを指差して言う。もちろん宏介は入れてない。
「俺を飛ばすな!」
宏介がすかさずツッコむ。俺ってツッコミの方がいいんだが、宏介にはツッコまれることが多いな。
「ボケじゃなく、飛ばす。宏介はイケメンじゃねえだろ」
「ひでえな! ちょっとは俺を気遣え!
「男に優しくして何の意味が?」
「お前みたいな唐変木がそれを言うか!?」
ちょい宏介の真似をしてみたんだが。
「唐変木って……。俺はお前みたいに女子を軽々しく扱うヤツじゃないってだけだ」
「俺はそんな軽いヤツに見えるのか!?」
見えない方がおかしいだろ。
「実際にそうだろ」
「お前俺の親友の癖にひでえぞ!」
相当怒ってんな。まあいつものことだけど。
「……こんなに怒らせて大丈夫なのか?」
高校で今日知り合ったヤツが不安そうに言う。
「いつものことだしな。気にすんな。そして早く慣れろ」
笑って言う。俺も宏介も人見知りするような物静かな性格はしてないしな。
「そうか。お前らは恋人より、親友を多く作れそうだな」
そいつが苦笑して言う。
「恋人を多く作ってどうするよ」
一人に選べよ。
「だな」
今度こそ笑って言う。
「まあ、宏介は何股かかけたいらしいが」
どんなだよ。ハーレムでも狙ってんのか?
「あいつは変態だろ」
「自己紹介で俺が補足しといただろ」
「確かに」
笑い合って、そいつとはちゃんと打ち解けた。
◇
「今日の最後の授業ですが、制限自由時間とするから」
ん? 制限された自由時間ってことか?
「お題は謎の正義の味方を追え! ね。街中を歩き回っていいけど、五十分後にはここにいること。オッケー?」
『オッケー!!』
おい。そんな授業があってもいいのかよ。ってか、見つかるわけないだろ。ここにいるんだから。
「手掛かりでも本人でも、見つけちゃえ!」
煽るなよ。こんな適当な先生がいるから俺が追い詰められてんじゃん。
「賢人! 出現ポイントを回るぞ!」
「何で生き生きしてんだよ!」
宏介が俺の意志を無視して引っ張ってった。
◇
「俺の話を聞けよ」
俺は結局宏介に、最初に俺が人助けをした所に連れてこられた。
「お前、ぶっちゃけ正義の味方じゃね?」
おおう?
「何でそう思うんだよ」
一応否定しないでおく。
「お前がーーー」
……。
「イケメンだからだ!」
は?
「その根拠のない理由はなんだ。俺じゃねえぞ」
何なんだろうか、こいつは。
「とりあえず、飴食う?」
宏介のせいで変な空気になった中、一人の女子が飴をたくさん持って来た。
授業中なのにいいんだろうか? まあ、皆が飴を食ってるから大丈夫だろ。
「何だこれ。変な味だな」
ん? って、それはーーー。
「ま、待て!! それを食うな!」
それは俺の敵になるアメだ!
倒せば元に戻るし、アメに関わった記憶がなくなる。だが、五人は一気に食ったから倒せるか分からん。
そして、五人の変化が始まる。俺の敵は“テネス”と名付けられていて、俺の力は“アウラ”と言うらしい。
テネスってのは、正義の味方が相手するようなヤツじゃない。
五人が光に包まれて、テネスへと姿が変わる。三人はエネミーっぽいくらいにたくさん出てくるドロドロした人型で、グロテスクにしか見えない。一人は狼を模した人型の怪人で、中級程度の強さだ。最後の一人。こいつは厄介だ。人型で、黒がベースに赤のラインが入っている。左の翼だけ生えているのを見ると、堕天使のようだ。両腕に二つと頭の上に一つ天輪がある。
隠してるから皆の前じゃ変身出来ないじゃん。俺ピンチ!